ヘッド

あたしも僕も、みんな不完全

王谷晶さんの短編集「完璧じゃない、あたしたち」を読みました。

23編からなり、中には戯曲も一つ入ってるけど、帯に書かれてるように主人公はすべて女性です。

短編の中でいろいろ好きなのはあったけど、大麻取締法違反が原因で生まれ故郷に戻ってきた演歌歌手の付き人を描いた「北口の女」とか、ゴミ屋敷に住む女から泥水をかけられて何かが始まる予感で終わる「春江のトップギア」、外国人女性2人が東京で偶然出会う「東京の二十三時にアンナは」、30年の時を経て女友達を作る「タイム・アフター・タイム」なんかがお気に入りです。

登場人物は女性が多いのですが、いろいろと問題や悩みを抱えていて、その濃度も強烈なものから、なんとなくのものまで、さまざま。キャラもバリエーション豊かで、レズビアンやDV被害者から、人魚になったり、起きたら毛むくじゃらだったり、宇宙の果てに狩りに行くハンターだったり。

でも、現実の世界でもみんな一癖も二癖もあるわけで、物語の中の人たちを「変わってる」としてしまうのも安直でしょう。

これら気の利いた掌編たちを読むと、「あたしたち」だけじゃなくて、我々みんな、不完全で、ダメな生き物なんだと思わせてくれます。そう思うと、それはそれで安心したりもするのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?