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パリ軟禁日記 10日目 パリの映画館

2020/3/26(木)

光と暗闇。まだ見ぬ世界に出会える期待に胸が膨らむ場所。映画館という空間が好きだ。

パリには多くの映画館がある。大手チェーンのシネマコンプレックスから個人が営業しているミニシアター。クラシックばかり上映しているところもあれば、なぜか『ロッキー・ホラー・ショー』を欠かさずやっている劇場もある。フランスは映画の国であり、映画館の国だ。

日本ではない月額定額見放題のサービスも映画ファンとしては嬉しい。僕が入っているのは月額33,90ユーロで2人まで見放題というものだ。日本だと大人1枚1,800円ということを考えると破格と言えよう。2人で2回観ればあっという間に元が取れる。フランスの映画料金は日本のように一律ではなく、劇場や時間帯によって異なる。そのため、休日だと日本と値段が変わらないところもある。

座席指定ができる劇場もあるけれど、フランス人はそういう細かいところは気にしない。上映開始時刻の前からでも「ここ、来なそうだな」と思われたら、ガンガン席を変わっていく。一度、数人しか入っていない昼の回で、僕が指定した席に座っているお兄さんがいた。似たような場所の席を指定すればいいのに。2人がけで座れるソファーシートを備えた劇場もある。数が少ないので、運良くその席で見られた時は普段よりも映画を幸せが気持ちで見ることができる。

感情表現豊かなフランス人の様子が見えるのもパリの映画館の楽しい部分だ。いい映画だと思ったら上映後に拍手をする人も少なくない。昨年見た『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の例のキスシーンでは溜息と、失笑と、「静かにしろ!」という声がジョン・ウィリアムズの音楽に重なった。先月行った小さな劇場では、おばあちゃんがチケット売り場で「この時間帯で始まる2本の映画、どちらがいいかしら?」とスタッフに尋ねていた。2本の映画は『娘は戦場で生まれた』(ワアド・アルカティーブ、エドワード・ワッツ監督、2019)と『Sibel』(Çagla Zencirci、2018)だった。おばあさん、映画通ですね。

この1週間、縁があって読んだ『ファイアパンチ』(藤本タツキ)は映画愛に溢れた漫画だった。「人は…死んだらどこに行くんだ?」という問いに、「映画館」と即答するシーンは最高だった。毎週映画館に通っていた身としては毎回生死の境を彷徨っていたことになる。嗚呼、はやく臨死体験…じゃなくて映画館の再開が待ち遠しい。

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