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横山秀夫著「ノースライト」

大好きな小説家の絲山秋子さんが絶賛してたので「64」を読んでみてすっかりファンになった横山秀夫さんの最新の小説。

主人公は一級建築士。バブルの頃の華やかさとは一転、今では小さな案件をこつこつとこなしている。そんな時に手がけた渾身の建築。それを依頼した家族は、あれほどまでに完成を喜んでいたのに、お金を支払ったものの引っ越しもせずに姿をくらませた──。

一家蒸発というミステリーを物語の「縦軸」にしつつ、主人公の建築士と元妻、あるいは建築事務所の所長で、学生時代の友達、かつての同僚、新聞記者などの間の人間関係を「横糸」にして進んで行く展開はやっぱり面白くて止まらなくなる。この小説の重要なモチーフとして、ドイツ人建築家ブルーノ・タウトという人がたびたびとりあげられるのだけど、そちらにも興味が沸いた。

「64」に比べると、ミステリーの謎解きの部分がじゃっかん弱く感じて、フタを開けてみると「なーんだこんなことか」と感じなくもないが、それでもこの作家の細部まで手を抜かない人物描写と、そこから立ち上がるのっぴきならない人間関係は本当に凄いなぁと感じた。

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