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教育実習に行っただけの学生が体育教師論を語った結果

5月,6月といったこの時期は,教育実習シーズン.僕の後輩たちの中にも,母校に帰っていったり,大学近隣の中学校にいったりしている人がいます。僕自身も2年前のこの時期,大学4年生の時に,大学と自宅のすぐ近くの中学校(自転車通勤5分)で教育実習生として,体育の授業をしていました!

今回はそのたった3週間の教育実習やその前後に考えていたことを踏まえて,「体育教師論」を書いていきます。

もし教育実習中であったり,これから実習が始まるという後輩たち「教育実習 体育教師」とググった時に参考にしてもらえることが目標です。


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体育の先生になる人の特徴を考える

とりあえず話を進める前に,「保健体育」の基礎知識を高めるために,現行の学習指導要領を見てみましょう。第2章第7節にある,中学校の保健体育科の目標がこちらになっております。

第1 目標
 心と体を一体としてとらえ,運動や健康・安全についての理解と運動の合理的な実践を通して,生涯にわたって運動に親しむ資質や能力を育てるとともに健康の保持増進のための実践力の育成と体力の向上を図り,明るく豊かな生活を営む態度を育てる。

久々に学習指導要領の冊子や,文部科学省のHPを開いてこのあたりの情報を探ってみましたが,今回の話に使えそうなものは残念ながら見つけ出せなかったので,学習指導要領さんの出番は以上になります。ありがとうございました。


ちょっと考えてみましょう。
体育教師になる方ってどんな人が多いのだろうか。

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・スポーツ,運動が好き
・学生時代の体育の授業を楽しいと思えた。
・大学生の頃も,専門のスポーツで競技を続けていた。
・自分がお世話になった先生のように,子どもたちを指導したいと思う。
(・部活動の指導がしたい!!全国制覇!!)

あくまで勝手なイメージですが,でもなんとなく体育の先生っぽくないですか?特に最初の3つは,体育教師の大多数が通る道ではないかと。


元々運動やスポーツがある程度好きで,ある程度できて,だからこそ体育の授業ってすごい楽しい。休み時間でもないのに,狭い教室じゃなくて,体育館やグランドで身体を動かせる体育って科目はなんて素晴らしいのだろう!って思っていた。

毎日のように放課後は運動部で,自分の目標に向かって努力し,大事な試合や大会で成功も失敗も経験してきて,そのおかげで自分は成長できた!そして大学に進学してからも当然のように体育会に所属して,学生アスリートとしての最後の4年間を競技にぶつけるという青春を送ってきた。満足のいく結果が残せた人もそうではなかった人も,大学卒業を機に競技人生にはひと区切りをつけて,これからは指導者として子供たちに,自分が学んできたスポーツの素晴らしさを伝えたい。そんな風に思っていた。


こういった学生時代や青春を,体育教師あるいはそれを目指す人のマジョリティ(多数派)が経験してきているのではないかと思うのです。

キラキラして素晴らしいと思います。僕もスポーツを専門に学び,15年の選手人生の後に指導者を目指しているので,非常に共感できます。

ただ,これだけは言わせてください。

「あなた,世の中的に見たら間違いなくマイノリティですから!!!」

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今回の想定する読者層は,体育の先生あるいはそれを目指している人や,スポーツや運動が好きで好きで仕方がない人なので,念のためにもう一度言わせてください。テストに出します。


「いまの日本の社会で,運動大好きスポーツ人間はめっちゃ少数派!!!」


ここまで言ってもピンとこない人は結構いるはずなんですよね。
どうしてこんなことに気が付けない人が多いのか。なぜピンと来ないのか。

「だって,周りにそんな人(スポーツ大好き人間)しかいないんだもん」


自分が本気で競技に取り組んでいると,同じようなアスリート,ひどいと同じ種目に関わる人だけで,人間関係が閉じてしまうという人がいるのです。

特に,体育教師を目指す人は体育を専門とする学科に属することが多いので,なおさらアスリート気質の人達ばかりとつるむことが多くなり,そしてそれは「体育ムラの価値観」を醸成していくのです。そうなれば,自分たちが少数派であることにはなかなか気づけなくなります。


なぜなら,競技スポーツの世界に身を置くことは特別なことではなく,「普通」のことだから。

自分が競技人生を終えても,今後もスポーツや運動に愛着をもって過ごしていくことになるのだろうと思う。周りの人を見ていてもそれが「普通」だし。

他のみんなもそうでしょ?だって「普通」だし。



体育の先生が体育の授業をするときに気を付けるべきこと


そんな社会的にみたら実は少数派の体育の先生が気を付けるべきことがあります。おっと,ぼくは教育実習をやっただけでなのでもう少し謙虚になりましょう。

これから,もしかしたら体育の先生が気を付けた方がいいんじゃないかなあと個人的に思うことを書いていきますね。


まず,体育の授業ってこうなっていることが多いと思うんですよ。

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手前が先生です。TeacherのTです。そして生徒が30名,美しく整列しています。この中で,青色を付けているのがいわゆる「運動大好き人間」および現時点でのその候補生です。それ以外は,スポーツや運動に対して特別な感情を持っていないか,あるいは「体育が嫌い」な生徒です。

