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パリ軟禁日記 22日目 厳しくなる外出禁止令

2020/4/7(火)
パリ市から新たなお達しが出た。明日から外出禁止が強化される。これまでは特例外出許可証によって個人の運動は1人1日1回、家から1kmの範囲で認められていたけれども、明日からは朝10時から19時までの間の運動は禁止されることとなった。要するに、日中は街中を散歩したり走り回ったりするな、ということだった。陽気に誘われて、先週末は多くのパリジャンが特例外出許可証を持って街に出た。彼らの行動は警察にしっかり記録、上に報告されて、今回の結果につながった。

今日もパリは快晴。気温は23度まで上がった。いつものランニングの時間、18時過ぎに家を出て、セーヌ川を見下ろす遊歩道に沿って走った。この当たりに住んでいるのだろうホームレスのおじさんとすれ違った。ものが詰まったバックパックと丈夫な買い物袋をいつも持って歩いている。ホームレスも今回の騒動で見入りが激減し苦境に立たされているという記事を読んだ。施しによる彼らの見入りは、(通りがかかる人の数)x (小銭を恵んでもらえる確率)x(平均金額)で計算されるわけで、一つ目の項が激減した今、かなり厳しい状況にあるのだろう。一見すると、旅人のようなおじさんだ。何かきっかけがあれば話を聞いてみたい、と思った。

自宅から1km圏内において、どの場所がこの時間帯において夕陽が差し込んで暖かいか、僕はだいたい把握できるようになった。隣人たちも同じ心得があるようで、陽当たりの良いベンチはいつも埋まっている。今日は少しお腹の出た、初老のおじさんが一人で座っていた。ただ、何もするわけでもなく、夕陽を浴びてベンチに座る。きっと、おじさんの毎日の楽しみの一つなのだろう。こんな事態になる前は、どこかのカフェのテラス席で新聞でも読んでいたろう姿が想像された。

帰り道、道の真ん中で熱いキスをしているカップルを見た。普段のパリならあまりにも当たり前な光景だけれど、最近見ていなかった光景だった。2人ともジーンズに白地のTシャツという服装で、ソーシャル・ディスタンスなんのその、愛し合う姿がオレンジに染まり、絵的にばっちりキマっていた。キスが終わると2人は手を繋いで家路についた。僕も交差点を曲がって妻の待つアパルトマンを目指した。

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