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J3入門ガイド作ってみた⑦<愛媛・いわき>

今回は第13節、第14節で対戦する、愛媛FC、いわきFCについて

<愛媛FC>

■直近5年の成績と監督遍歴

17年:間瀬秀一 J2・15位
18年:間瀬秀一(1月-5月)、川井健太(5月-12月)J2・18位
19年:川井健太 J2・19位
20年:川井健太 J2・21位
21年:和泉茂徳(1月-4月)、實好礼忠(4月-12月)J2・20位<降格>

22年監督:石丸清隆
06年から16シーズン続いたJ2生活。1桁順位は06年(13チーム中9位)、15年(22チーム中5位)の2回のみ。15年は木山監督のもとでクラブ初のPOまで進む快挙を達成したが、それ以外は下位に沈むシーズンがほとんどで「粘り強くJ2で生き残ってきた」という歴史があった

が、今年はイレギュラーなレギュレーションもあり、山雅と共にクラブ初のJ3降格に。逆境を跳ね返すことができなかったのも事実だが、例年であれば残留できていた20位、改めて4チーム降格の重みが感じられる。

前置きが長くなったのでざっと振り返る。ここ数年は若くして戦術家としての評価が高い川井監督(現・鳥栖監督)のもと、丁寧にビルドアップから相手を剥がしていく、ポゼッションに重きを置いたスタイルを続けてきた。
支配率だけで見ても<11位→6位→8位>と「下位チームの中でも丁寧にボールを繋いでいくスタイル」を身に着けてきたが、3年目となる20年には順位は21位に。就任後、最低順位を記録したこともあり、JFAナショナルトレセンの中国四国担当コーチだった和泉氏に監督を交代した。

21年は「攻撃的な守備をして、ボールを奪ってシンプルにゴールを目指す」スタイルを掲げてきたが、開幕から6戦未勝利と苦しみ、最下位となったことで4月4日には早々に和泉監督が辞意を表明。コーチだった實好監督が後任として就任し、一時は16位まで浮上するなど巻き返しは見せるも終盤は失速。最終的に降格に。先ほど挙げた支配率を見ると18位、川井体制からのスタイル変更・監督変更などで残留を図るも及ばなかった。

そして、今季新たに監督に就任したのは山雅サポの間ではもはやお馴染みの石丸監督。愛媛FCは監督としても選手としても古巣であり、監督キャリアをスタートさせたチーム。新監督ではあるが、慣れ親しんだ監督・クラブで双方リスタートをすることとなった。完全に余談ではあるが山雅とは0勝2分7敗で対戦成績は最悪、監督人生で最も敗戦を喫してるクラブにもなっている。

■去年のスタメン

・第1節

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A東京V ●0-3

・第16節

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A群馬 △1-1

・第42節

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H山口 △1-1

勝ち点35 7勝 14分 21敗 得点38 失点67 ー29

和泉体制は442、實好体制の初期は4123を使ってきたが、北九州を相手に5レーンを埋めて対抗するために5バックをぶつけてみたところ、この狙いがバッチリハマり、そのまま5バック(3バック)システムはその後も継続。夏に高木利のような運動量豊富なWBの選手を加えるなどしつつ、結局シーズンが終わるまで3421や352と3バックを続けた。

シーズンを通してみるとDFの茂木がほぼ全試合(41試合出場40先発)した他、近藤・川村らセンターラインには年間を通して出場時間できていた選手が多かった。また、FW藤本はチーム得点王(10)・アシスト王(5)と大活躍。これは総得点38のおよそ4割にも上る(しかも35試合25先発と意外と欠場も多かったのでその凄さがより分かる )。去年と比べた時には茂木・川村・藤本のセンターラインが欠けたのをうまく補い切れるか?は1つのポイントになりそう。

■現スカッド・オフの雑感

【GK】
岡本(→鳥栖)・秋本(→引退)というJ2でも実力者と知られる2人が同時にチームを離れることに。加藤(G大阪)も完全移籍に移行。更新は辻のみに。
代わりに黒川(愛媛U-18)、板橋(鳥栖からのレンタル)、そしてキャプテンにも就任したベテラン・徳重(長崎)の3人が加入。元々厚かったポジションということもあって若干パワーダウン感はあるが、3人の若手を引っ張っていく立場の徳重がフル稼働できるか。

【DF】
序盤からなかなか定まっていなかったCB中央、WBに夏補強で栗山と高木利をレンタルしたが、この2人を完全移籍で残せたのはDFの中では一番大きかったかもしれない。

