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「柔軟対応と日頃の情報共有」 災害研究のプロ助言鹿妻小・防災会議 校舎以外の津波避難先検討

 石巻市立鹿妻小学校(佐々木裕校長・児童284人)で13日、津波から児童の命を守る方策を考える学校防災推進会議が開かれた。東北大学災害科学国際研究所の佐藤健教授らが校舎以外に避難先となり得る地域の神社やトンネルなど数カ所を視察し、専門的な見地から学校に助言。「柔軟な対応が欠かせず、地域や保護者と日頃から情報共有することも重要」と述べた。

 市内小中学校には、それぞれ震災の教訓や地域の実情を踏まえた学校防災マニュアルがあり、年に1度見直している。今回鹿妻小はこのマニュアルの信頼度を高める目的で会議を実施。県が昨年度導入した学校防災アドバイザー派遣制度を活用した。

 市のハザードマップでは、鹿妻小の津波浸水想定は50センチ―1メートル。東日本大震災時でも床上13センチだったため、有事の際は、校舎2階以上に児童を垂直避難させることが基本。だが県が5月に公表した最大級津波発生時の新たな浸水想定では、同校も3―5メートル(校舎2階相当)ほど漬かる想定となったため、現状のマニュアルを見直す必要が出てきた。

 会議ではこれを踏まえ、同校防災主任の横江一樹教諭が報告。「浸水しない校舎3階は逃げ易さはあるものの決して広くなく、避難した住民を受け入れるにも手狭。火災発生時は避難できなくなる」と語りつつ、立ち退き避難先となり得る鹿妻山、菅原神社、渡波稲井トンネルを挙げた。

 いずれも学区内の山沿いで浸水想定区域外だが、土砂災害危険区域だったり、待機スペースが狭かったり、学校から距離があったりと一長一短。佐藤教授ら4人のアドバイザーは実際に各所を回り安全な方策を探った。

校舎以外に避難先となり得る山や神社を視察した

 佐藤教授は「神社の拝殿や社務所、避難ビルに指定されていない民間のマンションなども、所有者理解を得た上で緊急避難先に含めてもいい。遠慮せず検討すべき」と指摘。「待機スペースが手狭なら児童を1カ所に集約せず、場合によっては分散避難も考慮していいはず」と語った。

 同研究所の桜井愛子教授は「学校だけで背負わず、保護者や地域と合意形成を持つことが大事」と語り、県の浸水想定を含めて学校が考える第3次避難先などについて、日ごろから3者で情報共有しておくことが円滑な防災につながるとした。

 山形大学大学院教育実践研究科の村山良之客員研究員は「複数の避難先を押さえ、柔軟に対応することが大切」と提言。日ごろの訓練からさまざまな状況を想定する必要性を述べ、校長、教頭不在時も最良の結論を導き行動できる体制を作っておく重要性も伝えた。

 同校は年度内にマニュアルを見直し、避難訓練などに生かす。28日にはPTAや地域の代表者を招いた地域防災会議を開き、情報共有を行う。【山口紘史】





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