Hee-sun(中野仁美)

ダンサー/振付師/モデル/役者もたまにする。 マルチ表現者で特技は合気道。 ストリート…

Hee-sun(中野仁美)

ダンサー/振付師/モデル/役者もたまにする。 マルチ表現者で特技は合気道。 ストリートダンスから舞台演出まで幅広く活躍しております。 ダンス作品で作った脚本や普段なんとなく書いた詩など、いろんな文字を投稿いたします。

最近の記事

【詩】ある雨の夜

夕べの雨はひっそりと強かで 雨音がひたひた耳に張り付いて離れない 外は黒い波紋が幾つも揺れて 布団の中のわたしはうずくまる 部屋の中の暗闇は息をしながら膨れて 昨日の出来事をまたこだまさせてくる 暫くただずっと雨音を聞いていた 暗闇はひっそり変わらずわたしを啄ばむ ある日のあの時をまた思い出して 小さな部屋の外 大きな窓の向こうから 朝も夜も絶え間なく響いていた波の音 あそこには世界の全てがあった 雨音はあの部屋に逆らうように強くなる 暗闇が記憶を鮮

    • 【詩】無題

      人はなぜ戦うのか 人はなぜ奪うのか 人はなぜ偽るのか 人はなぜ仮面を被るのか 人はなぜ孤独を嫌うのか 人はなぜ人を傷つけるのか 人はなぜ追い求めるのか 人はなぜ逃げないのか 愛はたくさんある 命もたくさんある 失くすものもたくさんある 手にしたいものはもっとあくさんある 私達はきっと気付いている 永遠に終われないという苦しみがあることを 本当は一人残らず 気付いている

      • 【詩】愛を知らない僕たちは

        愛を知らない僕たちは 沈む太陽を傍観してた 愛を知らない僕たちは 雑踏の隙間の歪みを探す 愛を知らない僕たちは 爪先の感覚すらもう忘れて 愛を知らない僕たちは どうしようもない残像にまた微睡む 愛を知らない僕たちは 黒い海に石を投げ 愛を知らない僕たちは 月の明かりが歪むのを見る 愛を知らない僕たちは その針先が刺さるのを待ち 愛を知らない僕たちは 泡のような惨めさを抱く 愛を知らない僕たちは 冷たい風を餌にして 愛を知らない僕たちは 薄

        • 【詩】ひとよ

          ひとつ ぽたりと落ちていく またひとつ ぽたりと落ちていく 触れるか否か 宵の狭間をいつも漂い またひとつ ぽたりと落ちていく いくつの世を いくつの言の葉を ひとつ またひとつ 冷たい地面に落ちていく このひとよは残酷ね このひとよはもう明ける たったいま 最後の椿が落ちました 花の季節はもう終わり さようなら 虚ろいゆく景色の中で このひとよは麻薬でした さようなら さようなら 椿は土に還るでしょう そして跡形も残らない

        【詩】ある雨の夜

          【脚本】「宓」番外編ー華実ー

          「宓」プロジェクト派生作品、「華実」。 この作品は女性のみでいわゆる”花魁”要素を取り入れたナンバーのために書いた脚本です。 単なる花魁風ナンバーではなく、本編に沿った設定をしっかり取り入れた厚みのある作品で、登場人物たちは本編での巫女達。 が、この作品の時代設定は古から現代まで、巫女から遊女へと渡り歩く女達の歴史を描いたかなりボリュームのあるもの。 役名があるわけではなく、”女”の世界の一面を時代を経ながら象徴的にストーリー仕立てに描く内容にしていきました。 3曲構成になっ

          【脚本】「宓」番外編ー華実ー

          【脚本】「宓」番外編ーユビキリー

          「宓」プロジェクト派生作品の一つ「ユビキリ」 こちらもダンス作品として脚本を書きました。 この作品は歩き巫女である凛と茅の過去にまつわる物語です。 ある事件をきっかけに茅を人柱として凛が祓の儀式で巫女舞をするというダンス作品。 人の心は鬼にも仏にも怪物にも修羅にもなれるもの。 この作品はそんな人間の、誰しもが種を密かに潜めている恐ろしい一面を描きました。 自分は絶対に人としての道を誤らない、悪の道には踏み入れない、人を傷つけたりしないと、確固たる強い正義があればあるほど、時と

          【脚本】「宓」番外編ーユビキリー

          【脚本】ダンスプロジェクト「宓」後編

          十一、 あなたとわたし 苦しい 痛い 辛い 泣きたい どろどろがへばり付く 窒息しそうな圧迫と 心臓を刺すような激痛 こちら側のわたしは悲鳴をあげて あちら側のわたしは攻撃をやめない 幸福なんて望んでなかった 絶望なんて望んでなかった ただ立っていたかった あなたと立っていたかった 目まぐるしく移り変わる景色の中で ただあなたと共に生きたかった こちら側のわたしは打ちひしがれて あちら側のわたしはそれでも走る あなたを殺したいわけじゃない あなたを殺したいわけじゃない だけ

          【脚本】ダンスプロジェクト「宓」後編

          【脚本】ダンスプロジェクト「宓」中編

          六、独り(源内) ずっと歩いてきた ただずっと いつからか 歩く道が重なり合っただけ これはひとつの契約に過ぎない 全部何処かに置いてきた 人を斬ったあの日から 全部何処かに置いてきた 忘れはしない あの感触 あの生温かさ 土の冷たさ 無常の重さ 深紅の雨は忘れない 愛は何処かに置いてきた 忠誠は何処かに捨て去った 契約を交わす その為に生きる その為に誰かを陥れる どちら側なんて概念はない こちら側に今いれば あちら側に誰かがいるだけ あちら側に今いれば こちら側に誰かが