J2での実績が豊富な茂木(→大宮)、大谷(→町田)ら残せなかった選手もいたものの、森下(→町田)、大城(→浦和)といったJ3経験のある若手有望株、高校・大学と評価が高かった鈴木大(→徳島からのレンタル)、そしてかの有名な森脇(→京都)も補強。穴を埋める可能性を感じさせるとともに、石丸体制では川井体制のように後ろからのビルドアップをがっつりやっていくようなラインナップとなっている。

【MF】
レンタル3年目で8G3Aと本格ブレイクした川村(→広島へレンタルバック)、5年在籍してきたサイドアタッカーの小暮(→秋田)、大ベテランの山瀬(→山口)、練習参加から3年ぶりのJ1復帰を勝ち取った森谷(→鳥栖)と複数の選手達が個人残留or昇格を果たした。

だが、大宮からのレンタルだった近藤を完全移籍で残せたのは朗報。そこに佐々木(仙台)、茂木(琉球)、矢田(千葉)と怪我や不調で昨年出番を掴み切れなかった技術的に優れた選手たちを補強。攻撃のバリエーションは広がった。そして、最注目はルーキーながら10番をつける小原(東海学園大)。特指として終盤にはチームの中心として試合に絡み、磐田戦ではJ初ゴールも記録。大卒ルーキーが活躍しがちなJ3の中でもクラブからの期待値は最も高いかもしれない。ボランチ・2列目どちらも可能だが主力としてフル稼働がノルマになる。

【FW】
先ほども書いた大エース・藤本、5年キャプテンを務めていた西田(→引退)、さらに代わる代わるに出番があったレンタル組の石井(→鳥栖にレンタルバック)、唐山(→G大阪にレンタルバック後水戸)、榎本(→名古屋にレンタルバック)。吉田眞紀人以外はFWは総入れ替えになる

代わりのFWの軸候補筆頭は松田力(→C大阪)。J1では多くの出番は稼げなかったが、近年、福岡・甲府といったJ2有力チームで主力として活躍。突出した数字は残せていないが、空中戦も強く、献身性もあるので計算はしやすいストライカーとなっている。また、進(→群馬)も19年YS横浜時代、J3で15G4Aと爆発した1人。裏のスペースへの抜け出しを得意としているのでJ3に戻ってきたことでその特徴はより生きやすいのではないか。また大宮一筋の若武者ストライカー・大澤もレンタル移籍。どちらかというと他は献身的なFWが多くなっているので、2トップならチャンスは広がりそう。

■予想スタメン

序列がはっきりしていて基本メンバーは読みやすいチームが多いJ3だが、愛媛の場合、まだまだ固まっていないポジションが多い。そのため、スタメン組以外も想定が必要になってくる。ちなみにシステムは開幕以降は3節までは4-2-3-1か4-1-2-3。4~7節で3バックを行い、2勝2分けと好成績を残したが、そこからコロナでチームが活動停止。それ以降は4-4-2を続けている。石丸監督自身も3バックを採用時に「本来なら攻撃的な選手を4人くらい置きたい」と話していることから今節も4バックを予想する

GKは新加入の徳重が全試合フル出場。愛媛自体被シュート数は16位と多いが非ゴール数だと8位で収まっているのは徳重のシュートセーブ・安定感が際立っているのが大きいだろう。

CBは1枚はほぼ全ての試合に出場している栗山。山形時代から守備の中心に置いており、信頼は厚い。2CBの場合は元山雅の森下か徳島からレンタル中の鈴木大誠のどちらか。ここ最近は森下の方が序列は高いが、ボランチに回された場合は鈴木がCBに入る。3CBの場合は大阪体育大からのルーキー・小川か元浦和で鳥取、YS横浜と修行を積んできた大城が左に入るが中断以降はともに出番があまりないのが気になる点。

SBは右には中断以降は忽那が起用されている。元々は中盤やSHの選手だったこともあり、攻撃センスに長けたSBだが、守備ではまだ不慣れさも拭えていない。左は高木(利)、内田、前野とJ2でも経験豊富なメンバーを揃えていたが、開幕スタメンに選ばれたのはまさかのルーキー小川。開幕連敗でその後は高木がポジションを奪ったが、前節は高木がベンチ外で内田が起用された。古巣対決は見てみたいので怪我などでないことを願うばかり。

