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世界規模のやさしさ/もちはこび短歌(1)

文・写真●小野田光

わたしが脳内に記憶して持ち運んでいる短歌と持ち運ぶ効用をご紹介する「もちはこび短歌」、今回からInstagramだけでなく、noteでも書いてゆこうと思います。よろしくお願いします。

江東区を初めて地図で見たときのよう このひとを護らなくては
雪舟えま『たんぽるぽる』(短歌研究社、2011年)

 今日はこの歌。
 地図を見てこんなことを思えるなんて、とてもやさしい人だな、と思う。江東区って「0メートル地帯」もあったり、東京湾の埋立地や河川など、他の東京23区に比べても水の不安があるように見える。そうか、江東区って堤防で護る必要があるんだ。わたしの心はすぐにそんな具体を離れて、不思議とキュンとなる。護りたい人々や物事を思い出す。わたしは地図が好きだけれど、地図を見て地形以外に思いを馳せることなんてなかった。
 こんなやさしい目で地図を見るって、世界を穏やかに見るってことでもある。雪舟えまさんの歌は純度の高い熱源であるように感じるけれど、どんなにエモーショナルな歌でも、やっぱり穏やかなやさしさが根底にあるのだ。世界中をやさしさで包むような大きさ。
 わたしには、世界を包めるような、そんな完璧な穏やかさがない。でも、穏やかな時間を増やしたい。ちょっと心がざわつく時、この歌を思い出す。この歌を思い出せば、護りたいという気持ちを思い出す。護りたいという熱い気持ちは、必ず穏やかなやさしさも引き出してくれる。何度も何度もそんな体験をさせてくれた一首なのだ。

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3月22日(金)19時から
福岡の本屋さん&カフェ「本のあるところ ajiro」で、トークイベント「『蝶は地下鉄をぬけて』ともちはこび短歌のこと」を開催していただくことになりました。
「もちはこび短歌」を10首ご紹介し、その短歌の実生活における効用などもお話しする予定です(noteではご紹介していない10首をご用意するつもりです)。お近くの方、よろしければご来場くださいませ。お会いできること、たのしみにしています。
当日は20時からの「ajiro歌会」に、わたしも参加する予定です。

お申し込み(要予約)はこちらからどうぞ。

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