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日本の経済低迷をMMT(現代貨幣理論)に結びつけることはナンセンスです

もうかなり前のことのように思えますが、ついこの前のことなんですよね。
え?何が?って、英国のドタバタ劇、トラス政権が44日で終わったことですよ。

今朝の日経新聞で、再び取り上げられていたのですが、トラス政権が超短命で終わったきっかけは
『財源なき財政出動』
と書かれていました。

その後のスナク新政権では
『「経済の安定と信頼を政府の課題の中心に据える」と述べて財政規律を重視する姿勢を打ち出している』
なるほど、今の英国であればさもありなんという感じです。

と、ここまでは良かったのですが、その後の日本についての次の記述を読んだ時、ちょっとモヤモヤとしてしまいました。
『日本では、長年にわたって「財源なき財政出動」が繰り返されて公的債務が累積している』
要は、日本も英国のトラス前政権と同じ道をたどるぞ!と警告しているのです。

でも、英国と日本は、決定的に違うことがあります。
それは、英国はインフレであり、日本はデフレ(スタグフレーション)なのです。
英国は好景気が過熱しての物価上昇=インフレであるのに対して、日本の物価が上がっているのは、好景気で物価が上がっているのではなく、「スタグフレーション」または「コストプッシュ型インフレ」という、輸入物価が上がることなどの外的要因による物価上昇なのです。
そのインフレの英国で、インフレ抑制を行わなければならないのに、前政権のような減税やら補助金などといったインフレ促進の政策をやったらどうなるか。
当然、もっとインフレになります。
それは、英国の金融市場も国民も「NO!」を突き付けます。
真反対の状況の英国と日本に対して、同じ政策を取ったら、結果は同じになるわけはなく、結果も真反対です。

つまり、日本については、『英国の新政権と同様に財政規律を重視する方向に早晩かじを切っていくしかないはずだ』
ということはないはずです。

そもそも公的債務は財源なき財政出動なのか?という疑問もあります。
財政法上でも建設国債はもともと発行可能であるし、2025年までは特例公債法で赤字国債も発行できることになっています。
これは立派な財源だと考えます。

さらに同記事では、MMT (現代貨幣理論)についても真っ向から批判しています。

『ところが日本では、現代貨幣理論(MMT)なる財政理論が跋扈(ばっこ)している』
言い方も言い方ですが、MMTは理論であると同時に、事実です。
また、MMTと先日発表された補正予算案とは全く関係が無いと思われます。

さらには、『MMT理論の基本はインフレを心配する必要はない』
と言い切っていますが、そのようなことはMMTでは一切言っておらず、全く間違った認識だと言わざるを得ません。

MMT(現代貨幣理論)の基本理論は主に次の3つです。
1.自国通貨を持つ政府は、財政的な予算制約に直面することはない。
2.全ての経済は、生産と需要について実物的あるいは環境的な限界がある。
3.政府の赤字は、その他の経済主体の黒字

これは、1.で統合政府は国債発行や通貨発行(中央銀行の国際買取)により、需要を拡大して構わないのだが、2.により、インフレ率という限界が生じます。国民経済の供給能力(モノやサービスを生産する力)が不足すると、インフレ率が適正な水準を超えて上昇していくため、財政は緊縮に転じなければならなくなります。
(「知識ゼロからかわるMMT入門」 三橋貴明著 より)

要は、MMTではインフレ率によくよく留意しながら財政出動していくということを明確にしています。決して、インフレを心配する必要はない、ということはありませんし、MMTがインフレを引き起こしたわけでもありません。
MMTは、現在の経済で起きている事実です。

さらにはこう書かれています。
『日本では「衰退途上国」ということがいわれるようになっている。』と。
同記事によると、「衰退途上国」とは
『他の先進国より生産性の伸びが低く、その結果、通貨が安くなり、その下で物価の上昇に賃金が追い付かず、国民生活が貧しくなっている』
という国を指すと書かれています。

他の先進国は、十分な財政出動を行った結果、経済が向上し、景気が過熱し、消費が伸び、その結果インフレとなっています。つまり、前述の「衰退途上国」とは真逆の状況です。
だから今、インフレを抑制するために財政規律を重視した政策を行っています。

その状況とは真反対側である、現在の日本の政府・日銀の政策が全て100%正しいとは私も思っていませんが、少なくても日本がこれ以上「衰退途上国」とならないよう、政府は財政出動を行い、減税(特に消費税の撤廃または減税)を行って、消費を喚起させて国民の賃金を向上させ、日本の停滞した経済を引っ張り上げるべきだと思いますし、日銀は今の金融緩和を継続すべきだと考えます。

『 』内引用、参照
2022/11/3 日本経済新聞 21面 マーケット総合 トラス政権交代と財政規律 より

参照 「知識ゼロからかわるMMT入門」 三橋貴明 著 より

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