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今日も、誰かのサンタに

クリスマスが近づいてくると、私は、学校でのあるイベントのことを思い出します。

公式のイベントでないながらも、誰にともなく「やろうよ」と声があがり、気づくとクラスの全員が巻き込まれることになる、あの行事。

スポーツのできる人が輝く球技大会や、私のような人間には少しうるさすぎる文化祭とは一線を画す、あの行事。

そう、クリスマスが近づくと行われる……

シークレットサンタです。


何だそれは? という方のために説明しますと、

クラス全員が、誰かのサンタになり、相手に気づかれないようにプレゼントを贈ったり、その人が喜びそうなことをしてあげたりします。

クラスの誰もが、誰かの”秘密のサンタ”になる、というわけです。

本当にそれだけの遊びなのですが、やってみると案外盛り上がるもので、冬休み前最後の登校日に、初めてサンタの正体が明かされるまで、「私のサンタは誰だろう?」とか、「正体がバレてないかな?」と、なかなかのドキドキ感を味わえるのです。


誰が誰のサンタになるかは、おみくじで決めます。

自分のサンタになってしまう人が出ないよう、おみくじを引いた後、自分の名前が書かれていないことを確認します。
(もし、書かれていたひとがいた場合、何人かでシャッフルしてやり直します)

そして、もうこれで準備万端、となると、何ともいえない、緊張感とでもいうべきものがクラスに漂います。

「普段、あんまり話したことのない子のサンタになっちゃった。あの子は、何が好きなんだろう?」

「仲良しの◯◯のサンタになったけど、いつも一緒に行動してるから、バレそうだなぁ」

「あの子は寒がりだから、明日は、カイロでも渡そうかな。でも、カイロばかりじゃつまらないから、何か他のものも考えないと……」

という具合に、それぞれが頭をフル回転させ始めるからです。

シークレットサンタに、これといったルールはありませんが、ひたすらモノをプレゼントする、というのは基本的にはご法度とされています。

気持ちより、お金って感じがしますからね。

そういうわけで、サンタたちは、頭をひねります。


相手の子が日直の時、黒板の板書を消し忘れていたら、そーっと消してあげたり。

筆跡を変えて手紙を書いてみたり、別のクラスの子に代筆を頼んでみたり。

相手の子の仲良しさんを味方につけて、「私がサンタだってことは、絶対言わないでよ」と念押ししながら作戦会議を始めたり。

机の上を掃除して、「綺麗にしました!」ってカードを置いてみたり。


相手の反応が見られるのは、サンタとしては大きなやりがいです。

人によっては、サンタからのアクションに気が付くと、「私のサンタさん、ありがとー!」ってそれこそ全員に聞こえるように叫んでくれます。

シャイな人も、自分の友達に「さっきね、私のサンタさんが、これ置いておいてくれたみたい……」とひそっと、うれしそうに報告するのです。

冬の寒い期間、クラスにはあたたかい雰囲気が漂います。

もちろん、中にはサボり気味のサンタもいるのですが、「○○のサンタの人、ちゃんと仕事してよー!」と学級委員長が叫ぶと(誰がサンタなのか分からないので、叫ぶしかないのです)、次の日には何かしらのアクションを起こしてくれます。

最終日に、その”おさぼりサンタ”の正体が明かされ、「ごめんね~」なんて言いながら相手の子にプレゼントを渡す姿を見ると、クラス中に笑い声が巻き起こります。

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こんな素敵なイベントに参加できたことを嬉しく思う一方で、この先、同じ経験ができることはそうそうないのではないかと思います。
大学ですら、こんなイベントはありませんでしたから、社会人になったら、もっとお目にかかれないのではないかと思います。

でも、1人シークレットサンタをすることはできます。

それは一体何をするのかというと、誰かに手を貸したいと思った時、その人のシークレットサンタになったつもりになってみるのです。

日常生活の中で、誰かに優しくしたいと思った時に、何だか気後れしてしまうことってありませんか?

例えば、先ほど、シークレットサンタが、日直の子の代わりに黒板を消してあげるという話をしたかと思います。

でも、普段は、日直の子が黒板を消すのを忘れていたとしても、その子とよほど親しくない限り、「私が突然やったら、変に思われないかな……」などと考えて何も行動を起こさないものです。

でも、シークレットサンタをやっていた時のことを思い返すと、「私はあの子のサンタだから」という義務を言い訳に、善行に励むことができていたように思うのです。

シークレットサンタをやっている時、クラスの雰囲気があたたかくなるのは、皆が、いつもは心の中にとどめていた優しさを、本人には気づかれないように気をつけながらも、堂々と行動に移していたからだと思うのです。

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ですから、誰かに手を貸したくても、何だか勇気が出ない時、その人のサンタのつもりになってみてはいかがでしょうか?

きっと、誰の心の中にも優しさはもともとあってあとは行動に移せるか否かの問題だけなのです。

あなたの内側にある優しさを、ためらわずに外に出してみてください。きっと、あなたの心も、相手の心も、ほっと温かくなると思います。



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