藤原光

主に小説を上げています。公募のコンテストに投稿した場合には、規程に触れないようにするため、結果発表後に投稿先と結果を公開しています。作品投稿サイトの場合にはリンクします。ご連絡やリクエスト等は以下のアドレスまでお願いします。 hikari88com@gmail.com

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    最近の記事

    砂漠のオアシス

    「味噌汁、味薄いワ。チョット、待ってて。」  夕食のテーブルに着いた矢先、キッチンのシンク越しにそう言われた。銀杏の匂いが並木道を漂うようになり、秋が深まり肌がひんやり銀杏や紅葉の鮮やかな黄、橙が一層と深まっている。  画鋲の痕やいたずらに貼られたプリキュアのシールが上手くはがれず、所々に残った糊の部分が灰色に浮かんでいる壁の方に目をやると、昔ロサンゼルスのビーチで撮った写真が目に入ってきた。夕暮れの橙色がビーチの写真を照らし、揺らめいていた。  留学というと、どこの景色を思

      • 囚人体験 健診

         「24番」。私はそう呼ばれた。「24番」は、言われたとおりに会場内の番号が書かれた部屋を順番に廻っていった。ある部屋では上半身裸でお腹を壁につけさせられ、ある部屋では血を取られ、ある部屋では怪しい液体を飲まされ、台に乗せられた。廊下には矢印で部屋同士が結ばれ、次の部屋に迷わず向かえるようになっていた。廊下で前後の「23番」や「25番」も廊下で見かけはするものの、誰も話すどころか目も合わせない。会場全体で「話してないで、言われた通りにしろ!」と看守が目を光らせていた。 各部

        • 足がないのに足手まとい

          「足手まといになっちゃったよ、足無いのにな!」  1年程前、在宅勤務用にカスタマイズされた机の、27型の外型ディスプレイのZoom会議の画面越しに大介は言った。威勢よく言っていたが、目は座り、口角は上がっていなかった。大介は高校の同級生で、メガネの似合う彼はバスケ部のキャプテンだった。有名大学の理工学部に進学。航空工学の研究をして、大学院ではアメリ国際会議で成果を発表した。有力大手企業に推薦で内定し、航空関係のエンジニアになったようだ。大学でもバスケを続け、インカレでも活躍し

          • 初めてのオフィスビルの1階にあるコンビニのコーヒーマシンで自分で淹れるタイプのアイスコーヒーRサイズ税込100円

            『故障中』 オフィスのコーヒーマシンのノズルの部分に付箋が貼られていた。延々と紙を吐き出し続けるプリンターの隣で、冷蔵庫はただ氷を溜め続けていた。コーヒーマシンは、毎回ドリップを行うエスプレッソタイプの高級仕様。毎日欠かさず飲んでいたコーヒー、淹れたてが無いと仕事モードにスイッチが入らない。自動販売機のものではだめだ。あれはコーヒーフレーバーの水だ。欲を言うと、キリマンジャロの強い酸味とあの香りが出る深煎りで、ロックアイスのアイスコーヒーが最高。これでは仕事にならない。どうし

            「学生のうちに彼女と結婚しておけよ、早いところな」

            「学生のうちに彼女と結婚しておけよ、早いところな」 タカシ先輩はため息交じりの声で声をかけた。 「はーい、気を付けます!」 ケイスケは張りのある声で答えた。 慶應義塾大学のとあるサッカーサークルのOBとの交流会。高級ホテルで開かれた立食パーティ。なんだかんだ同窓会のように各学年が固まって緩い島のようになっている。 ジャケットの着こなしから、どことなくイケイケだった雰囲気のあるが、哀愁が少々漂っているタカシ先輩。 40近くになっても未だに独身だそうだ。正確には一度結婚したも

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