【退職エントリ】①社団法人の一事務局員がCTOとして勤め上げるまでの14年間_1_2009-2010年編
前置き
本記事について
2023/03/31 付けで 14 年間勤めた 一般社団法人全日本ピアノ指導者協会 ( ピティナ ) を退職しました。
後半は CTO としてだけでなく、事務局内の組織改革などにも手を着けていました。
本記事は、そんな人間による退職エントリです。在籍期間が長いので、思いで語りとして記録をつけておきます。
以下 5 分割の一編となります。
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【退職エントリ】社団法人の一事務局員がCTOとして勤め上げるまでの14年間_5_2020-2022年編。そして退職に至る経緯
三行要約
2009/04 に新卒入局
最初の一年間は、全国各地の支部/ステーション事務局へ段ボールを 1,000 箱以上、ひたすら梱包~発送しまくっていた
二年目は渉外折衝をしまくっていた一方で、事務局内で使われていた FileMaker システムの改善改修を積み上げ続けた結果、「なんか IT に強そうなやつ」認定され始める
対象読者
退職エントリを読むのが好きな人
非 IT 人材が CTO になるまでの過程を知りたい人
ピアノ教育業界における社団法人での仕事の中身を知りたい人
わたしについて
野口 啓之 / Hiroyuki Noguchi / Hi-Noguchi
現在は 株式会社きみより 代表取締役
大学院修士修了
専攻は西洋史学、とりわけ 18 世紀ドイツの思想史/教育史/軍事史
特に ヨハン・ゴットフリート・ヘルダー Johann Gottfried Herder を中心に
最近の学会での研究会発表
「『旅日記』後のヘルダーの教育論――「学校講演」1776年~1791年を中心に――」
入局の経緯
大手新卒採用サイトで「ピアノ」と検索してみたら出てきた
オフィスが駅チカ
JR 山手線 巣鴨駅 徒歩 1 分!
採用担当者・事務局員の人柄/雰囲気が総じてよい
社内の自由度が高そう
椅子を自由に買っている人がいる
私服 OK
サンダルでも OK
代表専務理事 ( 株式会社でいう代表取締役社長 ) に惹かれて
「学習塾」などのような公教育と深い関連があるわけでない、私教育の事業体として、日本で唯一無二な存在であること
「教育」で日本を変えたいという気持ち
教職課程を取っていたけれど、公教育の在り方は「中から」の変革は容易ではないという理解に至る
建物を動かすためには建物の外にいなくてはならない、という喩え
私教育側から公教育を変えることができるのでは? という試み
市民主義社会の実践者たりえたい
入社後の「直接的な業務内容」は何でも構わなかった
IT を仕事にすることはないかなーと思っていた
ピティナ ( 一般社団法人全日本ピアノ指導者協会 ) とは
ピアノを中心とした音楽教育の推進をしている団体
2023/04 現在 18,000 名弱の会員が所属されている一般社団法人
ピアノ教育に関わることならほぼ全てに関して幅広く事業をおこなっている
コンクール
セミナー/eラーニング
教室紹介
曲事典./音楽研究所
などなど……
2009 年
主な担当について
上半期:コンクール → 下半期:ステップ(発表会の発展形のような事業)にて「荷物準備」担当として配属
年間で 1,000 箱以上の段ボールを梱包(その中身の帳票類の印刷からグッズの準備まで含む)全国各地の支部/ステーション事務局へと送り届けていた
配送業者に就職したのかな? と思っていた
手の生傷は絶えなかった……
紙ならマシ。段ボールで切ると超痛い
帳票類の数を揃えるということにこれだけの労苦があるのかと学ばされた
たとえば用紙が一束 1,000 のものがあったとして、そのうちの 800 を封入しなくてはならない。あるいは 1,200 を封入しなくてはならない。といったとき、 200 枚を数えるなんていうことはできない。ならどうするか? 1,000 枚あたりの重量をベースに、キッチン秤で重さを数えて封入するのである……
段ボールに納品物を入れていくのも、封入漏れしないよう、チェックリストをつけつつ、中で崩れるのを防ぐために順番であったりを気を付ける必要があったりする
コンクール表彰式の荷物搬出入でハイエース部隊( 3 名 )に配属
以後 10 年にわたって運転手も務めるなど
FileMaker Pro とのお付き合い
社内で既に 15 年ほど使われていた FileMaker Pro の既存スクリプトに何度となくやられる
カスタムダイアログに嘘をつかれる
ダイアログが表示されないままに、破壊的な処理が実行される
スクリプト名と実行処理内容とにズレがある
やられるたびに立ち上がる雑草根性で、スクリプトを改善し続けることに気勢を上げていた
生粋の「めんどうくさがりや」であるため、楽をするためのスクリプトをせっせと作り続けていた
複数回ボタンを押さなくてはならないところ、一つのボタンへ全てまとめあげるとか
手入力しなくてはならないいくつかの固定値を、ボタン化するとか
今から思うととんでもなく「自由」な社風であったため、入社翌日くらいから先輩に伺いつつ取り組み始めていた
FAX が現役という衝撃
2009 年当時でまだ FAX が日本のビジネス現場でバリバリ現役であったことに驚かされる
FAX やだ FAX やだと嘆いていた
一応、メールで FAX 送ることはできた
FAX A4 1 枚換算で 25 円計算だったはず
とはいえ、先方から FAX が返ってくる先は複合機なのであり、「あの FAX 返ってきてる!? どこいった!? 再送してもらわないとダメ!?」といった悲鳴が飛び交うなど
「マイページないの?」
会員やコンクール参加者向けの「マイページ」といったものが存在しないことに対して、無邪気に「何でないんだ、あったらいいのに」などぼやいていた
まさか少し後に自分で作ることになるとはこの時には夢にも思わず……
その他
その他、教育における「競争」の効用といったものを、各所から論文を収集してレポートとしてまとめあげ、音大教授にプレゼンするなんていう経験も……
2010 年
主な担当について
一年間を通してステップ事業担当
各事務局との渉外折衝や、参加申込の取りまとめ、当日のプログラム組みなど幅広く
「参加申込の取りまとめ」は、言うまでもなく、各地区の定員超過管理がある
多すぎては当然いけない、しかしもちろん収支上少なすぎるのもよくない
定員超過した場合、運営事務局へ「ホールを借りている時間の延長」など交渉にかかったりする
超過してどうしようもない場合は、申込者側へ他地区への誘導をおこなう
申込は 24/365 開放されているので、いつ超過するか分からない……
つまり……後は言わなくても分かるかな……?
