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他人の「美しくなりたい」という切実さを笑うな。

ドルチェ&ガッバーナでの中国での炎上が大問題になっています。

一晩で中国市場を全て失ってしまったドルガバ炎上事件の衝撃(徳力基彦)
https://news.yahoo.co.jp/byline/tokurikimotohiko/20181123-00105139/

箸でピザやパスタを食べるCMが中国文化を侮辱しているということで批判を受けましたが、その後創業者のステファノが個人宛のInstagramで中国批判のDMをしたのがスクショされてしまったことがさらに大問題。

ショーの中止、不買運動と大きな動きになっています。

箸というのは中国に限らず、日本、韓国、とアジア圏の文化ですから、私達日本人も他人事ではありません。

それ以前から、日本人差別発言もありましたし、人種差別の色があったD&Gですが、今回はかなり手痛い仕打ちを受けたことでしょう。

中国は現在、大きなマーケットです。

2015年のファッションの祭典MET GALAのテーマは「鏡の中の中国」でした。

その様子は映画にもなりました。

『メットガラ ドレスをまとった美術館』
http://metgala-movie.com/

このこともわかるように、欧米の人達にとって、中国マーケットは無視できない存在です(そして、もはや日本はメインマーケットではないこともわかります)。

しかし、欧米人の中には、私達日本人にもあるように、そして私達日本人もかつて欧米人から浴びたように、中国人、アジア人は自分達よりも劣った民俗という感情がどこかにあるのでしょう。

D&Gはステファノの投稿を「ハックされた」という苦しい見え透いた嘘(と思われる)を発表しましたが、対応が悪手過ぎます。

謝罪動画も流れましたが、二人のしょうもない姿を全世界に発信しただけに過ぎません。

中国人は日本人と違い、大陸らしい団結力と、愛国心、ストレートにNOと言う強さを持っています。

日本と違って、中国は多分あんまり欧米コンプレックスもないような気がします(逆に言えば日本人がコンプレックスを持ち過ぎているように思います)。

今まで日本人には怒られなかったことが、中国では通用しなかった、というのが本音な気がします。

私としては、もう中国マーケットは諦めるしかないですね、と言いようがないです。

中国人は忘れっぽい日本人と違って、ずっと忘れないように思うので、ほとぼり冷めるっていうのが通用しないような気もします。

ただ、デザイナーの身としては、ドルチェ&ガッバーナの二人の気持ちもわからなくありません。

彼等のデザインする服を見れば、イタリア、ヨーロッパの宗教性や伝統を存分に散りばめられていることがよくわかります。

自分達の文化に自信がなければあのデザインは出来ないでしょう。

彼等の心情としては「ヨーロピアンに着て欲しい」という気持ちがあるのかもしれません。

しかし、ファッションはアートではなくデザインであり、ビジネスです。

デザイナーが着て欲しいという気持ちと買い手がマッチングするものではありません。

むしろマッチングしないものなように最近思うようになりました。

なぜかといえば、ファッションはコンプレックスの裏返しを表現することがあるからです。

D&Gは日本人にも人気です。

それは多分ヨーロッパの文化に憧れがあるからです。

私は今、ゴスロリのパターンの仕事もしていますが、サイズのことでその会社さんと頭を悩ませたりします。

サイズがどんどん大きくなっていくらしいのです。

大柄な人、男性も着ることがあるので、小さいサイズで作ると売れなくなるのです。

サイズ感は売れ行きを左右する問題です。

作り手としては華奢に作りたくても、そうはいかない現実があります。

そして、きっとちょっと大柄な女性や、女装をしたい男性ほど、ゴスロリという可愛くてダークな服に憧れるのではないかと思うのです。

本音を言えば美少年が大好きな私も、若い美少年がこぞって自分のブランドのシャツを着てくれれば理想の世界かもしれませんが(笑)、でも、美少年がうちのシャツを買えるとも思いません(そして大概、美少年はお金がないのはなぜなのでしょうか…)。

自分も見た目にコンプレックスがたくさんあります。

だからこそ、服がもたらす魔法を信じているところがありますし、服をデザインすることはシンデレラの魔法使いみたいなもののようにも思います。

人間は絶対的な価値観だけで生きていません。

日々、相対的な価値と絶対的な価値を行き来しています。

いつもと違う格好をしてきた異性(異性とも限りませんが)にドキッとして好きになる、イメージチェンジして垢抜けて人気になる、服はそうした相対的な価値を変える力を持っています。

その服を選ぶ気持ちというのは、その人の切実な願いがあるはずなのです。

デザイナーはその切実さをバカにしてはいけないと思うのです。

シンデレラだって「舞踏会に行ってみたい」という切実な願いがあったわけではないですか?

切実な願いを汲み取り過ぎてもいけない(新しいものが生み出せなくなるので)と思いますが、自分のビジネスを支えているのはそういう切実さだということは忘れないでいたいと思います。

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