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著者からのメッセージが隠されている、2冊の韓国小説

現在43歳のソン・ウォンピョンさん。同年代の見た目もかわいい女性の作家さんです。

2020年本屋大賞・翻訳小説部門で第1位を受賞した「アーモンド」と2022年本屋大賞・翻訳小説部門で第1位を受賞した「三十の反撃」を読み終えて。

最初から吸い込まれるように最後まで一気に読みたいのはアーモンドでした。しかしそうはいかずしぶしぶ途中でやめて、読みたい衝動にかられて他のことに集中できなかったこともありました。

アーモンドを先に読んでしまった余韻と始めからのストーリーに吸い込まれ方が優しめで退屈さを感じた、三十の反撃。徐々に読み進めていくとじわじわと心に染み渡る、過去の自分と重なるところになぜか安堵感を待ち合わせて、ゆっくり展開していく感覚に埋もれていきました。

半分読み終えたくらいで、もうすぐ終わってしまう後半へと続く文脈がなぜか寂しく感じられた2冊の本。
一気に読みたい気持ちとじんわりゆっくり味わいたい気持ちが混ざり合った複雑な気持ちになりながら。

「アーモンド」は人間という存在そのものへの問いかけで、「三十の反撃」はどんな大人になるのかという問いかけへの著者なりの思いやanswerが隠されています。
2冊の本を読んだ感想をまとめました。

読み始めながら次に読みたい本を買う

「アーモンド」では共感と喪失という社会の問題を扱いながら物語が展開していく。
一度読み始めたら止まらない、夢中で読み切ったのに余韻がずっと残る本でした。「アーモンド」は267ページで4部構成。第1部を読んでいる途中で次に読みたい「三十の反撃」を購入。「アーモンド」を読み終えた直後にまたすぐに別の本を読むことができるように。

しかし「アーモンド」を読み終えてからの余韻がずっと残っていて読みたい本が手元にあっても、暫くは「アーモンド」の余韻に浸っていました。

感情がわからないユンジェと感情が豊かなゴニ

生まれも育ちも性格も正反対な2人はぶつかり合いながらも成長していく。
感情がわからないユンジェを必死で普通の人として育てていく祖母と母。家族が襲われる通り魔のシーンはヒヤヒヤするほどの恐怖を、後半は素直に感情を表現するユンジェの成長を感じる場面がみえて感動する。なぜか読み終えた後の余韻がずっと残る本でした。

✴︎衝撃的なシーンが淡々と語られていてもなぜか読みやすく感じた。

✴︎強く生きる事、本当の共感とは何かを考えさせられるストーリー。

ユンジェの人生とジヘの人生を描いた,ソン・ウォンピョンさんの小説


何かが変化するのはほんの小さな勇気で、小さな反撃でも、何かは変わる

読み始めるうちに心のじわりじわりと広る三十の反撃。だれもが持っている自分。主人公がたどり着いた結末になんとも言えない安堵と温かい気持ちに。国が違えど若者が抱える悩みや社会環境が似ていて、心が痛みました。

「アーモンド」とはまた違った視点で人間や今の世の中が捉えられています。作者と同年代だからなのかとても韓国と日本という境界線はほとんどなく、同じ女性として重なる部分が多くありました。ラストは爽やかで希望があって読み終えたあとの余韻はアーモンドより爽やかでした。

あなたが本当にやりたい事って何ですか?の問いになかなか答えを見つけられないジヘでしたが、間違っていることを間違っているというだけでも、少しは世の中が変わる。と言われて、くじけそうになりながらも自分の進む道を探すジヘ。もがき続ける人生への挑戦はまた別な形で心にストンと入り込みました。

心のどこかで引っかかっていたそっとしておきたい過去の自分に気づいてしまった。そんなことがあったなぁと過去を思い出しながら。今は随分変わったなぁと思いを寄せながら。

世の中の理不尽さに諦めずに立ち上がり、声をあげればそれだけで何かがきっと変わっていく。

遊ぶように仕事をしたいという社長の言葉やスターバックスカフェでのエピソードなどジヘの気持ちが自分の気持ちと重なった。本当にしたかったこと、本当の自分として小さな反撃はジヘにとってスタート地点になる。爽快感が包まれるストーリー。

読み終えてもすぐにまた読みたい、アーモンドと読み返したい部分だけを読みたい三十の反撃と。

ハラハラもドキドキもソワソワもパワーっと優しさに包まれる感覚も本を読みながら感じることができます。

話題の本、読み終えた後も残ってる。
終わってしまう寂しさとまた読みたい衝動と繰り返し読みたくなる思いを育ててくれる不思議なチカラが含まれています。










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