見出し画像

コロナ後見据え実証ツアー 石巻圏・離島と半島巡る旅 スマホで楽々予約、決済

 一般社団法人石巻圏観光推進機構(後藤宗徳代表理事)が主催するМaaS(マース)実証実験「海街めぐり」モニターツアーが15―16日にあった。石巻市の田代島、牡鹿半島の鮎川浜を巡り、2日目は金華山に渡る予定だったが、トンガ沖で発生した海底火山の噴火による津波注意報発表で、2日目の行程は中止となった。

 ツアー最初の作業はチケット予約。「海街めぐり」のアプリを取得した後、2日間で乗船する4つの船便を予約した。スマートフォンで思ったほど苦労せず、間違ったチケットもキャンセルして取り直すことができた。

 スタートは石巻市の中央桟橋から田代島へ。スマホの画面を示して船に乗り込み、高速船で約40分で到着した。

 島の北側の大泊で下船し、島内は徒歩。最初は上り坂できつく感じたが、次第に慣れてきた。途中、定番の猫神社を参拝し、1時間ほどでアウトドア施設「マンガアイランド」に。高台から太平洋を望み、左斜めに網地島が迫る光景は、実に気分爽快。

田代島へ渡る高速船

 休憩の後、再び徒歩で仁斗田へ。こちらは下りで楽に進めた。漁港が近付くと猫が次々姿を見せ、猫島を実感した。仁斗田漁港では唯一の食事処「田代食堂」で昼食。イナダの塩こうじ、つぶ貝の酢の物、あら汁など地物が並んだ。

 昼過ぎの便で約1時間かけて鮎川へ。観光施設の「おしかホエールランド」は、捕鯨のまちとして栄えたころの映像やクジラの標本があり、一見の価値ありだ。近くに展示されている捕鯨船「第16利丸」の甲板にも乗ることができる。

 宿泊先は、ホテルニューさか井。平成29年に開催された「リボーン・アート・フェスティバル」で展示された美術家、草間彌生さんのオブジェの写真などが掲示され、周辺の魅力をアピール。夜のメニューにはクジラの刺し身が出て疲れた体を喜ばせた。

田代島を徒歩でめぐるツアー参加者

 一夜明けると、トンガ沖の火山噴火のニュースでもちきり。ツアースタッフが、対応に追われた。津波注意報が解除されないうちは船が運航できず、早々に金華山行を断念。結局、2日目の予定はすべて取りやめた。道路状況などの安全を確認しながらバスで女川町へ。石巻線に乗って午後2時前に石巻駅に到着、解散した。

 ツアーには行政、観光関係者ら11人が参加した。石巻市観光課の鈴木良彦課長は「コロナ後を見据えた準備段階のツアーでいい企画だったが、途中までで残念」と語った。

 石巻圏観光推進機構の難波昇吾さんは「船の運航会社が複数あることもあり、すぐにデジタルに全面移行するのは難しい。課題を見つけるためにもツアーが実施できてよかった」。別のスタッフは「想定外のことも含めて勉強になった」と胸をなでおろした。

 アクシデントは別にして、マースの利便性は理解できたが、デジタルに不慣れな高齢者への対応や電波状況の悪い地域ではどうするのかなど課題は残り、実用化には当分時間がかかりそうだ。【本庄雅之】

【メモ】МaaS(マース)とは、モビリティ・アズ・ア・サービスの略。国土交通省が推進するIT(情報技術)時代の新しい移動システムだ。目的地に向かう際、複数の交通手段で最適な方法、時間を示すことは、すでに可能だが、マースはそれら全てを事前に予約し、決済まで一元化するシステム。
 スマートフォンなどにアプリを入れ、画面に従って一連の手続きを行う。事前にチケット予約、決済まで済ませることによってスムーズな行動につながる。特に地域に根差した細かい情報によって、地方の交通手段の確保に利便性を発揮する。現在、全国各地で実証実験が進行中だ。


現在、石巻Days(石巻日日新聞)では掲載記事を原則無料で公開しています。正確な情報が、新型コロナウイルス感染拡大への対応に役立ち、地域の皆さんが少しでも早く、日常生活を取り戻していくことを願っております。



最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。皆様から頂くサポートは、さらなる有益なコンテンツの作成に役立たせていきます。引き続き、石巻日日新聞社のコンテンツをお楽しみください。