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山口県・沖縄県での1学級の児童生徒数見直しがもたらす懸念

深刻な教員不足のために、山口県と沖縄県が独自の少人数学級の取り組みを見直すことになりました。このニュースの概要と懸念点をまとめてみました。

山口・沖縄『教員不足のため学級の人数を増やします』

ニュースの見出しは、やや誤解を招く表現になっていたため動揺が広がりました。私もすっかり誤解していました。内容を整理してみます。

山口県や沖縄県では、そもそも独自の取り組みとして国の基準を下回る生徒数で1学級を編成していました。山口県では、中学校2・3年生での1学級の生徒数の上限を35人で編成していました。国の基準では、中学校での1学級生徒数は40人です。これを23年度では、教員不足のために上限38人にするというものです。

沖縄県では、1学級の児童生徒数の上限を小学1・2年生で30人、小学3年生から中学3年生で35人にしていました。国の基準では、小学校3年生までの1学級生徒数は上限35人です(22年度)。これを23年度では教員不足のために上限40人も視野に入れて編成するというものです。

文科省『法律の範囲内で問題ない』

学級生徒数の上限が増えるとしても、国の基準の範囲内で学級を編成するとことになるため、問題はないという姿勢でした。学級編制を定めた法律(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)に違反しているわけではないため、山口県も沖縄県の対応も、法的には全く問題はなかったのです。

そして、文科省は今後も教職員の定数改善に取り組み、教師不足に対しても実態を把握に努め対応していくとのことでした。

これからどんどん深刻化するのではという懸念

文科省の冷ややかでどこか他人事のような対応自体が懸念を生んだように思えました。私が感じた疑問は以下のとおりです。

  • 法律に違反してさえいなければ、学級の上限を増やして教員の負担も増やして問題はないのか。

  • 小学校では段階的に学級の児童数の上限が引き下げられるが(23年度は小学校4年生までが35人学級になる)、このままで果たして可能なのか?

  • 楽観視するのみで、教員不足という根本的な問題へ何も対応しようとしていないのではないか?

  • 文科省お得意の『特例的対応』で今後学級の人数上限を引き上げたりはしないのか?

問題の根本は教員不足です。そして、子どもへの教育の機会損失が今後連鎖的に起こりうることは想像に難くありません。文科省の対応は『今後同様のことが起きても、教員不足で仕方ないから学級人数を増やして対応するのを容認すればいい』というその場しのぎで短絡的なものにしか聞こえなかったのです。

まとめ

山口県と沖縄県での学級人数上限を引き上げるニュースについてまとめてみました。文科省はいつものように他人事で冷ややかでした。

5年以内に、教員不足により学級を統合して授業を行ったり、学級人数上限を例外的に撤廃するなどのことが起こり得ると感じてしまいました。教員不足という根本的原因が解消しない限り、これらの懸念は現実味を帯びてくるでしょう。

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