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ブル・マスケライト《仮面の血筋》100ページ小説No.13

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前回までのあらすじ…

たちばなからのメールにより音信不通となった状況で学校では携帯を没収され組織の関与が入っていた。そこで安和ナミは面談に呼ばれる。ここからのピンチをどう乗り切るのか⁇


「もういいわ!こうなったら私が逆に問い詰めてやる!」
私は腹をくくり強気で行く事にした。
「安和、次お前だ。こい!」
教室を出ると、竹田が行く先へついて行くと近くの家庭科室だった。
「中へ入れ!」
私は一度立ち止まると何も言わずに扉を開けた。シンクの銀色が広い部屋をさらに冷たく演出している。その中で脚を組み椅子に座る1人の先生。それは福良先生だった。
「安和さん、どうぞ座って」
いつもと変わらない優しい口調。
言われるがまま先生の前に座るとにこやかな表情で話し出した。
「びっくりしたでしょ?安心して。二人とも無事だから」
その言葉に全身の力が抜けた。そんな私に携帯をそっと渡してくれた。
「まずは携帯、返しとくね。気づいてると思うけど今、たちばな君を追ってこの学校まで手が回ってるの。そしてこれを指示してるのもここの学校『校長の根本』よ、私と水口先生がずっと裏で探ってきた相手よ。遂に動き出したの。でも安心して、あなた達を守る様に水口先生から言われてるから。これから全生徒をこうやって呼んで情報を聞き出すのよ。だから私がここのクラスの担当になって守るからね」
「先生ー、怖かった。本当に怖かった。良かった〜」
先生が優しく慰めてくれた。
「定期的にお話ししましょう。そして何かあったら私を見つけて話してね。番号の交換はやめときましょう私たちも。あとそれと水口先生から安和さんだけにって」
そう言うと一枚の紙を渡された。
「時間がないから後で読んでおいてね」
「分かりました」
「それと最近、袴田君とは仲良くないの?」
え?急に聞いてきた言葉に少し驚いた。
「いや一緒にいるのをみないからー何かあったのかなって?」
「もともと嫌いですから、あんな奴は」
「あらそうなの?理由は分からないけどとにかくケンカしてるのね。でも大事な仲間なんだから協力し合って助け合うなよ?いーい?さぁ、そんなにお時間も残されてないから、そろそろこれで」
「ありがとうございました」

とにかく安心した。私は直ぐに教室へ戻りこっそりと机の中で手紙を開いて読んだ。
[転校生 住所○○区 名前 南野セナ 父 整形外科医]
それだけ?これでどうしろと言うの?それにこれが何で私にだけに渡す手紙なの?水口先生の意図がさっぱり分からなかった。
「しかも先生の仮面を外した女の人とこの転校生の特徴が似てるって言ってたし組織と関わってたら危険過ぎでしょ?それなのになんで…」
理由も分からないままとりあえずポケットに隠す。
 次の休み時間、栗原さんと話をした。
「遂に動き出したね。栗ちゃんも突然のことすぎて驚いたでしょ?」
「私、もう面談って聞いてから震えちゃって。もちろん福良先生だったよね?それで本当に安心したー」
「私もー。でもここまでやられると私達も動かない方が身のためね。一度、携帯のやり取りも控えましょう。あ、そういえば…」
私は手紙を取り出そうとしたが水口先生から私だけって渡されてるのに気づきためらった。
「どうかした?」
「いや、なんでも…。栗ちゃん福良先生、何か言ってた?」
「えーっと、ホッとしすぎて内容忘れちゃったけどとにかく励ましてくれました」
「私も。助かったよね本当。たちばな達と水口先生も大丈夫って言ってくれたし。今どこに居るんだろう?家で待機かな?」
「う、うん。安全だといいね」

 ここから私達は2日に1回面談と携帯没収が繰り返されるとは思いもよらなかった。でもその度に福良先生と話せれて安心した。そしてそれは一週間も続きその間たちばなと水口先生は来なかった。もちろん私たちとも福良先生とも連絡は取れてない。そしてもう一人、気になるのは転校生だった。同じ様に学校へ来なかった様だ…。

