速水健朗
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速水健朗 なぜ批評は嫌われるのか 「一億総評論家」の先に生じた事態とは(『中央公論』2022年4月号。2023年度立命館高校受験に仕様)
口コミと批評家と権力欲 以下に紹介するのは、現代の"批評家"をめぐる寓話である。 アメリカの小さな町の話だ。この町のレストランには、自分がグルメ評論家であると店主に伝え、特別な席やサービスを要求する客たちが増えつつあった。アメリカにも「食べログ」のような、飲食店の口コミサイトが存在する。彼ら(自称グルメ評論家たち)は、その口コミサイトのレビュアーたちである。ネットで低い評価をつけられることを恐れる飲食店側は、彼らの要求に応じざるをえない。自称グルメ評論家たちは次第に増長
¥500
小沢健二から考える、プラダとトヨタの90年代以降の顛末とグローバリゼーション(初出『AERA』ムック2010年)
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¥200すばる読書日記その3(『ランチのアッコちゃん』『お望みなのはコーヒーですか』『都市は人類最高の発明品である』)初出『すばる』2013
某月某日 柚木麻子『ランチのアッコちゃん』を読む。 主人公は東京の麹町のビルにある出版社で働く女性派遣社員。彼女は、上司「アッコ女史」のために一週間、弁当をつくる約束をする。そして、代わりにアッコ女史の「一週間ランチのコース」をプレゼントされる。アッコ女史は、月曜日から金曜日まで曜日毎に決まった場所で昼ご飯を食べるのだ。 月曜日は、古い雑居ビルの中のカレー専門店。ここは、デザイン事務所のオーナーが趣味でこっそりやっているお店である。火曜日には、ジョギングウェアとジョギン
¥100-
「ミレニアム(ドラゴン・タトゥーの女)」とポリティカルコレクトネスとセックス(初出:津田マガ「本を読まない津田大介に成り代わってブックレビュー」2012)
津田メルマガ読者の皆さん、2週間ぶりのごぶさたです。今回は、映画が公開中の『ドラゴンタトゥーの女』の原作『ミレニアム』シリーズの第1作です。昨年末(注:2011年のことです)、3部作すべてが文庫化されたばかりですね。 なぜこの作品、舞台がスウェーデン、著者がスウェーデン人です。スウェーデンと言えば、情報共有を政策として訴える海賊党が議席を持ち、また情報共有を信仰の対象とする宗教を国家が認定(“コピミズム伝道教会” http://ja.wikipedia.org/wiki/%
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