ボランチは横谷を軸に様々な選手・組み合わせが試されている。開幕直後は横谷・矢田という組み立てやパス能力に長けた2人を並べ、石丸監督らしく中盤の創造性を発揮するサッカーからスタートしたが、J3のオープンで上下動の激しいサッカーにやや苦戦したか傾向は少し変わりつつある。特に中~上位陣相手には田中や森下、さらに前節は本職ではない森脇が起用されるなど守備で身体を張れる、潰せるようなタイプの選手がボランチで起用されるようになっている。山雅も一応こちら側だと思うが……。

SHはここ4試合は右に11番・近藤、左に10番・小原と"攻撃を牽引することを期待される2名"の組み合わせが続いている。特にルーキーでいきなり10番を任された小原は5月だけで3得点を挙げて現在チーム得点王。昨年も特指ながら磐田の守備陣相手にドリブルで切り裂いていき、ゴールを奪うなど個の力や得点感覚は驚異的。聖和学園→東海学園大学という経歴にふさわしいボールタッチのスキルの高さを見せている。

FWはJ1・J2でのプレー経験も豊富な松田力が軸だが、ここまで0G0A。献身的でストライカーとしての仕事以外もこなせる選手だが、それ故にチームの不調に引っ張られている感はある。その影響もあってか、前節は久々のベンチスタート。その代わりに開幕時に出遅れていた進と愛媛では初先発となった19歳の大澤が2トップを組んだ。進は裏抜けやDFとの駆け引きが巧みなタイプで、大澤は得点感覚に優れた万能ストライカー。どちらもザ・ストライカーというタイプである一方、ターゲットになるタイプではないのがネックか。元山雅の吉田が全くメンバー入りしてこないのでこの3択になるはず。

そして、対愛媛で注意しなければいけないのはベンチパワー。前節だと先ほど書いた松田力に加えて、茂木や佐々木匠、横谷ら実績のある選手を途中投入。ベンチパワーはJ3の中でも弱くない長野相手に終盤は圧倒してドローに持ち込んでいる。また、愛媛U-18所属の行友が3~6節で途中投入され、3試合全18分で合計2得点をあげる活躍をしている。今節出場する可能性は低いが、今後面白い存在になってきそう。

■試合前分析・展望

現在、4勝4敗4分けの12位。開幕から3連敗スタートと出遅れたが、その後は9戦で1敗(4分け)。3月、5月と2度もコロナトラブルに見舞われており、チーム作りに苦労していた模様だが、ここ最近を見ると復調まではいかないにしろ、まずまず安定した戦いを見せている。

内訳をみると12得点14失点。序盤は得点面で苦しみ、2種の行友がチーム得点王(2得点)の時期が続いていたが、8節以降から小原が3得点、森下が2得点と固め取り。FWがあまり得点を取れていないが、点を取れる流れは見えつつある。対して、気になるのは失点数。開幕3連敗時に7失点した後はシステムやメンバーを弄り、4試合で1失点と安定していたが、ここ5試合では毎試合失点しており、5試合で6失点と悪い流れが続いている。

時間帯別得点も特徴的で76分以降の得点は12得点中5得点、失点は14失点中7失点と終盤に試合が動きやすい。これは層が厚いので終盤にブーストをかけられる攻撃的な選手はいるが、J3のオープン展開に巻き込まれると守備面で強度が保てないというのはあるかもしれない。

次に具体的な内容面に移る。
昨年は常に残留争いを意識した中での戦いということもあって、それまで川井監督が築き上げてきた"ポゼッションをベースにして流動的に形を変えていくようなサッカー"から"守備をベースに素早い攻撃でチャンスを仕留めるカウンター"色が強くなっていたが、今年は『攻撃的で魅力的なサッカー』を期待し、愛媛での指揮経験もある石丸監督を招聘。

愛媛の前は山形でビルドアップを仕込み、サイドの崩しから再現性の高い攻撃を行っていたが、愛媛でも開幕戦でいきなり佐々木をトップ下、ボランチには矢田・横谷を並べ、右のSBには森脇を起用。さらに激戦区の左SBで小川を起用するなどいきなり石丸監督色の強めの人選に

中盤でボールを握りつつ、SBも内側に侵入させて偽SBのような形を作るなど、京都・山形で行っていたようにテクニカルな選手を並べ、サイドの関係性とショートパスで攻撃を組み立てようという姿勢は見えたが、富山・岐阜・いわきとJ3でもフィジカル能力に優れ、強かさのあるチームに3連敗。特にいわき戦ではシュート数2本ー17本で圧倒され、

