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膝関節 第5回 《Knee in修正》

読んで下さっている皆様、ありがとうございます。現在は、膝関節について書いていますが、次は腰部⇒肩関節と長期にわたって、掲載予定ですので、フォローして継続して読んでいただければと思います。

私自身は運動器認定理学療法士の資格を有し、普段は整形外科クリニックにて、ピラティス(有資格者)、超音波エコーなども用いて、患者さんの痛みを取り除く治療家として、日々の臨床に励んでいます。

このnoteでは、私の独りよがりの偏見にならぬよう、エビデンスをしっかりと用いて、日々の臨床で培った《知恵》を皆様にお届けできればと思っております。

では、さっそく膝関節 第5回の内容に入りたいと思います。

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第1,2回にて、運動学的異常《回旋》について述べていますので、まだ読まれていない方は、ぜひ、目を通してください。

理学療法士が、患者さんにできることは限られています。

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上記のような要因で膝蓋下脂肪体に疼痛がでているとして、理学療法士ができることは、オーバーユーズへの指導とメカニカルストレスの軽減です。

ちなみにオーバーユーズへの指導として

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しゃがみ込みなど、関節への負荷が高い動作を減らすような指導や、環境設定があげられます。

では、メカニカルストレスの軽減はどのようにすればよいのでしょうか?

根本的に、患者さんの体重を減らせればよいのでしょうが、膝痛をかかえる患者さんにとっては難しいことがほとんどです。

メカニカルストレスの根源である質量(体重)が減らないのあれば、

質量ができる限り正常な運動学に従って、関節にかかるようにする

しかないと思います。

膝関節の正常な運動学は、伸展に伴う下腿の外旋と、“屈曲に伴う下腿の内旋”です。

しかし、股関節からのKnee inは

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“屈曲に伴う下腿の外旋”であり、正常な運動学から外れた異常な運動です。

ちなみに、しゃがみ込んださいに、膝が『ポキッ』と鳴るかたがいらっしゃいますが、うまくKnee inをせずにしゃがむことができれば鳴りません。

おそらく、Knee inするときには膝蓋骨の経路が外側へ引き寄せられるために、膝蓋大腿関節面で音が鳴っていると私は思っています。

このような、日々の関節へのストレスが積み重なり、変形性関節症や関節炎なども引き起す原因になると思われます。

ちなみに膝OA研究のトップランナーである広島国際大学の木藤伸宏先生も膝OAを

「身体の合理的な多関節運動連鎖と筋活動が障害され膝関節の機能解剖と運動の合理性から逸脱し,異常な圧縮・回旋ストレスが作用した結果生じる,運動連鎖機能不全症候群の一病態」(木藤伸宏ほか :高齢変形性膝関節症患者に対する運動療法の留意点 理学療法,20(8):845-855,2003)

回旋ストレスに対してこのように述べられています。

第3回で膝蓋下脂肪体へのリリース方法も書いていますが、

根本的な膝の使い方が変わらない限り膝痛は再発しますし、関節の退行性変化のすすみも早くなり、また炎症も起きやすくなります

体重を減らせないのであれば、日常での膝の使い方を運動学的に正常に近づけるしかない。

それが、法律で定められている通り

身体に障害(痛み)のあるものに対し、主として基本的動作能力の回復を図ることを命ぜられている、理学療法士の本分であると思います。

痛みがあるのに、またメカニカルストレスが強い膝の使い方をしているのに、ただやみくもに運動をさせるなんてナンセンスであり、もしリハビリ後に膝の腫れがでたり、膝痛が強くなれば、それは担当した理学療法士に責任があると思います。

私自身が、以前は上記のような理学療法士でありました。そして上記の文章は過去の自分への戒めとして書かせていただいていますので、だれか他のセラピストに対して向けている文章ではありまでんのでご了承ください。

では、股関節からのKnee in(膝関節の屈曲に伴う下腿の外旋)は、どのようにして修正すればよいのでしょうか

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Knee in時の筋電図の研究です。このように諸先輩方が残してくださった、貴重な研究から読み取れることは

Knee inする人は、

内側広筋と大殿筋の働きが弱く、代償的に外側広筋と大腿筋膜張筋が強く働いている。

ということです。

この研究をもとに、私は普段の臨床では、下記のような方法でKnee inの修正訓練を患者さんにおこなっています。

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臨床でよく思うのは、内側広筋および殿筋群に萎縮がある人は、そもそも筋力的にKnee inを止めきれないということです。そのため萎縮があれば、まずはセッティングを自主トレーニングとして指導し、筋のボリュームがでるようにします(内側広筋であればセッティング時に、せめて軽く筋の盛り上がりが蝕知できるようになるまで)。

筋力があるのにKnee inする人は運動パターンが問題である場合が多いので、スクワット⇒片膝ついてのしゃがみ込み⇒両膝での深いしゃがみ込みでKnee inがしないように動作訓練をします。

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大事なのは日常生活でのKnee inを防ぐことなので、普段の患者さんの生活スタイルを聴取し、日常で頻繁におこなうしゃがみ込みのやり方で訓練することです。

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そして、膝痛がでているが、生活上どうしても、しゃがみ込みを頻繁にしなければならない、という方には、手で介助しながらKnee inを防ぐように指導させてもらっています。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。次回に続きます。

引用:

野村 瞬ほか,2017.:knee in,neutral.knee out 肢位の違いによる膝関節周囲筋の筋活動パターン変化 荷重量の変化に着目して.第52回日本理学療法学術大会


宮原 拓也ほか,2006.:フォワードランジにおける下肢伸展筋活動 ―neutral時とknee in時の比較―.理学療法―臨床・研究・教育 13:44–47


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