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膝関節 第8回 《鵞足炎(慢性的な縫工筋,薄筋痛)》

今週は、鵞足炎および慢性的な縫工筋・薄筋痛についてお話させていただきます。

まずは鵞足炎のメカニズムを少し

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鵞足炎の根本的な原因は“下腿の外旋”です

膝は過剰な外旋ストレスを嫌うため、縫工筋、薄筋が下腿の外旋を止めるために働きます。なぜなら外旋した状態では膝の安定性が低下するからです。


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普段の臨床では、歩行時に

①鵞足に疼痛がでる人

②縫工筋近位(鼠径部)に違和感~疼痛がでる人

③薄筋(内転筋部)に疼痛が出る人

の大きく3パターンがよくみられます。

基本的に30代~高齢の女性が多いですが、その理由としてはやはり

女性は大腿骨前捻しているかたが多いので、Knee inしやすく、大腿筋膜張筋および外側広筋を使用しやすいからだと思われます。


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まれなパターンで、私が担当した中年の男性患者さんで、そのかたは

20代の頃にヘルニアと左の坐骨神経痛を指摘され、それから何十年も意図的に左下肢荷重を避けておられました(来院時にそれらの症状はなし)。その方の“左中殿筋は明らかに萎縮”しておりMMTも3以下(対側はMMT5)でした。“そのため左の大腿筋膜張筋が代償で硬化”しており左のOber testは陽性。左の片脚立位は不安定でした。圧痛部は左薄筋の内転筋部でした。

またアライメント所見でも左下腿の明らかな外旋位を認めました。

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そのかたは、現場作業員で『斜面で踏ん張る際に左の内ももが痛む』という主訴で、クリニックを受診されました。

その後、診察では疼痛の原因がはっきりしないということでリハビリの処方がだされました。

治療では、薄筋のリリースと大腿筋膜張筋-腸脛靭帯のリリース

自主トレーニングでは、大腿筋膜張筋-腸脛靭帯のストレッチおよび支持物を用いた片脚立位訓練を指導し、週1回のリハビリに通われました。


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リハ開始から4週で斜面を踏ん張る際の内ももの疼痛は消失し、左殿筋群の萎縮は認めるも、片脚立位は安定し、中殿筋のMMTも3以上と改善しました。

この患者さんのように、疼痛部は薄筋や縫工筋であっても、根本的な原因は大腿筋膜張筋-腸脛靭帯による下腿の外旋ストレスであるということが、非常に多いです。

この患者さんを治療するにあたって、大事なポイントは

『縫工筋、薄筋は被害者(結果)であり』

『大腿筋膜張筋-腸脛靭帯が加害者(原因)である』

ということです。

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一般的な鵞足炎の患者さんでは、普段の臨床で


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上記のようなストレスをテストを実施すると鵞足部の疼痛が誘発されるケースがあります。ストレステストが陽性であれば、下腿の外旋ストレスが鵞足部痛の原因であることが確定します。

そして、まずは鵞足のリリースを実施します。


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普段の臨床では、半腱様筋腱部に圧痛がある患者さんを見たことがないので、リリースするのは縫工筋-薄筋腱間に絞っています。

著名な臨床家である赤羽根良和先生も著書にて、【半腱様筋腱は薄筋と並走しているが、圧痛所見を確認できることはほとんどなく非常に興味深い 】と書かれておられます。

そして、自主トレーニングとして、下腿の外旋ストレスに関与している筋のストレッチを指導しています。


本日も、最後まで読んでいただきありがとうございました。


引用:

赤羽根良和(著):機能解剖学的にみた膝関節疾患に対する理学療法(運動と医学の出版社の臨床家シリーズ) ,運動と医学の出版社,2018,p37より 




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