相手の前に行く力やセカンドボールの強さは想定していたつもりだけど、思ったよりも対応できていなかった。どんどん弱気になり、それが攻撃のところで足が止まる要因にもなったのかなと思う。(一部省略)相手の徹底したところ、J3での戦い方というのは自分たちも見習わなければいけないし、ゴールへ向かっていくだけでなく、ボールを奪いにいくことも原則としてチームでやっていかないといけない。

いわき戦後監督コメントより

とコメント。そこから現実的な方向に方針転換し、そこから球際や攻守の強度を重視するような人選や戦い方が色濃く見えるようになっていく。

鳥取戦1点目の森下のフィードからシンプルなロングボールで裏を取り、小原がその裏を突いたゴールのようにシンプルな形も増えており、サイド攻略もSHは中に侵入、その外をSBがオーバーラップしていくという役割分担が明確に。良くも悪くも目指していた石丸監督色が弱まってオーソドックスな形になっているような印象。

ただ元々のスカッド的にもテクニカルでアイディアを持った選手が多いので細かいショートパスと細かなテクニックはJ3の中でもレベルは高い。しっかりと身体を寄せ、軽率に飛び込んで裏のスペースを使われないように注意したい。

また、全局面を通して言えるのは、元々J1・J2で戦ってきた選手が多く、平均年齢も高い影響か、アップダウンの激しいJ3の中では比較的緩急をつけての戦いをしてくるのでその点は"J3っぽくないチーム"でもある。長野戦のようにあえてテンションの高いトランジション合戦を仕掛けていく試合にするか、はたまた藤枝戦のように相手をいなすような試合にするのかは1つの注目点。

プレス時は石丸監督のチームらしくプレスもアグレッシブに行い、積極的に奪いに行く時間もあり、特に2トップは数的不利時やGKへのバックパスに対しても果敢にプレスをかけにいくが、それも時間は限定的。前からプレスをかけた時にハマらないとみると、後ろは早めに割り切って守備ブロックを作ることが多い。

自陣でもハードに奪いに来るというよりは穴を空けないようにしつつ、要所を締めるような守備をしている。ただこれまではトランジションやフィジカルコンタクトを得意とするチームには特に後手に回るシーンが多く、GKの徳重、CBの栗山の両ベテランが決定的な場面を何とか締めている部分は大きい。

サイドも比較的ルーズで、ボックス内、ゴール前に人数を割くような守備をしてくるので、積極的にシュートを打っていくことで、そのこぼれ球を押し込めたり、今治戦の2点目、長野戦の1点目のように味方へのディフレクションやブラインドによるゴールが起きたりということがあるかもしれない。

また、一番の弱点となるのはブラインドサイド(主にクロスとは逆のSBの裏)のマーク。チームとして捨てているのか、フリーになっているにも関わらず、けっこうな距離を離して放置しているようなシーンが多いので、外山や下川、前あたりがそのスペースに遅れて入ってくることで大チャンスが生まれるのではないかと思っている。

ただし、こういう守備をしている分、全体が後ろに重くなりすぎず、カウンターには人数を割くことができる。リスク管理をきちんと行うのはもちろんだが、クロスやシュートをちゃんとやり切るというのは大切にしていきたい。

最後に、古巣対戦が多いのも愛媛戦での注目点。
山雅側は下川と表原、愛媛側は高木(利)と森下、吉田(眞)、そして石丸監督が古巣対戦となる。さらに石丸監督に関しては過去9戦で7敗2分けとJ全チームの中で山雅が最も戦績が悪い。反町監督以降の20年、21年も1分け2敗なので相当に悪い。そろそろお祓いに行くんじゃないかというレベルである。あまり言うと痛い目に遭いそうだがこの相性も偶然ではないと考えているので、これまで通り、石丸サッカーと山雅のスタイルの噛み合わなさもうまく利用し、締めるところは締めつつ、攻撃はシンプルに高さ・強さを生かし、難しい四国アウェイの対戦で勝ち点3をしっかりと持ち帰りたい。

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<いわきFC>

■直近5年の成績と監督遍歴

17年: 田村雄三 福島県一部・1位
18年: 田村雄三 東北2部・1位
19年: 田村雄三 東北1部・1位
20年: 田村雄三 JFL・7位
21年: 田村雄三 JFL・優勝

