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捕鯨のまちと絶景の宿 石巻市・鮎川浜 離島中継地から滞在地へ

 一般社団法人石巻圏観光推進機構が主催したМaaS(マース)実証実験「海街めぐり」モニターツアーは、トンガ諸島の海底火山噴火による津波注意報発表で、2日目で中断となり、朝に乗船予定だった鮎川―金華山の船便が欠航。宮城県沿岸一帯に出された津波注意報はなかなか解除されず、結局ツアー続行を断念。安全を確認し、石巻へ直帰した。スタッフは「緊急対応の経験になった」と図らずも災害時のシミュレーションにもなった。

 今回目玉にしていた田代島、網地島、金華山に渡るには、船のターミナルを使う。中継地となる鮎川自体の魅力が増せば、より一層集客につながる。その意味で、港の目の前に立地する観光施設のおしかホエールランドは、絶好の施設だ。

マッコウクジラの骨格標本は一見の価値あり

 ほぼ完全な形のマッコウクジラの骨格標本16.9メートルは、迫力満点。学芸員の山本龍治さんは「至近距離で観察することができるのは、日本の博物館の中でもここだけ」と誇らしげ。

 ミンククジラのヒゲ、アカボウクジラの下あごの骨は直に触ることができる。かつて捕鯨基地としてにぎわったころの映像などでクジラと鮎川のかかわりを学ぶことができる。

 昭和30年代に高倉健さんが鮎川ロケした映画「鯨と斗う男」のポスターもあった。当時の鮎川が映りこんでいて「いつか上映会も企画したい」と山本さん。隣接するビジターセンターでは、鯨尽くしの食事を堪能できる。

 すぐ近くに展示されている第16利丸は、昭和63年まで活躍した捕鯨船。甲板に乗船して捕鯨砲に手をかけることができる。

ホテルニューさか井の206号室
©Rebоrn-Art Festival(photo by Takehiro Gоto)

 15日に宿泊したホテルニューさか井の遠藤秀樹社長は数年前から離島観光に目を付け、独自に東京の旅行会社にセールスしてきたという。「何と言っても船からの眺望が最高なんです。そこを楽しんで、ウチで鯨料理を味わっていただくのが一番」とアピール。平成29年の「リボーンアート・フェスティバル」の際、現代詩の巨匠、吉増剛造さんが滞在した206号室を「roomキンカザン」として現状保存。見学可能で、今でもファンが訪れるという。

 部屋の窓、あるいは大浴場から望む金華山は、泳いで渡れそうなほど近くに感じられるのも大きな魅力だ。

 ただ、平日に金華山への船便がないことがネックになっているという。「ある程度補助金などで運航できれば、いずれ黒字に転換できると思うんだが」と遠藤社長は悔しそうな口ぶりで話した。

 周遊チケットを計画するにしても、3島の船便には3社が関わっており、一枚岩になるにはハードルが高いのかもしれない。【本庄雅之】


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