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噴火の観察

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火山の噴火は予知できませんが、始まった噴火を観察して、その解釈をすみやかに情報共有することはできます。
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近年の火山噴火で降り積もった火山灰の分布図

過去の火山噴火で地表に降り積もった火山灰は、少なくとも厚さ1ミリないと地層中に保存されるのはむずかしい。保存条件がもっともよいのは泥炭地だ。いっぽう、目の前で起こる降灰は、0.1g/m2の微弱でもひとに気づかれる。1g/m2なら、自動車の上などきれいに掃除された平面上に火山灰が積もっているのが観察できる。 1000g/m2が1ミリだから、1g/m2は1ミクロンである。目の前で起こる噴火は、最薄火山灰層の1000分の1にすぎない1ミクロンの積灰でも計測できるというわけだ。だか

御嶽山の噴火警戒レベルは2だった。

気象庁がオウンゴールした。 2022年7月に出た松本地裁判決は、2014年9月10日に52回、11日に85回の地震を数えて、14日に低周波地震を観測しても、御嶽山の噴火警戒レベルを気象庁が1に留めたのは正当だったとした。しかし気象庁は、2022年4月に改定した御嶽山噴火警戒レベル表のなかで、2014年9月の地震増と低周波地震だけでレベル2の条件を満たしたと書いていたことが判明した。 松本地裁判決は、地震増と低周波地震だけではレベル2の条件を満たさなかったとし、25日に山体

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三宅島1983年10月噴火が残した堆積物

桜島から「大きな噴石」が2.5キロ飛んだ証拠はない。

気象庁は、7月24日20時05分に桜島の南岳山頂火口が爆発して「大きな噴石」を2.5キロ飛散したと発表しました。しかし、牛根監視カメラ写真にそれを黄破線で囲んだ火山活動解説資料を23時35分に発表しましたが、囲まれた範囲内に輝点を認めることはできません。 牛根監視カメラは桜島の東12キロ、大隅半島の海岸に設置されています。ここから南岳山頂火口までの地形断面図を、地理院地図を利用してつくりました。 2.5キロ地点は鍋山の陰になってしまって見えません。図はクリックすると拡大し

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気象衛星ひまわり8号で見た福徳岡ノ場2021年8月噴火と軽石ラフト

日本のテフラマップ

テフラは、火山噴火によって風下に降り積もった軽石や火山灰のことだ。過去の大噴火を記録している。その分布を、50センチ(太線)または5センチ(細線)の等厚線で表現して、年代ごとに6枚のグーグルマイマップに分けて、示した。塗りつぶしは、同時に発生した火砕流(明色)または土石なだれ(暗色)の到達範囲だ。 0-2万年前2万年前-7万5000年前7万5000年前-13万年前13万年前-30万年前30万年前-200万年前 注:ここに掲げたテフラマップは、2008年に作成して公表したも

フンガトンガの2022年1月15日噴火

噴火パラメータ ・1700開始(トンガ時間) ・1830最高潮、噴煙の平均半径240キロ。 ・噴煙柱の高さは35キロ。マグマ噴出は1時間未満。 ・M5.0、噴出したマグマは10億トン。 開始時刻は、 04時00分 UTC 13時00分 日本時間(GMT+9)ひまわり 17時00分 トンガ時間(GMT+13) 噴煙は、開始から90分で最大半径300キロ平均半径240キロまで広がった。その拡大する様子は日本の気象衛星ひまわりでつぶさにとらえられた(扉写真)。それは、1時間に満

福徳岡ノ場の噴火、2021年8月

2021年8月13日0557、水深100メートルほどの海底から噴火が始まって、海面上に高さ16キロの噴煙柱が立った。噴煙柱は16キロのまましばらく維持されたが、15時間後の2100ころから息をつくようになり、48時間後におおむね停止した。100平方キロにおよぶ海面に軽石が浮き、53日後に北大東島に漂着した。風に吹かれて西に移動した火山灰雲は、2000キロ離れたフィリピン・ルソン島北部上空に届いた。噴出量は3億トンと見積もる。(2022年2月10日加筆:軽石5000万トン、火砕

アイスランドの噴火、2021年3月19日

このあとのツイートは、下にまとめています。

ツイッターで見た霧島山新燃岳2011年1月26日噴火

新燃岳2011年1月噴火ツイートはすでにいくつかまとめていますが、noteだとツイートを貼り付けたあとに写真を挿入したりコメントを書き足すのが簡単にできるので、新しくつくってみました。臨場感を味わってください。ツイッターを使って、めったにない大きな噴火の把握と広報がうまくできた初めての事例でした。 その日、新燃岳は7時30分頃から噴火していました。風下に少量の火山灰が降っていました。14時58分、突然それが暗転しました。異変に最初に気付いたのは、大浪池カメラを見ていたてるみ

気象衛星ひまわり8号で見た西之島2020年6月-8月噴火

西之島は、2020年6月26日にスコリア丘が南に大きく崩壊したあと、爆発的噴火を2か月続けた。VAAC東京は西之島の噴煙の高さを毎日4回定期的に報告した。下の図に、毎日の最大高さを示す。 FL100は3000メートル。7月上旬にFL200すなわち6000メートルまで達した。この2か月間に噴出したスコリアは1億トンだった。 気象衛星ひまわり8号がとらえた7月31日15時の噴煙は南に向かっていた。 VAAC東京は、これをFL190すなわち5700メートルと報告した。 7月

気象庁噴火予知の精度と感度

気象庁は、2007年12月1日から火山に噴火警戒レベルを設定して噴火警報の業務を始めた。2020年8月までの12年余に気象庁が出した噴火警報を詳しく読むと、噴火予知を55回したと解釈できる。そのうち7回の直後に該当する噴火が発生した。噴火予知の精度は13%だった。いっぽうこの間に噴火警報がないまま顕著な噴火が24回発生した。噴火予知の感度は23%だった。 (以下の表3つは、噴火警戒レベルの上げ下げと噴火があるたびに更新している。) 予知成功の代表例  2015年5月6日箱

浅間山噴火を観察するためのリンク集

監視カメラ・鬼押カメラ、気象庁 ・黒斑山カメラ、長野県佐久建設事務所 ・大笹カメラ、まえちゃんねっと ・堂平カメラ、埼玉県ときがわ町、浅間山は西向きカメラの視野外右にある(扉写真)。灰雲が南に流れたときに利用できる。 気象レーダー・気象庁高解像度降水ナウキャスト ・国土交通省XRAIN ・SCW ・デジタル台風(アーカイブが見やすい) 上空の風・熊谷ウインドプロファイラ 人工衛星・ひまわり8号 ・VAAC Tokyo ・NASA 二酸化硫黄SO2ガス・Earth En

積灰量から噴出量を見積もる早見表

積灰量m(g/m2)が囲む面積をA(km2)とすると、噴出量M(トン)は、 M = 12mA                    (1) で得られる。 火山灰は上空の風に流されて等値線は楕円に似たかたちになる。風が強ければ細く伸び、風が弱ければ風上側にも広がって円に近づく。平均的には、短軸の長さは長軸(分布軸)の1/3になるから、火山からの距離をd(km)とすると、 A = πdd/12                    (2) になる。(2)を(1)に代入す