22年監督:村主博正
「フィジカル革命」「筋トレ軍団」「アンダーアーマー」などなど早くもJリーグファンに対してのブランドを確立しているいわきFC
「"日本のフィジカルスタンダードを変える"という理念のもと、フィジカルトレーニングに力を入れているクラブ」というふわっとしたイメージをすでに持っているJサポも多いのではないか。

そんないわきの現体制がスタートしたのは15年12月に「株式会社いわきスポーツクラブ」を設立した後、16年の福島県2部(実質8部)のシーズンから。そこから6年。ついにJ3の舞台まで辿り着いたが、このタイミングでまさかの我が軍もここにかち合うことになった。

内部人事を見てみると16年には監督に元オランダ代表のピーター・ハウストラ氏が就任。強化・スカウト部門のスタッフに、湘南のスタッフだった田村雄三氏を迎えて"革命"が開始。20年JFLで7位だった時以外は全てのカテゴリーで優勝を続けている。

だが、そんなリーグ戦での快進撃以上に大きなインパクトを与えたのが17年、まだ県1部リーグだった時の天皇杯。県サッカー選手権大会では決勝でJ3の福島ユナイテッドFCを下して天皇杯初出場を決めると、本戦の2回戦でJ1の札幌に延長戦で5-2で勝利。プロクラブを相手にして走り勝ったことでこれまで得られなかった目標までのものさしを得る事ができた。

17年から監督を続けてきた田村監督は「フィジカルも戦術のひとつ」という持論を掲げており、「フィジカル」をプレーの補完としてではなく、そこをベースに置くというチームづくりをトライ&エラーで続けてきたが、今年はそこにスプリントコーチやアスレティックトレーナーなどそれぞれのフィジカルの専門家を加え、体制を強化。そこをさらに尖らせてきている。

NEWS | 秋本真吾氏がスプリントコーチに就任​ | いわきFC OfficialSite (iwakifc.com)
NEWS | 比佐仁氏がストレングスアドバイザーに就任​ | いわきFC OfficialSite (iwakifc.com)

しかし、田村監督自身は公認S級コーチを取得できないということで退任。新たにチームを束ねる監督としてなんと山雅のスタッフだった村主コーチが就任した。トップチームの監督は初めてだが、町田時代にはヘッドコーチとして相馬監督を支え、トランジションやデュエルに重きを置いたサッカーをしていたので目指す方向性を考えても比較的やりやすいのではないかと思う。なんだかんだ5年の長期政権後になるのでうまく受け継げるかどうか。

■去年のスタメン

・第1節

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H三重 ○2-1

・第19節

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A三重 ○2-1

・第34節

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H FC大阪 3-0

勝ち点71 21勝 8分 3敗 得点65 失点28 得失点差37

2021年JFL順位表

いわきFC・HondaFC・ヴェルスパ大分のほぼ3強だった去年のJFL。試合数がわずか4試合少ないだけのJ3で、得失点差1位の熊本が得失点差「19」のみだったことからも上位と下位のチーム力の差が激しかったことが分かる(例えば去年の川崎は38試合で得失点差53なので1位のHondaFCはそれに近い)。2位Hondaより得点を取っておらず、3位ヴェルスパほど失点も少なくないが、裏を返すとそれだけバランスが良く、勝負強く戦えていたと言っていい

システムは去年3バックだったが、今年は4バック(442・4123)を中心にしながら3バック(3421)を用いる試合もあり、相手によって巧みに使い分けていたよう。

JFLベストイレブンにはMVPにも選ばれた攻撃的ボランチの山下、千葉ユース出身で元世代別代表のチーム得点王・古川、両SB/WBの嵯峨・日高の4人が選ばれているが、戦術的に特徴が出ているのもボランチとSB

ボランチは1枚(主に山下)はかなり高めのポジションを取り、もう一枚(主に宮本)はカバーで後ろに残るというほぼ縦関係を取っていること。初期配置が442でも実際は4312に近い形を取り、攻撃時はFW+"高い位置を取るボランチ1枚"が前線に、両SBも高い位置を取って積極的に攻撃に参加し、残るボランチ+CBで守るという試合が(見ている限りでは)多かった。ちなみに終盤に多かった4123でも両SB上げ、アンカー+CB残しは同様。

