第10回新型インフルエンザ等対策推進会議
本日は新型インフルエンザ等対策推進会議の第10回目となりました。今年1月から2ヶ月ぶりの開催となります。資料はこちら。
新型インフルエンザ等対策政府行動計画の全面改訂案について、議論が行われました。以下、本日の発言の概要となります。
【行動計画全体について】
計画を作ってもいろいろなことがどんどん忘れ去られていく。そんな中で、パンデミック対策の覚書として、法律改正や計画の改正など、各所の様々な取組を、このパンデミック行動計画という中で横断的に抜け漏れなくまとめて記述しておくことが非常に重要。
準備期、初動期、対応期という書き分けをしているが、改めてそのコンセプトについて確認をしたい。「対応期」というところで、 まず次のパンデミックに想定される対応、その時にあるべき姿をしっかり書く、 そして取れるべき選択肢をメニュー表として列挙していく。 それから逆算をして平時の事前準備からやっておかなければいけないこと、 準備しておくべきことを「準備期」にもれなく記載していく。 そしてパンデミックを起こす可能性があるとみられる感染症が発生した際には、 正式に特措法とか行動計画がキックオフしていなくても、 すぐに初動しなければいけない時がある。それを躊躇なくスタートできるように、リソースを十分に投入できるように初動期という形で明確に記載することが重要
【各論】
人材育成は必要だが、 やはり疫学の人材育成が感染症対策の一丁目一番地。 疫学の中でも古典的な感染症疫学もありますが、 実地疫学、さらに数理疫学といった手法も今回のパンデミックではどんどん活用されて、 それが政策にも活かされてきており、必要不可欠なスキルになりつつある。こういった人材をしっかり育てて、 次のパンデミックではその知見を活用していく姿勢が必要。
感染症の流行動態をまず理解するのが大事だが、 さらにそこに加えて社会の反応、あるいは社会経済への影響といった多面的な状況の把握、 リスク評価が必要とされている。より定量的に理解する方法、そして多面的な観点からの評価、 そして意思決定、合意形成手法について、 例えばモデリング・シミュレーションといった技法も活用しながら、 次世代のより定量的で検討要素が明確な合意形成手法を検討していただきたい。
人材育成という言葉は度々出てくるが、育成して終わりではない。国でも地方自治体でも育成した人材が活躍する場をどんどん作っていただく。 これを育成と両輪でやっていただきたい。
コミュニケーションのこれからあるべき姿については、もっと議論が必要。 今回の最大の反省点の一つでもあるが、 パンデミック対策ではコミュニケーションに十分なリソース、すなわち、人、金、時間を使っていなければならない。 そしてこれを戦略的に行わなければならない。 「情報の公表、提供、共有」という言葉があるが、コミュニケーションの基本的な姿勢として、 その先に何があるのかというのがしっかり見えてこないといけない。 「双方向的なリスクコミュニケーション」という言葉で何回か強調されてはいるが、政府のパンデミック対策の姿勢、あるいは基本哲学が、 まだ全体的に一方向性になっていないかと感じている。 例えば、偽情報、誤情報に対して、正しい情報を粘り強く発信して理解を求めるというが、事はそう簡単ではない。 確かに情報が発信されていないことで生まれる偽情報、誤情報というのもあるが、 そのような情報が生まれる、発信される背景というのも理解して取り組まなければ、真のコミュニケーションというのは成り立っていかない。 単に情報発信をしっかりしていくだけでは終われないという部分がある。こういった活動について、リスクコミュニケーション&コミュニケーションエンゲージメントという言葉がよく使われているように、コミュニケーションの先にあるものは、さまざまなコミュニティをしっかり巻き込んでいくこと。一緒にやろう、一緒にパンデミックを乗り越えていこうという事であるはず。そういった基本姿勢が計画に見えてくることが非常に重要であろう。
計画なので、想定されたものがあって、それに対してきちんと対処していくというストーリーでまず作られるものだが、危機というのは必ず想定外のことが起きるし、あるいは限界を超えたときことが起きるということをどこかに考えておく必要。 限界を超えたときにどうするかは今後議論を深めていくポイントであろう。