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【小説】『エニシと友達』11/12

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(12回中11回目:約700文字)


 ドアを押し開けるなり駆け出して、ちょうど対向車の途切れ目を縫って道路を街に向かって渡り切れた。
「マイク!」
 と呼ぶ声が聞こえたような気もしたけど、そんなのは初めから、自分の名前じゃない。
 走りながら、上着は脱ぎ捨てて少しでも、フォンダが語るだろう特徴に自分が当てはまらないようにした。走りにくい革靴も脱ぎ捨てて、靴下を、厚手の物にしていて良かったと後から思った。
 きっと、どこかに何かが見つかるはずだ。その信頼だけで突き進んだ。何の可能性も無いような所に、ペトラがボクを放り出すはずがない!
 はっきり見ようとすれば、見知らぬキレイな街中にも、あちこちにモヤモヤやドロドロが浮かんでいて、
 ペトラがどうして今日はあんなに白くて美しかったかに思い当たった。
 モヤモヤにドロドロが少しずつ、増えていって取りつきたい相手を目指している。生きていた間ずっとずっと、毎日毎晩、呪い続けた相手で、ボクは、その人達の子供で、
 だけど、ボクは友達だ。この呪いと、友達になれるのはボクだけだ。
 ボクだって、「許して」なんて絶対に思えないし、言えないけどそれでも、許してもらえるとしたら、ボクだけだ。もしかして、愛してももらえるかもしれない奴なんか、そんなのは、ボクくらいしか有り得ない!
 指先に肩にくっついた、ドロドロが曲がる場所を教えてくれて、現れた広大なショッピング施設そばの、広い駐車場には、名前を変えたって身なりに話す言葉を変えたって、背中一面をドロドロに張り付かれている彼がいた。
「フォックストロット!」

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