          【脚本】ダンスプロジェクト「宓」中編

          【脚本】ダンスプロジェクト「宓」前編

          一、 走馬灯  はらはらと散っていく  肌を刺す痛みと共に ぽたぽたと落ちていく  生温かい記憶の淵へ それはまるで散り椿のように  一目散に落下する 一目散の中のそのひと時 わたしはあなたの夢を見た 真っ白になるその瞬間   最後に見えたのは冬の空 目まぐるしく視界が動く すべての時間が戻っていく 降りしきる雨は空にかえり 足音は一目散に遠のいていく 矢継ぎ早に変化する景色 次々に現れては消える記憶の欠片 男 女 男 女 約束 契り 争い 裏切り 鈍い痛みは幾重にも重な

          【脚本】ダンスプロジェクト「宓」前編

          【脚本】ダンスプロジェクト「宓」あらすじ

          前回記事でダンスプロジェクト「宓」についての大まかな解説をさせていただいたので(ちょっとダンス作品論的な方向に脱線してしまいましたが)、脚本の登場人物とあらすじを載せたいと思います。 解説を読んでいただいた方が作品紹介にあたって「何のこっちゃ?」がなくなると思いますのでぜひ読んでいただければと思います。 ダンス作品として書いた脚本で、各々のやりたい世界観を落とし込んでいますので当然ではありますがこの物語はフィクションであり、史実とは異なる部分がめちゃんこあります。存在しない

          【脚本】ダンスプロジェクト「宓」あらすじ

          【脚本】ダンスプロジェクト「宓」作品解説

          映像作品のダンスプロジェクトとして誕生した「宓」。 「ひつ」と読みます。 東京で活躍するダンサーの森 紫、通称オスカルちゃんから一緒にダンスの映像作品を作りたいというお誘いを受けて、脚本を書かせていただきました。 使用する曲は女王蜂の「火炎」。 入れたい要素は”殺陣を取り入れた時代もの”、”忍”、”くの一”、”敵対する二人の恋”、”遊女”、”巫女”。 出演者も決まっていて、それぞれに明確なキャラクター設定が既にありました。 敵対する忍達の恋、というのは簡単に描ける設定か

          【脚本】ダンスプロジェクト「宓」作品解説

          【詩】交差点

          僕たちは何処へ向かうのだろう 僕たちは何処へ辿り着くのだろう 僕たちは何時出逢い 僕たちは何時別れるのだろう 君に会いたい 今 君に ただどうしようもなく 君に話を聞いて欲しい 君の話を聞いてみたい ただどうしようもなく 君の世界線と交わりたい 何気なく終わっていく日常の中で 君と共有出来る時間の狭間を感じたい 生きているって思えるんだ 今日という日が愛しく思えるんだ ただ隣にいるだけで 時の流れを痛いほど感じられるんだ 永遠はないんだって それがどんなに美しくて残酷なのか

          【詩】侵食

          頬を伝うその感触 生温かい柔らかさ 立てた爪のその先から 幾重にも零れ落ちる赤 貴方の中に わたしという細胞の ほんの一欠片を埋め込んだ ゆっくりじっくりねっとりと わたしが脳内を侵食する 貴方がわたしを創造する わたしという人格が 貴方に創られるその快感 奥の奥が疼きだして 震えるほどにぞくぞくさせる 貴方の中で増殖するわたし 貴方の脳内を占領していくわたし あぁ 悶えるほどのこの快感 貴方を犯していくほどに 絶頂の波間を往来する きっ

          【詩】慕情詩

          人は孤独な生きものね 貴方はそう思うでしょう 花が咲いては散るように 誰もが幻想の中に永遠を見る 春、貴方と見たあの景色を 私は今も忘れられずにいます 移ろいゆく季節を愛でながら 肌に感じた風の冷たさを 遠くに響く誰かの笑い声を まだ咲かない鶸色の蕾を 雲は刻一刻と流れることをやめず 貴方は隣で微笑んだ 人は儚い生きものね 貴方はそう思うでしょう 去年のある日のあの夕暮れ 昨日とは違う帰路の道のり 貴方のありふれた日常の中に 私が居た足跡を 誰が見つけられるでしょう

          【詩】花束

          いつかいなくなるその時は せめてもの快晴であってほしい 花が沢山咲き乱れ 清々しい日であってほしい 美しく老いたその器に 屈託のない白を纏い 唇の上に皆一雫 落としてまた帰らぬ人と知り あなたが愛した色とりどりの 沢山の花を詰め込んで 静かに下る坂の道 肩に感じるその重さを わたしは一生忘れない 棺が見えなくなるその時は 朽ちて土に還る事を願う そしてわたしはまた此処に来よう この土を踏みしめて 目を閉じて呼吸をする 方々に散らばったあなた

          【詩】東京

          お元気ですか こちらは元気でやっています 相も変わらず万年筆を握る毎日です そちらでは初雪が降ったと聞きました 寒さに弱いあなたが風邪をひいていないか心配です 最近担当が新しく若い青年に変わりました 随分と熱心で少々熱苦しい気質ですが 彼の目の輝きはどこか昔の私を思い出させます 先日彼と酒を酌み交わしながら 互いの思想と未来について語らいました 彼はやはり熱心で 溢れんばかりの文学を愛する心を 私にずっと話して聞かせてくれました どうやら私はこういう