当時の話。今は自動締切処理がかなり充実している
充実させたんですよ!! 苦労してきたから!!
クレジットカード払いでない申込者で「締切」を迎えているのにお金を払ってくれない方々もそれなりにいらっしゃり、催促が必要となる
メールを送っても返事がない
電話もつながらない
留守電もなかったりする
登録されている指導者の方につながればまだ救われるが……
では「機械的にお断りで」とすると、そういった場合に限って後からクレームが発生したりするものである
ここでの「プログラム組み」というのは、朝何時に始まり、全何部で構成され、終了は何時に。そして、それぞれの部に誰が出演となり、どのような演奏曲で登録されている人らがどのような演奏順番で……といったものを緻密に組み上げる作業
考慮すべき項目はものすごくたくさんある……
一人で複数枠参加している場合に時間を離しすぎない
家族で参加している場合に時間を離しすぎない
参加する人達のレベルを合わせるかある程度バラけさせるか、各事務局ごとの方針に沿わせる
同一曲が連続するようなことは避ける
大人の参加者に対しては「場違い」感を与えないような演奏順にする
各地区に固有の「企画」がある場合はその企画参加者についての演奏順を考慮する
その上で、各部ごとの合計演奏時間を一定の範囲におさめる
しかも参加組数は地区によっては 100 名超えることもザラにある。組数が多ければ多いほど、事務局側にこだわりがあればあるほど、組むのが大変になってくる……
続・FileMaker Pro とのお付き合い
そんなこんなで引き続き事務上で使う FileMaker スクリプトとの戦争。死地を乗り越えて力をつけていく
「おや? きみ、 IT が得意なやつなんだね?」として認定されていく
プログラミングなんてむかしむかし中学生の頃 PC-98 で DOS をちょっと書いたり、『RPG ツクール』やってたくらいしか……
PHP は出版社だと思っていたくらい
自作 PC 組んでたり、ユーザとしては 1999 年くらいからテレホ × ICQ 民であったりしたので、まあ素養がまるでなかったわけではないのだろうけれども
私物機材で野良配信担当
私物機材を持ち込んでコンクール最上級の「特級ファイナル」を Ustream で配信
既に Ustream が死語……
東京会場しかないので、限られた人しか聴けないのはもったいない! と思って、業務委託でお手伝いいただいていた元社員の方と一緒に、ノリと勢いだけで実施。以後、恒例化
そもそも「配信」という業務はなかった時代
よくお許しいただいたなあと今では思う……
FileMaker Pro で FAX 送受信システム作成
FileMaker Pro 上での FAX 送受信システムを作成
「あれ、お前まだ IT 担当じゃないよね……?」「そうなんです」
2009 年の段で書いた通り、紙 FAX 事務がつらすぎて、デジタル化したかった
faximoSilver というサービスを見つけてきて、それと FileMaker Pro 上で FAX 受信できるプラグイン POP3it Pro とを組み合わせ、実現
これによって FAX がメールで PDF で返ってくるという幸せを得る
さらにこれによって、「 IT 担当」への道が確定ルートになるのであった
インプロ研修幹事
インプロ ( 即興劇 ) 研修の幹事を拝任
当時、社内でインプロ講師を招いて研修がおこなわれていた
振り回され続けることに対して積極的に慣れ、耐性をつけていくために、幹事を担当して社内推進をおこなうことに
以後 7 年間担当
IT 担当としての胆力も、ここで随分と鍛えられた。動じない心!
後書き
雑感
肉体労働に始まり、胃がキリキリやられる交渉から緻密な事務まで、社会人にとって必要な諸々が培われた二年間でした。
その他、経理事務だとか簿記知識だとかの基礎も身につけたものです。
「ジェネラリスト」としての素地はここで叩き上げられました。
ただまあ「ヒヨッコ」であることには変わりなく、まだまだキャリアとしてこの先自分がどうなっていくかという見通しもまるでありませんでした。
激動期に突入するのが 2011 年からです。いよいよ IT 担当になるときが。
3.11 東日本大震災 もありました。
さて、続きは次回の記事にて……
次の記事
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こんなわたしが代表をしているのが 株式会社きみより です。
というヴィジョンのもとで、
という、「お悩みなんでも打ち返します!」なお仕事をしています。
ちょっと難いお題目は抜きにしても、
社内組織の円滑な運用に悩んでいる!
プロジェクトマネジメントがうまくいかない!
チームマネジメントがうまくいかない!
「ひとり情シス」状態で困っている!
「ひとり情シス」が辞めてしまった!
など、何かお困りゴトがあればお気軽にご相談ください! 🙌
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