こうして中央・サイドでそれぞれ密集を作ることで近くの味方にショートパスを繋ぎ、シンプルに縦にドリブルやスルーパスで突破→クロスorシュートという攻撃が多かった。前に人数をかけた後は守備も即時奪回を狙いに行く。フィジカルを生かすと言ってるだけあって人への寄せの意識が高いのが長所でも短所でもある。

SBが高い位置を取る前提な分、嵯峨・日高の両翼は超強力。高橋壱・廣末世代の青森山田出身で仙台大から加入したルーキー嵯峨は新人王も獲得したが、本来の攻撃的ポジションからSBにコンバートした狙いが大ハマりし、8Gと得点面でも高い貢献を見せている。

元々、「J1にいても不思議ではない」という評価を受けている選手も多いだけに個で勝負しても力負けしない選手もいるが、シーズンを通してチームとしてどれだけの結果が残せるか?は未知数。トピックスの豊富な今年のJ3の中でも注目度が高いチームである。

■現スカッド・オフの雑感

【GK】
セカンドGKとして出番もあった白岡(→十勝)、射庭(→東邦チタニウム)の2人が移籍し、期限付き移籍中だった似鳥が引退。その代わりに元山雅で長野でも出番があった田中謙、富山からの田中勘、流通経済大からのルーキー鹿野が加入した。

カテゴリーのステップアップが続くいわきで唯一県リーグ時代から在籍している正GK坂田は、J3経験も豊富な田中謙、高校時代から薄井(→松本)のライバルとして切磋琢磨してきた鹿野らからポジションを守れるか

【DF】
CBではこのポジションでは最多出場の黒澤、徳島からのレンタルだった奥田、全国優勝を果たした東海大の主将・ルーキーの米澤、終盤出番を増やした攻撃的CB小田島が出番が多かった。このうち奥田は徳島にレンタルバックの後に宮崎にレンタル移籍、黒澤も青森に移籍となった。

しかし、このポジションには山雅にレンタルしていた星(横浜FC)と家泉(流通経済大学)の大型CB2人が加入。星のポテンシャルは言うまでもないとは思うが、家泉も今年J1でインパクトを残している去年の流経大ルーキー組の中でもレギュラー格の1人で、川崎ですでにプロ初ゴールを記録している佐々木旭の相方となる。2人とも「J1にいても不思議でないパワフルさ」を持っているのでいわきのサッカーの"尖り"をさらに加速させるだろう。

SBはJFLトップ級の嵯峨、日高がともに残っている。しかし、サブの経験値も浅く、J3を相手にしての守備強度もまだ未知なので層の厚さという意味では若干不安か。

【MF】
準主力以上の流出は金大生くらい。選手権で別格の活躍を見せ、いわきの加入も話題になったバスケス・バイロンは県一部時代に活躍を見せた以外は大きな爪痕は残せなかったが、J2東京Vへステップアップ移籍となった。

MFの加入はルーキーの永井(流通経済大学)、伊藤(国士舘大学)の2人。それぞれ独特のリズム感、スピードを持ったドリブラーだが、どちらも線はかなり細い。アクセントとして機能しながらいわきのトレーニングでどのように育っていくか、今後が楽しみ。

【FW】
出場時間は多くなかったが、安東輝(松本)や金子(磐田)、小池(横浜FM)のJFAアカデミー時代の同期で長年いわきの10番を背負ってきた平岡が北海道リーグのくりやまに移籍。しかし、FWも他ポジションと同様、個人昇格候補の主力は全て残した。

11番のルーキー・有田(国士舘大)にかかる期待も大きいが、一番の目玉は栃木にレンタルになっていた10番の有馬(鹿島)。前線、サイドでも起用可能で足元の技術とボールを引き出す能力に長けたアタッカーで、背番号からも大きな期待が感じられる。昨年の中心メンバーの鈴木、古川はJ3でも十分活躍出来そうな実力を持っているだけに同等以上の力を発揮出来れば1年目での快進撃は見えてくる。

■開幕前展望(予定)

■予想スタメン(予定)

■試合前情報(予定)


※掲載順・目次

①カマタマーレ讃岐・YSCC横浜

②鹿児島ユナイテッド・SC相模原

③テゲバジャーロ宮崎・FC岐阜

④アスルクラロ沼津・ギラヴァンツ北九州

⑤AC長野パルセイロ・FC今治

⑥ガイナーレ鳥取・藤枝MYFC

⑦愛媛FC・いわきFC
⑧ヴァンラーレ八戸・カターレ富山
⑨福島ユナイテッドFC・松本山雅

(データはfootballlabより)

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