 金曜日の帰り、この日は朝から大雨で帰るこの時が一番ピークだった。私は母に電話して迎えを呼んだ。仕事でまだ30分は来れないと言われ渋々下駄箱で待つ事にした。
「あれ?栗ちゃんの靴が無い、まだ帰ってないのかな?」
一緒に車で帰ろうと私は栗原さんを探した…教室にはいない。美術室に通りかかると話してる声がした…。
「そうなのねー。私も水口先生には本当助けてもらってるからあなたと一緒でずっと片想いなの。だから栗原さんは自分のことの様に応援させて。それに今、安和さんは仮面に見えてるしチャンスなんじゃないかな?」
「でも…ナミさんとたちばな君は幼なじみですし…」
「もっと自信を持って良いよ。かわいいんだから。それであれからたちばな君とは連絡取ってるの?」
「いや…取れて無いです」
「一度連絡してみたら?心配でしょ?」
「心配ですけど…」
「じゃあ何で連絡しないの?理由でもあるの?」
「…」
「もう、いいわ。恋は動かないとずっと恋のままよ。ところで安和さんとは仲良くやってるの?」
「…はい」
「ライバルでも仲良くやってね。」

 最悪の所を聞いてしまった…。栗原さん、相談してたんだね…。私はライバルなんかじゃ無いわ…。やっぱたちばなのこと好きなのね、応援してあげなきゃ…。
 そこへ遠くから誰かが歩いて来た…竹田先生だ!急いでその場を立ち去り階段を降りた。
「危なかったー」
すると今度は誰かが階段を降りて来る。直ぐに下駄箱の影に隠れるとまた竹田だった。後を追いかけてみると竹田はそのまま校長室へ入って行った。私は校長室のとびの前で少し聞き耳を立た。
「校長!なぜこんなにも同じことをさせるのですか?何の為にこんなことを?」
「竹田君、これはあなた達の為でもあると言ったら分かりますか?信頼関係ですよ私と先生との」
「信頼関係?そんなこととこれがなんの関係が…」
「あなたはただ、いつも通り生徒達を怒鳴りつけてくれればいいんです。それを続けてもらえばあなたはココにいられます。それに他の人より待遇をよくしてるつもりですが、まだ足りませんか」
「お金は頂いてます、しかし…」
「しかし?」
「…」
「今私が最も信頼を置いてるのは福良先生です。だからあのクラスを担当させてるのですよ、その意味が分かりませんか?」
「…はい…」
え、福良先生?????

「安和さん、ここで何してるの?」
「!!!!!!!」
振り向くと目の前に福良先生がいた。心臓が口から飛び出そうな私の顔を目を見開いて覗き込んでいる。こんな先生の表情を見た事がない。私の反応を読み取ろうと見透かしてるかの様な顔に肩の震えが止まらなくなったのが分かった。直ぐに必死でこの場を何とか誤魔化そうと考えるが時間が足りなすぎる…
「えっあ、いや…」
「ナミさーん!お待たせしましたー」
横を見ると栗原さんが駆け寄って来ていた。
「どうかしましたか?さあ帰りましょう!」
助かった…そう思った次の瞬間、先生に右肩を掴まれた!
「安和さん…雨ですので夜道…気をつけて下さいね」
表情を一切崩さない先生の顔はまるで何かに取り憑かれている様だった…
一瞬で全身が凍りついた私は何も言えなかった。先生の手が離れると同時に振り返りその場を後にした…

 「……ぶわぁっ、はぁっはぁ…」
下駄箱まで来ると私は四つん這いになり顔を青ざめながら止めていた息をいっきに吐き出した。身体中の細胞から危険信号が発令されたかの様だった。冷や汗が右頬を通過し床に落ちる。その床はまるで万華鏡のように私の思考を吸い込んでるかの様だった。
 しばらくして掴まれた肩を左手で押さえながらなんとか立ち上がると同じ様に青ざめた栗原さんが横にいた。彼女も膝がガクガクしている。
「ありがとう、助かった」
「これって…そういうことよね…」
「ええ、間違いない…」
二人は目を合わせると驚きながらも確信して同時に言った…

『『福良先生が…内通者だ!』』

 言った二人ともその言葉が反響して聞こえ、頭では理解できない強い悲しみと裏切られたショックが恐怖の次元をことごとく超えて一つも言葉にならない。瞬きもせず目を合わせたままの二人はしばらく強い雨の音に身を委ねていた。誰もいない下駄箱と天井の切れかけた電球が雷に撃たれた後の二人の心境を更に削り取る様に演出した。もう吐きそうな程ぼろぼろにされた私の心は見事に抜け殻となった。
 ふと気がつくとポケットの携帯が光続け震えてた。母からだった…。ようやく我に帰り、私はそのまま電話を切り栗原さんを連れて恐ろしい学校を出た。

