子どもが泣いた時に,親が「ただ怒っている」と危険なことが起こります。
子どもが泣いた時に,親が「ただ怒っている」と危険なことが起こります。
子どもは,「環境」によってつくられることは,先日の記事の中でもお話ししました。
「環境」と聞くと,物理的な環境(建物や食べ物等)を想像する方も多くいらっしゃると思いますが,最近の研究では,最も大きな環境要因は子どもたちが経験する
「人間関係」
だということがわかっています。
もっと言えば,幼少期の身近な大人=「親」との関係だということです。
「当たり前やん!」
と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが,具体的にどのように親との関係が子どもの成長に関わっているのかということを,今日は掘り下げたいと思います。
子どものストレスは親のストレスでもある
親と子の関係性の中で最も重要であると言っても過言ではないのが,
子どもたちがストレスを受けている時にどう対応するか
ということです。
子どもたちは,親の声かけによって、感情や体験を脳内で整理していきます。
ハーバード大学の児童発達センターの研究チームはこれを、『サーブとリターン』と、名付けました。
この「サーブとリターン」とは,具体的にいうと
幼児が音を立てたり,何かを見た時(これをサーブと言います),
親が子どもの関心を共有し,「何か気になったみたいねえ。」「そこにあるのはリンゴね。」のように仕草や言葉によって反応する。(これをリターンと言います)
「そこに飴があったのね。」「嬉しいんだね。」「それは、悲しいの。」「風が強いね。」など,親と幼児との間の当たり前のやりとりが,親にしてみれば当たり前であっても,子どもにとっては,自分の世界を広げるための重要な情報をたくさん含んでいるのです。
実は,このような当たり前のやりとりが,子どもたちの発達のトリガーとなり,感情面、精神面、認知面の発達を大きく助けます。
そして,親の役割として大きなものであるのが,子どもがストレスや、困難な状況に陥り癇癪をおこした時の対応です。
子どもがストレスに反応し,動揺している時に,親が反応的で,怒ったり,子どもにとって理解不能な行動をとったりすると,感情の昂りに対してや,緊張度の高い状況において効果的な対処をすることができない子どもになってしまうことが,神経科学によって明らかになっています。
これは,とても恐ろしい事実です。
親は,子育ては人生の中で初めてする経験です。
そんな中で,子どもが動揺してしまった時に,つい怒ってしまったりすることもあるかもしれません。
しかし,この行動が子どもの感情への対処の発達に大きく影響してしまうのです。
逆に,子どもが瞬間的なストレスに対して対処するのを助け,落ち着かせるようになだめたりできると,後のストレス対処能力にプラスの影響を与えることができることもわかっています。
自分ごととして考えるとわかりやすいですが,自分が何かに腹が立ったり,とても緊張する場面に遭遇した時,自身の経験としてそれに対して感情を爆発させることしか経験していなかったら,その対処法しかとることはできません。
逆に,身近な人がそんな場面で冷静に,自分のストレスと向き合い,それに対処する場面を見ていたとしたら,それをモデルにして自分もやってみることができるかもしれませんよね。
子どものストレスは,親のストレスでもあるわけです。
親にもストレスがかかった時に,どう対応するかが,子どもの「経験値」を上げるか下げるかの分かれ目になるということなのです。
つまり,まとめると,子どもにストレスがかかっている時には,「怒る」のではなく,なだめながら,子どもの思考を言語化してあげ,それに対してどう対処するのが良いのかをゆっくりと子どもがわかるように説明することがベストな選択だということです。
難しいことですが,これを実践し,子どもたちがストレスへの対処を学んでいくと,後々は,自分で感情処理をできる子どもに育っていくんですね。
【参考文献】
私たちは子どもに何ができるのか
非認知能力を育み,格差に挑む
著者 ポール・タフ
訳者 高山真由美
発行人 原田英治
発行所 英治出版株式会社
2020年3月17日 第9刷
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