すばる読書日記その3(『ランチのアッコちゃん』『お望みなのはコーヒーですか』『都市は人類最高の発明品である』)初出『すばる』2013

某月某日 柚木麻子『ランチのアッコちゃん』を読む。

 主人公は東京の麹町のビルにある出版社で働く女性派遣社員。彼女は、上司「アッコ女史」のために一週間、弁当をつくる約束をする。そして、代わりにアッコ女史の「一週間ランチのコース」をプレゼントされる。アッコ女史は、月曜日から金曜日まで曜日毎に決まった場所で昼ご飯を食べるのだ。
 月曜日は、古い雑居ビルの中のカレー専門店。ここは、デザイン事務所のオーナーが趣味でこっそりやっているお店である。火曜日には、ジョギングウェアとジョギングシューズを渡される。この日行くのは、有楽町に出る移動屋台のスムージー屋。皇居半周、約2.5キロのジョギング込みのランチである。

 これらの「おつかい」じみた毎日のランチには「陰謀」が仕込まれている。恋人にフラれて落ち込んでいた主人公は、美味しいランチによって精神的に回復するだけでなく、新たな人に出会い、また自分の得意なことを仕事に活かす主体性をも身につけることになる。

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