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【脚本】「宓」番外編ー華実ー

「宓」プロジェクト派生作品、「華実」。
この作品は女性のみでいわゆる”花魁”要素を取り入れたナンバーのために書いた脚本です。
単なる花魁風ナンバーではなく、本編に沿った設定をしっかり取り入れた厚みのある作品で、登場人物たちは本編での巫女達。
が、この作品の時代設定は古から現代まで、巫女から遊女へと渡り歩く女達の歴史を描いたかなりボリュームのあるもの。
役名があるわけではなく、”女”の世界の一面を時代を経ながら象徴的にストーリー仕立てに描く内容にしていきました。
3曲構成になっていて、大体平安時代あたりの歩き巫女から始まり次に江戸の吉原、最後には現代を通り越して少し近未来の遊郭へと時代が進んでいきます。

曲も編集もめっちゃくちゃこだわりまして、
1曲目平安時代
川井憲次「謡 Ⅰ-Making of Cyborg(2.0ver.)
2曲目江戸時代
Magnus Deus「Stargate(Remixes)」
3曲目近未来
川井憲次「Utai Ⅳ:Reawakening(Steve Aoki Remix)」

川井憲次さんのこの曲がドンピシャすぎて、絶対この曲がいい!って推しまくったんです(笑)
元は映画「GHOST IN THE SHELL」に使われている曲なんですが、1曲目のシンプルなうたいで巫女や神の領域、アメノウズメみたいな神話の世界観をイメージに持ってきて、3曲目では同じ曲がリミックスされて近未来の世界に再度進化して登場するという構成になってます。
なので脚本も3部構成で時代がガラリと変わっていくのでその変化もお楽しみいただければと思います。
音楽と共に脚本を見てもらえたら理想ですがさすがに難しいので、文字からもくもく妄想してもらえればと思います。
YouTubeで検索すれば上記の曲は出てきますので、そんな面倒くさいことやってもいいぜっていう興味あるお方はどうぞ(笑)
ただねー、私の曲編集がめちゃ神がかってるんでねー(笑)曲の繋ぎ目とか最高なんですけどお届けできず悪しからず。
皆様それぞれの妄想でぜひこの作品を補完してくお楽しみください。


華実かじつ


りん りん りん
響く音
空はだんだん暗くなる
りん りん りん
響く音
何処からともなく聞こえて来る
りん りん りん
響く音
皆音の鳴る方へ振り返る
りん りん りん
響く音
風が突然頬を撫で
ふわりと長い髪が揺れる

女たちは練り歩く
ゆっくり ゆっくり
ジリジリと
時折目が合ったなら
唇の端を少し上げて
妖艶な笑みをこちらに向ける
そうして撫でるように視線を逸らす
ゆっくり ゆっくり
ジリジリと

神の世界へいざないましょう
さあ どうぞ
こちらへおいでませ
満月がゆっくりと顔を出す
さあ 私の手をとって
今宵一夜の夢を見ましょう
月明かりで影が重なる
あやかしの匂いが薫りはじめる
ほらもうそこから動けない
視線はここから離せない
唇を少し動かして
その瞳に呪文をかける
気付けばもう籠の中
ぐるぐるぐるぐる廻ってる
吐息は重なり木霊して
耳元で五月蝿うるさくまとわりつく
笑い声が頭に響く
妖艶な微笑みが揺れている
ユラユラ ゆらゆら ユラユラと
鼻につく香のかおりが
ますます五感を支配する
刺激はどんどん強くなる
奥の奥まで痙攣させる
頭がおかしくなって来る
ゆらゆら ユラユラ ゆらゆらと
快楽の波間を往来する
今宵神秘に溺れていく
これは極楽それとも地獄
華汁は不思議な蜜の味


気だるさとともに目が覚める
外はまだ仄暗い
鐘の音が響き渡り
卯の刻の時間を告げる
乱れた寝巻きを引寄せて
露わになった腿を隠す
さあ 帰り支度をしておくれ
華の世界は大門までさ
決まり文句で別れを惜しみ
敷居を跨ぐのを見送れば
もうわっちの務めは終わり
雑魚寝でひと眠りした後は
湯屋ですべて流すのさ
まとわり付いた要らないもの
ゆっくりしてる暇はない
髪を整え白粉を塗り
昼見世の為の身支度さ
噂 陰口 男の善し悪し
女たちの口は動きっ放し
悪趣味な床入りはさらし物さ
午の刻 昼見世
ひやかしの相手にはうんざり
暇潰しの遊戯は終わり
三味線 舞踊 芸は肥し
男達には恋文の書きだめ
ひと息つく間もありゃしない
いつの間にか暮れ六つ刻
大行灯の灯りがともり
囃子の音色が聞こえたら
華の吉原の始まりさ
雑踏は次第に賑わい始め
格子の外にたかる雄たち
夜見世は勝負のしどころさ
仕草ひとつで目に留まらせる
眼差しひとつで虜にする
妖艶な笑みでひと誘いしたら
もうそいつはイチコロさ
さあ おいでませ
こちらの世界に
誘惑の敷居を早くまたいで
酒に鼓み 芸に酔う
亥の刻 閉門 子の刻 引け四ツ
夜はどんどん更けてゆく
帯を解いて 丑の刻
行灯の中で絡み合う
感じるは遊女の恥とあらば
声も吐息もすべて妖
香のかおりで五感を惑わし
華汁で脳内を刺激する
くらくら クラクラ くらくらと
身も心も虜にさせる
じわじわ ジワジワ じわじわと
ほらもう此処から抜け出せない
華実の味は麻薬のようさ
いつの時代も女は媚薬
男の本能を刺激する
狂え 狂え 堕ちるまで
狂え 狂え 心まで
華の色は唐紅からくれない
男の数だけ真紅に染まる
増えに増えて狂い咲き
見渡す限り赤い華
アカ アカ アカ アカ
アカ アカ アカ アカ
アカ アカ アカ アカ
アカ アカ アカ アカ
吐きそうなくらい燃えるアカ
幾重にも幾重にも続くアカ
咲いては散って
咲いては散って
何度も何度も
何度も何度も
華を落とせば実をつけ惑わし
種は密かに欲を犯す
色は匂へど散りぬるを
唐紅はいわんや欲す
花弁は千々に舞い上がり
人の心を魅せ続ける
女たちは生きる
鳥籠の中で
女たちは生きる
妖艶なアカを纏い続け
女たちは生きる
美醜に埋めく華の都で
女たちは生き続ける
その身に誇り高く逞しく

狂え 溺れろ この渦に


今宵も宴が始まるよ
刺激的な禁断の宴
遊戯を見るのは初めてかい
そりゃ一層ゾクゾクさせる
五感は確実に麻痺するよ
女たちの指先ひとつで
脳内はもう犯されちまう
あとは本能がむき出しさ
煌びやかな衣から覗く肌
舞うたびにはだけてそそる脚
すかした顔に派手な紅で
誘うように微笑する
きらきら ぎらぎら
ゆらゆら どくどく
頭も視界も追いつかない

さあ 極楽の世界へおいでませ
快楽の舟に揺られながら
欲の河を渡るがいい
華実に存分に喰らいつけ
一度味わえば癖になる
魅惑の味に虜になる
もう他は食べられないさ
喉の渇きはおさまらない
潤いは他所じゃ満たせない
日が暮れたら大門をまたぎな
提灯の群れとともに
女たちが待っている
奥の奥まで痺れさせよう

華は永遠に狂い咲く



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