「遅くなってごめんよー。栗原さん?初めまして。いつもうちのナミがお世話になってます。家まで送るから場所だけ案内してね?それにしても凄い雨よねー」

私はただ二人のやり取りを助手席で黙って聞いていた。もうなにもする気が起きない。そして大人を信用できない昔の自分がまた主導権を握り始めた。
「たちばな…このことね、あの時言ってくれてたのは。もう本当に4人しか信用出来ないじゃない…あなたはもしかして分かってたの?いやそんなはずはないか。でもここからどうしろって言うのよ…」
内通者が分かった所でたちばなに連絡もとることも禁止。ここからの指示も聞けない私はもうなす術が無かった。しかも福良先生には完全に気づかれている状況。次の策を打ってでもきっとたちばなを見つけ出すために動いて来る。となると…きっと一緒に学校に来ていない転校生が鍵。でも私にこの手紙を渡したのは福良先生よ。なら会いに行けと誘導されてる様なもの。どうする…。どうする…。ふと私は窓の外を見た、その場所はまたあの「黒い車」が止まっていた田んぼの場所をちょうど通過する所だった。それに気づき私は確信した。
「栗ちゃん、今日泊まらせてくれない?」
「へ?今日ですか?もちろん良いですけど…」
「急に何言ってるの?無理なお願いするもんじゃないでしょ?」
「母は黙ってて!このまま私は一緒に降りるから!」
「ちょっと本気なの?」
「当たり前よ!」
「ごめんなさいねー。こんな子に育てて。栗原さん、断っていいのよ」
「いえ本当にうちは大丈夫ですから。あ、ここが家です」
車は玄関の前で停まった。
「エッ!栗原さんってあの栗原先生の??うわー凄い立派なお家。こんなお家に…」
どうやら有名な様だ。そんな母の様子に構わず私は傘を刺し車を降りた。
「あ、お母さんありがとうございました」
出て来る前に傘を刺して待っていた私は栗ちゃんを受け入れながら言った。
「ゴメン、無理言って。理由は後で話すから」

 その後、私は一人で栗ちゃんの部屋にいた。栗ちゃんはお父さんの部屋にいってる。私は高級なお風呂と食事を頂いた。びしょ濡れの制服はいつの間にかクリーニングされ部屋に掛かっている。しかもシルクの着慣れないパジャマも用意され別の一室まで案内されたが流石に断り同じ部屋で寝させてもらうことにした。完璧におもてなしをしてもらっていた。ホテルより贅沢だ。
「お待たせー!連絡取れたよ!明日の10時に家に来てって」
「本当にー?凄い栗ちゃんのお父さん!!」
「明日、父が送ってくれるそう。知り合いを通じて連絡取れたって言ってた。何かねースポーツ選手の有名な整形外科医らしいよ、転校生のお父さん」
「こちらもまた凄い人だね…。気が引けてきた。でもどうやってお父さんに言ってくれたの?」
「エヘヘ、好きな人がいるって言っちゃった。さすがにちょっとやり過ぎたかな?」
「ええええええ???大丈夫なの?」
「驚いてた。でも静恵のためならって連絡してくれて」
たちばな、ゴメン…愛しの栗ちゃんに嘘つかせて。これもお前のためだ…そう心で謝っといた。
「でもお陰で転校生と接触できる。無理させてごめんね」
「いいよ全然。で、会ってからどうするの?」
「もう直接仮面の話をする。その後は正直言ってノープランだけど。でもどうせ組織と関わりがあったとしても仮面がみえない私たちには被害はないし。それにたちばなが直接会うのも当然リスクだからここは私たちだけで戦いましょう!」
「うん、分かった。私も本気を出す」
そういうと机の引き出しから何かを取り出しメガネを外した。
「ジャーン!ナミさんの言う通りコンタクト、買ったよ。ピンクのカラコン」
「可愛いー!ヨシ、これで栗ちゃんの色仕掛けで明日はイチコロね」
「そーいうのじゃないからやめて下さいー」
「そーいうつもりで買ったんでしょー?何が違うの?」
「もーいじめないで下さいよー」


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