齋藤智也

国立感染症研究所感染症危機管理研究センター長。見解は所属組織を代表するものではありませ…

齋藤智也

国立感染症研究所感染症危機管理研究センター長。見解は所属組織を代表するものではありません。

マガジン

  • 新型コロナ対策と新型インフルエンザ等対策特別措置法

    新型インフルエンザ等対策特別措置法が改正され、新型コロナウイルス感染症もこの法律の対象疾患に位置づけられました。また、本日政府対策本部が設置されたことで、この法律に基づく対策が実施可能になります。この特措法の仕組みについて、主に保健関係者を想定して解説します。

最近の記事

第10回新型インフルエンザ等対策推進会議

本日は新型インフルエンザ等対策推進会議の第10回目となりました。今年1月から2ヶ月ぶりの開催となります。資料はこちら。 新型インフルエンザ等対策政府行動計画の全面改訂案について、議論が行われました。以下、本日の発言の概要となります。 【行動計画全体について】 計画を作ってもいろいろなことがどんどん忘れ去られていく。そんな中で、パンデミック対策の覚書として、法律改正や計画の改正など、各所の様々な取組を、このパンデミック行動計画という中で横断的に抜け漏れなくまとめて記述してお

    • 基調講演「パンデミックと行動計画」

      先日、内閣感染症危機管理統括庁主催のシンポジウム「新たな感染症危機にいかに備えるか」で基調講演の機会をいただきました。 「パンデミックと行動計画」のタイトルで、9月からの新型インフルエンザ等対策推進会議で行動計画改定に向けて発言させてきたことをまとめてお話しさせていただきました。 資料は以下のリンクから入手可能です。

      • 「新型インフルエンザ等対策政府行動計画の改定に向けた意見」が取りまとめられました

        9月に始まった新型インフルエンザ等対策推進会議も8回目を迎え、「中間取りまとめ」に相当する「新型インフルエンザ等対策政府行動計画の改定に向けた意見」がさる12月8日に取りまとめられ、担当大臣である新藤大臣に座長から手交されました。 「意見のポイント」という要点をまとめた資料もあるのでご参照ください。 大きく「3つの課題」「3つの目標」「改訂の4つの基本的な考え方」が押さえておくべきポイントでしょう。 会議でも、このnoteでも繰り返し申し上げてきましたが、過去の事象に学び

        • 緊急事態管理を考える:第6回新型インフルエンザ等対策推進会議

          表記件、本日第6回目が開催されました。 本日の概要本日は、 ・「新型インフルエンザ等対策政府行動計画の改定に向けた意見」(案)     (という名の「中間取りまとめ」)の骨子 ・『「対策の主要項目の方向性」(各論)の検討について』 の資料説明がありました。 本日の会議では、主に緊急事態管理についてコメントさせていただきました。 資料等はこちら↓ 緊急事態管理について緊急事態管理についてこれまでの議論であまり出てこなかった話題なので気になっており、行動計画改定の中でぜひ議論

        第10回新型インフルエンザ等対策推進会議

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        • 新型コロナ対策と新型インフルエンザ等対策特別措置法
          29本

        記事

          第5回新型インフルエンザ等対策推進会議

          早くも第5回となりました対策推進会議。今回のテーマは、 ・リスクコミュニケーション ・差別・偏見 ・感染症対策に関するDX対応 ・「政府行動計画」の見直しの基本的な考え方 です。 今回の会議での私の発言を紹介させていただきます。 リスコミ・差別・偏見に関して今回、リスコミと差別・偏見の問題に関して、議論に時間をとられたことは非常に重要でした。これらは今回のパンデミックの重要な教訓でした。(ちなみに、以前の政府行動計画に、差別・偏見という言葉は登場せず、ガイドラインに数回出

          第5回新型インフルエンザ等対策推進会議

          コロナ前の取組みから振り返ろう:第4回新型インフルエンザ等対策推進会議

          10月30日に開かれた第4回新型インフルエンザ等対策推進会議。 今回は、地方自治体や社会・経済に関する委員等のプレゼンテーション、有識者・関係団体ヒアリングで盛りだくさんの内容となりました。 今回は私からはコメント1件のみでした。 岐阜県の取り組みが紹介されましたが、自治体の中でもコロナ以前から新型インフルエンザ対策に 非常に積極的に取り組まれていた自治体の1つでした。プレゼンでも紹介がされた岐阜県の独自の感染症リアルタイムサーベイランスは、日本での有数の取組の1つでした

          コロナ前の取組みから振り返ろう:第4回新型インフルエンザ等対策推進会議

          危機の初動とは:第2回新型インフルエンザ等対策推進会議

          (記事のアップが遅くなりましたが)第2回の新型インフルエンザ等対策推進会議が2023年10月4日に開催されました。1回目は官邸の会議室でしたが、今回は内閣府別館の会議室です。初回は1時間だけでしたが、今回は2時間の会議となり、担当大臣である新藤大臣もフルにご出席されました。 新体制での第2回会議では、 ・感染症法や特措法改正についての説明 ・ワクチン等の研究開発体制についての説明 ・新型インフルエンザ等発生時等における初動対処要領についての説明 があり、その後委員による質疑

