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映画感想:ソロモンの偽証(2015)

偽証

《名・ス他》
真実でない事を真実のように述べた証明。特に、裁判所で証人が、故意にうその証言をすること。
 「―罪」

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映画・ソロモンの偽証が結構オモロだったので綴っていく。
昨日、なんとなく夕飯時につけて観てたのだが、夢中になってそのまま前後編を駆け抜けた。

本noteでは

  • 1.あらすじ

  • 2.簡単な感想

  • 3.面白いポイント

  • 4.オススメしたい人

  • 5.ネタバレを含む感想

以上、5つの項目で記していく。
ネタバレは嫌だよ、という方は最後の項目まではすすまずに視聴をおすすめする。

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1.あらすじ

1999年、大雪が降ったクリスマスの朝に、中学2年のA組の涼子と野田健一は校舎脇で雪に埋もれた同級生・柏木卓也の遺体を発見する。その死は屋上からの飛び降り自殺と断定されたが、柏木はクラスの不良グループに殺害されたとする「告発状」が届く。警察や教師たちの思惑のままに右往左往する生徒たちはいずれ、自分たちで真実を見出す「学校内裁判」を開廷することを決心する。

こちらの作品は、宮部みゆきの同名タイトルの長編推理小説が元になっている。構想15年、連載9年という超大作をギュギュっと前後編(上映時間121分:前篇、146分:後篇)になんとか詰め込んでいる。

原作小説は、3部構成の原稿用紙延べ4,700枚ととんでもないボリュームである。原作小説は未読だが、恐らく色々と削って削ってなんとか作り上げているのであろう。

ちなみに誰が殺した!犯人探しだ!つるし上げろ!みたいなハイテンション人狼探し映画ではなく、かなり硬派です。

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2.簡単な感想

まず映画のタイトルが前編・事件、後編・裁判となっている通りなのだが、前編は2時間かけて事件発生から裁判を行う決心を行うまで、の内容になっている。

あらすじを読めばこの作品の”トロの部分”は、まだ幼い中学生が「裁判」を行う、というところであるとすーぐわかると思うがそれが前編では見れないので、前後編合わせて267分イッちゃいますよぉ!という人にしかオススメできない。

あと直感的に、中島哲也監督の「告白」を思い浮かべた人もいるかもしれない。

事故死した教師の娘、実は事故ではなくクラスの生徒が殺した…というお話

私は「告白」も好きだが、なんとなくあらすじを聞いて似た作品の印象を持ったものの、蓋を開けてみれば全然異なった内容であった。

「告白」は、娘を殺された教師が加害者である生徒を追い詰めていく復讐劇です。テーマは、”命の重さ”でしょうか。

対して「ソロモンの偽証」は、事件に対して生徒たちが向き合うことを選択し、情報を集めて裁判の準備を行い、裁判の場で真実が明かされる。という一種の青春や推理モノの要素が強い。テーマは、”向き合うこと””人の弱さ”といったところでしょうか。

登場人物の考えや劇中に出てきた要素を拾って、視聴者もともに真実に向かっていく。そういった面白さがあります。

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3.面白いポイント

まずは映像。

この作品は、平成2年1990年、バブル経済崩壊直前の日本が舞台である。それを愚直に、徹底的に映像表現している。登場人物の髪型から、出てくる小道具から、景色から何から何まで現代のモノを感じることはない。意識的に画面に映るアレコレに目をやると懐かしい気持ちになれるだろう。

髪型や化粧まであふれ出る雰囲気、徹底されている

次に役者。

物語上、強調されるのが、「わかってくれない大人」と「よくわからない子ども」という図式なのだが、配役が絶妙だと感じた。

というのが、出てくる大人たちはみんな頭の固そうな、しかめっ面が似合う人たちばっかりだし、子どもたちは妙に瞳がキラキラした、底知れない不思議さを秘めている印象だった。

演技面は賛否あるかもしれないが、配役はハマっていると思う。

最後に物語。

物語が進行していくにつれて、視聴者の作品に対する印象は変わっていくだろう。ホラーなのか、ミステリーなのか、サスペンスなのか、一種のジュブナイルものなのか。恐らく全ての要素を内包しているといえるだろう。

最終的には裁判の準備から開廷、判決に至るまで、登場人物たちとともに推理していくことになる。推理ものってこれがいいですよねぇ。ただ調査・推理するのが”子ども”なので結構粗削りです。

この粗削りさが、楽しめる人と楽しめない人はいるかもしれませんが私は好きです。(Netflix作品「American Vandal」を少し思い出した)

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4.オススメしたい人

1990年代を知っている人は間違いなくオススメです。

特に当時10代だったいまでいう40代の人たちは間違いなく「あ~、当時こんなんだったなぁ」とノスタルジックに浸れることでしょう。

好きな役者が出ている人もオススメです。

特に生徒側で好きな役者さんが出ている人はかなりオススメです。大人にも負けない、学生らしからぬ一面や学生らしい子どもっぽい表情まで、非常に豊かです。ただ私は松重豊が演じる北尾先生が最高でした。

頭の固い大人たちの中で、数少ない理解のある大人。めちゃ渋いです。

推理モノが好きな人もオススメです。

古畑任三郎のような、最初っから犯人がわかっていてどう古畑が真実に至るのか、といった刑事コロンボ的な変化球ではなく、事件発生→調査→推理→解決といった結構正統派な推理モノです。

ただ前述した通り、推理するのはあくまで子どもなのでその粗削りさは個人の好みかもしれません。

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5.ネタバレを含む感想

この映画のピークは、前編の最後と、後編の途中ぐらい、裁判が開廷する前ぐらいでしょうか。

えっ、学校裁判がピークじゃないの?と思うかもしれませんが、私はそう思いました。というのが、裁判は裁判官や書記から陪審員に、弁護士に検察と、キチンとそれぞれに役割が与えられたガチンコのしっかりしたものなのですが

いかんせん、キモの核心に触れた部分が、ほぼ神原和彦という人物の独白に近いものでダラダラとした印象を受けます。一応、主人公であり裁判における検察役である藤野涼子と、神原和彦の質疑応答で語られるんですが

そんな細かく質問せずに一気にしゃべってくんない?って思いました。

更に裁判に至るまで、遺体となって発見された柏木卓也についてはあまり語られないのですが、いざ語られると中二病を拗らせた甘え下手のかしこぶったただの嫌な奴であることがわかります。

めちゃくちゃ嫌な奴、柏木卓也

加えて最後の真相が、この柏木卓也がめちゃくちゃ嫌な奴だった問題と大きく絡んでいるため、なんかスッキりしません。

そのため、視聴していたテンションとしては右肩上がりだったものの、裁判の開廷とともに下落していく。といった感じでした。

ただ総括すると面白いです。
(こんだけ言っといて)

タイトルにある偽証は、不良グループが柏木卓也を殺したという告発状をさします。が、最終的には神原和彦の嘘がメインの偽証だったとわかる、この伏線回収とか。

告発状に関わる人たちがどのような影響を受けるのか(大多数不幸になるんだけども)、主人公の藤野が裁判を決心するまでの流れなど。

引き込まれる要素は多数あります!!
観て損は無いと思います。

最後に主人公・藤野涼子が父親と衝突し、泣きながら家を飛び出した時に降ってくる雨の作りモノっぷりがやば過ぎて笑いました。たぶん泣き所なんですけどね。


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