先生はどの層を主なターゲットとするべきなのか…。

この図を見ると多くの人が答えてくれると思いますが,「青色の少数派」よりも「白色の多数派」だと僕は思っています。

第1 目標
 心と体を一体としてとらえ,運動や健康・安全についての理解と運動の合理的な実践を通して,生涯にわたって運動に親しむ資質や能力を育てるとともに健康の保持増進のための実践力の育成と体力の向上を図り,明るく豊かな生活を営む態度を育てる。

この目標が,生徒みんなに適用されるのであれば,焦点を合わせていくのは「体育が好きでない」「体育が嫌い」な生徒です。すでに「体育が好き」な生徒の目標達成はかなり近いです。


「そんなことわかっとるわい!!」

と言われそうですが,例えば「運動が大好きな」体育の先生は

・競争するのはみんな楽しいと思ってしまう。
・勝ち負けがあるものはみんな燃える。
・ゲーム(試合)をやる時間は楽しくてたまらない。
・連帯責任を課す(グループで何かを成功するまでやる)と結束力が高まる

などと安易に考える方が多い気がします。

運動やスポーツが大好きで,そして体育の先生になれるくらいの人って大体の運動ができてしまう人なので,学生時代から体育の授業ではこういう場面で成功してきた経験が多い人なんだと思います。

だから,
体育授業での勝ち負けや競争ではほとんど負けるし,ゲームになったら得意な人に任せてしまって,コートの隅っこにたたずむだけになったりボール触れずに行ったり来たりするだけになるし,そもそも失敗したときに運動できる人に何か言われるの怖いし,グループワークなんか自分が失敗してみんなに迷惑が掛かったらと思うとおそろしい・・・!

って思う生徒さんの気持ちってなかなか理解できない。

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でもそんな子供たちが体育の授業の中で,何かが上達する喜びやスポーツ・運動の楽しさを知って,「悪くないじゃん」って思う。大人になって友達に「遊びに行こうぜ」って言われたときに,何の苦手意識もなくスポーツに参加できるようになる。

ここに体育の成功がある気がするんです。

僕は教育実習の時,ここにすごく注意して授業を行っていました。
運動が苦手そうな子どもたちを絶対に置いてけぼりにしない。

上手くやれない生徒を受容し,励まし,楽しませて,積極的に取り組める背景づくりをする。授業の流れや運動課題も,グループ分けも,特別ルールも,授業の最初の余談もそのために組み入れる。

他の教科でもそうですよね,数学だって英語だって。苦手な子供たちを置いていって授業が盛り上がるわけがない。

ことさら体育においては,将来の日本のスポーツ文化を育てていく上での大きな役目があるはずで,それなのにその体育授業で「運動嫌い」を増やしていくのは元も子もない。

授業の構図は基本的に,「専門家 vs 素人(たくさん) 」です。(vsが正しいかどうかはおいといて)

その「素人」から,一人でも多くの「スポーツ?まあまあ好きだよ。週末はよく家族や友達とテニスとかするしてるんだよねー。」みたいな大人が増えることを,強く意識して目指していく必要がある。そんな風に思うのです。


最後に。

体育の先生に限らず,学生アスリートとして真剣に競技をやってきたり,スポーツに携わり続けてきた人の中には,そういう自分をマイノリティだと気づけない人がたくさんいるように感じています。

多分,僕らはマイノリティです。だからこその価値もたくさん持っています。そこを自覚できるかどうかが,教職だろうが,一般企業への就職だろうが,起業だろうが,キャリアをつくっていくうえで重要になってくると思います。


最後に,体育・スポーツに限った話ではないよというエピソードを紹介しておきます!最後まで読んで頂いてありがとうございました!!

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教育実習中のある日,僕は同じく教育実習生で社会科担当のA君の授業を見学しました。歴史の単元で,A君は冒頭に前回の授業のおさらいをしようとしました。

A君「じゃあ,最初に前回の授業でやったところのクイズをします!」
1問目,○○が△△で××したのは,西暦何年?みたいな問題だった気がしてます。
A君は,「分かる人いますかー?」と挙手を求めました。

手,一向に上がらず…。

A君「ちょっと難しかったかなー・・・汗」
「答えは□□□□年でした!」
一部の生徒が「あーー…」といった反応を見せるも全体的にはレスポンス薄め。A君はテンパりめ。

そして全3問ともそんな感じで,授業の雰囲気が上がらぬまま,A君はテンパったまま,授業は進行。50分が長く感じたこと,このうえなし。

授業後にA君の指導教員,K先生がアドバイスをしていました。

K先生「あのねえ,たしかに最初の振り返り,すごく簡単な問題でよかったんだけど,あれじゃ,手は上がらないよねー。例えば,3択にしてみる,とかね。そうすると回答率上がると思うよ。」

A君「一昨日やったばかりだったので…答えてくれるかなと思ったんです
が…」

K先生「みんな,A君が思ってるほど歴史とか好きじゃないんだよね。
「教員はみんなその分野の専門家だけど,生徒は違うから」

そこに気づけるかどうかという話。

2018年5月20日

・・・


1年半越しに,ちょっと繋がる話を書きました。

良かったら明日読んで。


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