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灯台下暗しのリゾート地 石巻市・田代島 ここでしか味わえない時間

 トンガ諸島の海底火山噴火による津波注意報で、中断となったМaaS(マース)実証実験「海街めぐり」モニターツアーは、新たなチケットの予約・決済システムの予行演習であると同時に「コロナ後」を見据えたツーリズムの試運転という側面もあった。ツアーを主催した一般社団法人石巻圏観光推進機構が着目したのは離島の田代島、網地島、金華山。今回唯一渡った田代島の魅力とは―。(3回続き)

 石巻中央桟橋から島の北側・大泊まで約40分。仙石東北ラインで石巻から仙台へ行くよりも近い。旧北上川の河口から延びた堤防の先を超えると船の速度が上がり、船旅気分が一気に上昇した。

 猫の島としてすっかり有名になった田代島だが、目玉はアウトドア施設のマンガアイランド。各種旅行サイトに紹介されているが、自分の足でたどり着いた時の味わいは格別だ。徒歩で約1時間。高台から望む大平洋、網地島が眼前に迫る光景はまさに自然の醍醐味。吹き付ける風、砕け散る波、鳥のはばたき。非日常の音が新鮮だ。

 大小5つのロッジと8区画のテントサイトがあり、現在は閉鎖中だが4月下旬にはオープンの予定。里中満智子さんら漫画家がデザインしたロッジの建物が目を楽しませる。周辺に民家や商店がなく、抜群の開放感に浸れる。

マンガアイランドからの眺めは気分爽快

 仁斗田漁港近くに住む高橋幸代さん(69)は、6年前に東京から移住した。夫の幸夫さん(67)の実家が登米市内で宮城県に縁があった。

 「ここは自然がいいの。ふきのとう、タラの芽、わらび、ふき、菊芋、桑の実などなんでも自生してるから取り放題だよ」と笑顔を見せた。買い物には時々石巻に足を延ばすが、不自由は感じたことがないという。

 仁斗田漁港で田代食堂を営む濱温さん(63)は、漁師をしながら民宿、釣り船も営む。こちらも釣り好きが高じて20年近く前に移住した。「ウチは一番無愛想な民宿」と冗談交じりに言った濱さん。最盛期に出すウニの軍艦巻きは通常の数倍はウニが乗っていて味も上々と評判。写真撮影はお断りにしているそうだ。

 釣り好きで知られる人気アイドルグループ嵐の大野智さんが、お忍びで訪れたこともある田代島。猫好きには定番の猫神社のほかに多種多様な虫が生息する鹿島神社は、スタジオジブリの宮崎駿さんの世界が味わえるらしい。

 目立った商店もなく50人前後の住民が静かに暮らす。「違う時間が流れている」(高橋さん)のが、最大の魅力かもしれない。石巻圏の人たちには、灯台下暗しのリゾート地と言えそうだ。【本庄雅之】


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