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日米インフレと中央銀行の対応の違い~コロンビア大学デビッド・ワインスタイン教授の解説から

11/30 20:14現在、ドル円相場は1ドル=138円90銭台で推移しています。
一時は、150円を突破しましたが、その後は徐々に円高傾向になってきています。
それにしても、この急激な円相場の大幅変動の背景はどのようなことが考えられるのでしょうか。

長期的要因としては、
『日米の生産性の伸びに差が出て両国の相対賃金に大幅な格差が生じたこと」
そしてもう一つは
『米国は何でも日本より高いという感覚を助長している』

短期的要因では
『ウクライナ問題』と『日銀とFRBの金融政策の違い』
です。
後者に関しては、日米が直面するインフレの違いから、日銀は政策金利をゼロ近辺に据え置いているのに対して、FRBは大幅利上げを継続しています。
両国のこの1年の食料品・エネルギーを除いたコアインフレ率は、日本1.5%、米国は6.3%の上昇率です。

米国は、極度にインフレが加速することで労働者は賃上げを要求し、賃金上昇が物価をさらに押し上げ、さらにより大幅な賃上げを要求するという、『賃金・物価スパイラル』が起こっているといいます。
FRBはこれを食い止めようと、ハイペースな利上げを実施していますが、このような金融政策は景気後退を招くといわれており、実際に近々リセッションが起こることが予測されています。

一方、日本は、米国ほどインフレ圧力が深刻ではなく、賃金もほとんど上昇していません。
賃金上昇率が年2%前後ならば、米国のような『賃金・物価スパイラル』が起こることはほぼないと言えそうです。
だから良いというということではなく、日本の課題は、長年の生産性停滞が賃金停滞を招いているということです。
OECD(経済協力開発機構)の調べでは、米国の平均年間賃金は日本の2倍以上です。

日銀とFRBは、それぞれの国での経済状況に応じて適切に対応してきました。
この政策により、ドル円相場に重大な影響を与えてきたことは否めません。
日米金利差は、円安の主因になったと考えられ、金融政策の違いが為替相場の動向に影響を与えてきました。
その結果、
『金利の低い日本にとっては外国投資の魅力が増し、日本人投資家が円建て資産を売り外貨建て資産を買うため円安となる』
と、投資家の行動も為替相場に影響を与えてきます。

デイビッド氏は、日本のインフレは懸念が少ないと結論付けていますが、生産性を高めていかねば、いつまでも賃金上昇には結びつかないという日本の現状の課題の解決が必要です。

『 』内引用、参照
2022/11/30 日本経済新聞 
36面 経済教室【あるべき金融政策 上 日本のインフレ、懸念少ない】より
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