          危機の初動とは:第2回新型インフルエンザ等対策推進会議

          新たな行動計画を考える:第3回新型インフルエンザ等対策推進会議

          本日第3回目が開催されました。 本日は保健・医療関係者からのヒアリングがあり、私からも報告させていただきました。まず、 ・以前の政府行動計画・ガイドラインが今回なぜ紐解かれなかったのか? を振り返り、 ・新・政府行動計画に望む8つの視点 をお話しさせていただきました。 資料はこちら。 政府行動計画・ガイドラインはなぜ紐解かれなかったか今回、行動計画を見直すにあたって、以前の会議録や資料を振り返ってみたのですが、日本の新型インフルエンザ対策について、COVID-19以前に数

          新たな行動計画を考える:第3回新型インフルエンザ等対策推進会議

          第1回新型インフルエンザ等対策推進会議

          2023年9月1日、内閣感染症危機管理統括庁が発足しました。それとともに、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき設置される「新型インフルエンザ等対策推進会議」が改組され、新たに15人の委員が任命されました。その中の一名に任命され、9月4日に開かれた第1回会議に参加いたしました。 新体制での第1回会議では、議長の選任と今後会議で取り組む内容として、新型インフルエンザ等政府行動計画の改訂について説明を受けました。そして、各委員より一人ずつ所感を述べました。議事録がホームページ

          第1回新型インフルエンザ等対策推進会議

          感染症危機管理に関する所感2

          参議院内閣委員会、内閣法(内閣感染症危機管理統括庁の設置)と新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正法案審議で参考人として意見を述べさせていただきました。全文掲載します(一部事後編集)。 この度、内閣感染症危機管理統括庁の設置にかかる法案審議、ということですが、まさにこの感染症分野の危機管理体制の向上に向けて、我が国の重要なターニングポイントになるものと考えております。 事前準備の継続的な推進力としての期待 危機管理のフェーズを大きく3つに分けると、発災(災害や感染症が起

          感染症危機管理に関する所感2

          感染症危機管理に関する所感

          参議院厚生労働委員会、感染症改正法案審議で参考人として意見を述べさせていただきました。全文掲載します。 序文 本日は主に感染症危機管理の観点から、何点かお話をさせていただきたいと思います。 私は感染研に2021年1月に着任する前まで、おおよそコロナが発生する前までは、国立保健医療科学院という機関におり、公衆衛生部門のパンデミック対策に取り組んできました。前回の2009年の新型インフルエンザパンデミックの教訓の一つが、パンデミックでは、それぞれの地域で流行状況を分析し、対策を

          感染症危機管理に関する所感

          実践:危機管理担当者の心得(公衆衛生関係者向け) 

          久々の投稿となりました。 このたび、公衆衛生系部署で危機管理に従事される方向けの基本的な心得をまとめてみました。3部構成となっています。動画編もありますのでご活用ください。 ①危機管理概論 ②危機管理担当者の心得 ③実際の対応のポイント    まとめ 動画 動画はこちら↓↓↓ 本動画等は、令和3年度厚生労働行政推進調査事業費(厚生労働科学特別研究事業)「新型コロナウイルス感染症等の感染症サーベイランス体制の抜本的拡充に向けた人材育成と感染症疫学的手法の開発研

          実践:危機管理担当者の心得(公衆衛生関係者向け) 

          まんぼうとは何か

          まん延防止等重点措置、通称「まん防」という言葉がちらほら聞かれます。このたび改正された新型インフルエンザ等対策特別措置法(改正特措法)で導入された新しい措置です。今回は(久々で、他にも色々解説すべきことがありますが)、その概要を説明したいと思います。 まん防でできること今般、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)が改正された際、新型インフルエンザなどが発生してまだ広まっていない段階と、緊急事態宣言に至る状況の中間的な段階に行う措置として「まん延防止等重点措置(通称「ま

          まんぼうとは何か

          感染症法による入院措置の対象が限定的になります

          「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令の一部を改正する政令」の改正が公布されました。10日後の10月24日から施行されます。これにより、新型コロナウイルス感染症患者に対しての感染症法による入院措置の対象が、無症状や軽症の場合は主に高齢者や基礎疾患のある方、そして中等度、重症の方に限定されることになります。とは言っても、医療上の観点、まん延防止上の観点から一定の裁量が残されており、これらの要素が当てはまらない方に全く措置が執れないというものではなく、また、入

          感染症法による入院措置の対象が限定的になります

          【号外】医事法学会シンポジウムに参加しました。

          本日医事法学会特別WEBシンポジウムに参加させていただき、「日本のパンデミック対策と新型コロナウイルス感染症」のタイトルでお話しさせていただきました。 新型コロナ発生以前に日本のパンデミック対策はどのような形で土台が作られていて、それが新型コロナでどのように生かされ、また、どのように活かせなかったのか、その理由を考察しています。「過去の経験の復習型」ではなく、前向きにありうるシナリオのランドスケープ分析から、ギャップを埋めていくプリペアドネスが必要です。そして常に「拡張性」

          【号外】医事法学会シンポジウムに参加しました。

          指定感染症とは何か

          以前にも以下の記事で記載しておりますが、あらためて追記・改変して再掲します。よく「新型コロナは二類感染症相当の位置付け」とされますが、現状では、「新型インフルエンザ等感染症」とほぼ同じレベルの措置が規定されていること、そして、入院措置の運用状況についてこれまでの流れを整理してみました。 指定感染症とは新型コロナウイルス感染症は、感染症法で「指定感染症」に指定されています。指定感染症とは、四類以下の感染症法上の感染症、または感染症に位置付けられていない感染症について、一類〜三

          指定感染症とは何か