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パリの街の中年男と若い女

 2018年11月26日。イタリア人映画監督のベルナルド・ベルトリッチが亡くなりました。77歳だったそうです。
 彼の死を悼んだ追悼上映があったので観てきました。作品は1972年製作の「ラストタンゴ・イン・パリ」です。
 妻に自殺されたばかりの40代の男と、若い女性の出会いから別れまでを描いたものです。男性をマーロン・ブランド、女性をマリア・シュナイダーが演じています。

 パリのアパートの一室を借りようと下見に来た2人が鉢合わせし、そのまま肉体関係を結びます。互いに名前も過去も知らないまま、その部屋で関係は続いていきます。途中までは若い女性が中年男に夢中になるのですが、終盤は孤独な男が女性を追い回し、悲劇が訪れてしまいます。

 この映画、大胆な性描写から物議を呼び、本国イタリアでは上映禁止処分を受けています。

 しかし映画を観ていると、それほど気にならないというのは時代が経ったからでしょうか?
 「どれだけ汚い言葉を吐いたり、アブノーマルなセックスをしたとしても、美へと昇華してみせる。映画にはそれが可能だし、私にはそれができる」。ベルトリッチなりにそのような自信があったのではないのかしらと、思ったりもしたのでした。

 この映画ではカメラは上下運動に加え、横にも移動します。登場人物も走ったり寝転んだりといろいろな動きを見せてくれます。特に若い女性の恋人役であるジャン=ピエール・レオーの身振り手振りや話し方は観ていて楽しくなります。

 「ラストタンゴ・イン・パリ」はベルトリッチの代表作となりましたが、マーロン・ブランドやマリア・シュナイダーにとっては悪夢のような映画だったようで、ワイセツ映画だとイタリアで訴えられて、二人は出頭したそうです。さらにマーロン・ブランドはこの映画が原因で親権をとりあげられたようですし、マリア・シュナイダーはスキャンダラスな映画に出たことが影響したのかその後の女優人生は波乱に満ちたものになったようです。

 俳優たちのその後の人生を大きく狂わせたという意味で、「呪われた映画」と呼べるかもしれません。それでも劇中の年の離れた男女2人の交わす言葉や身振りが今でも私たちを魅了してやまないのは、映画が持つ魔力でしょうし、ベルトリッチの才能なんだろうと思ったりしています。

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