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J3入門ガイド作ってみた②<鹿児島・相模原>

今回は第3節、第4節で対戦する鹿児島ユナイテッドFC、SC相模原について。

<鹿児島ユナイテッド>

■直近5年の成績と監督遍歴

17年:三浦泰年 J3・4位
18年:三浦泰年 J3・2位<昇格>
19年:金鍾成  J2・21位<降格>
20年:金鍾成  J3・4位
21年:アーサー・パパス(1月-5月)、大島康明<暫定>(5月-7月)、上野展裕(7月-12月) J3・7位

22年監督:大嶽 直人

J2昇格時にはJ3優勝を争った琉球の金鍾成を監督に。同期昇格からの引き抜きで多くの賛否が巻き起こった。ルカオや韓勇太らを主力に戦ったこの年は勝ち点40を稼ぎ、20位栃木と勝ち点で並ぶも1年でJ2に降格。翌年もJ2に返り咲きならず金鍾成監督は退任。ポステコグルー監督の元右腕・パパス監督を招聘するも5月に家庭の事情により電撃退任。

その後は暫定監督を挟んで三重の監督だった上野監督にバトンタッチし、パス主体のサッカーは継続されたがオフには上野監督も退任が発表された。今シーズンはなでしこりーぐの伊賀フットボールくノ一三重から大獄監督が就任。監督会見で鹿児島について「J3トップクラスのポゼッションを誇り、攻撃力がある」としながらも「アグレッシブでダイレクトにボールを奪うチーム」を目指すとコメントしているので、いかにこれまでのスタイルを引き継ぎつつ、奪取を上乗せできるかがポイントになりそう。

■去年のスタメン

・第1節

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H鳥取 ●2-3

・第16節(中断明け)

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A讃岐 ○2ー1

・第30節

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A富山 △1-1

勝ち点40  11勝 7分け 10敗 得点34 失点35 得失点-1 7位

不測の事態が起こり、かなりバタついたシーズンとなったがシステム的には4-2-3-1で固定。中原米澤田辺らJ2J3を渡り歩いている、リーグ経験の豊富なメンバーが主軸となり、年間を通してチームを支えた。

またスタッツを見ると平均ボール支配率56.8%、パス数平均563本(平均444本)はリーグ最多。得点も"セットプレー"よりも"ショートパスから"のゴールが多いなど2度の監督交代があったチームとは思えないような数値で、一貫したサッカーを続けている。だが、支配率の高かった10試合は1勝7敗2分け(逆に低い10試合は6勝2敗2分け)と勝ちパターンも負けパターンも明確なシーズンだった

■現スカッド・オフの雑感

【GK】
去年出場の大西、白坂は残留。本命は大西になるが、監督のスタイル次第では足元に長けた白坂にもチャンスはある。

【DF】
右SBフォゲッチ(→未定)、CBイヨハ 理 ヘンリー(→広島)、藤原(→北九州)と後半戦の主力組が揃ってチームを離れたのは不安要素。CBには新たに岡本(新潟)、井原(宮崎)も加えたが、特に広瀬(長野)にかかる期待は大きいのではないか。右SBは讃岐でブレイクした薩川が埋めたい。

【MF】
一番の痛手はCBも兼任だった田辺(→熊本)の引き抜き。近年は主力として目立っていた酒本も引退とセンターラインの入れ替わりが気がかりな点。それでもチーム得点王の米澤の残留に加え、ロメロフランク(新潟)、木村(水戸)、星(相模原)とJ2から準主力級の選手を複数獲得できたのでオフの収支的にはMFはプラスといえそう。関西大学リーグ優勝・ベスト11の渡邉(関西学院大)、薄井(→松本)とともに大学日本代表にも入ったこともある圓道(桐蔭横浜大)もJ3のブレイクルーキー候補。

【FW】
薗田(→宮崎)、 萱沼(→八戸)、グスタヴォ(→未定)、山谷(→横浜FM)が移籍。米澤はFW登録だが左サイドが主戦場だったので試合に絡んでいた最前線の選手で残ったのは徳山大学からのルーキーだった山本のみ
対して今オフの加入は有田(甲府)とルーキーの福田(東海大学)の2人となっている。東海学生リーグ得点王の福田にも期待はかかるがドリブルや0トップ的な役割が得意な選手のようなので、やはり経験豊富な有田にかかる期待は大きい。

■予想スタメン

いわき(H)、八戸(H)を相手に1勝1分けと悪くないスタートを切った。ここ2戦では右SB以外はメンバーを変えていないのでこの試合でも継続と予想。システムは去年に引き続き、4-2-3-1。

GKはここ2年正守護神として活躍した大西が不在。HONDA FCから横浜FCに引き抜かれ、現在レンタル中の白坂がゴールを守る。ビルドアップに絶対の自信を持つ一方、身長は180㎝と小柄。開幕戦の平均身長が約180cmだった山雅とは身長の上ではミスマッチになる。

DFは左SB・讃岐からの薩川、CB・水戸からの岡本(保有は新潟)、長野からの広瀬は2戦連続スタメン。右SBは1戦目は相模原からの星、2戦目は関西学院大学からのルーキーの渡邉と2試合とも最終ラインは新加入選手のみで構成されることに。CB間でのパスは異常に多く、高いポゼッション率の要因となっている。

ボランチは鹿児島で6年目になる中原、水戸からの木村と経験豊富なコンビに。その前のトップ下には新潟からのロメロフランク。開幕戦ではそれほど存在感を示せなかったが、体幹の強さを生かして初ゴールを記録するなど脅威に。

SHは右には五領、左には米澤が昨年に引き続いてポジションを掴む。五領は左利き、米澤は右利きになるのでともに逆足配置。なのでカットインからのシュートも当然得意としており、積極的に中に侵入してくるのが特徴的。PA付近では中央合体のような形になりやすい。

CFは愛媛や京都でも活躍した甲府からの有田。最前線で仕事のできる仕事人タイプの選手なのでCB間のギャップには特に注意が必要。

■試合展望

上記のように昨年はポゼッション、パス数がリーグ最多だった。
新監督の大嶽監督は縦に早い攻撃を掲げていたので、もう少し違うスタイルに振り切るかと思われたが後ろでの繋ぎは依然として多く、ポゼッション平均も(まだ2試合ではあるが)59%と1位を記録。山雅側のスタメンにもよるが……相手がボールを握る時間が多くなるのはあらかじめ心の準備をしておくべきだろう。山雅の"縦に早く"とはディティールが違うと考えといたほうがよい。

そのため保持時に相手を捕まえるのはなかなか難解。
ゲームを作れる木村が中心となって最終ラインからボールを引き出しつつ、幅を取るSHにつけ、それを追い越すSBとの関係性でサイドを攻略するパターンが一番定番の形。先ほど書いたように逆足SHなので相手から遠い位置にボールを置けるのはメリット。逆に展開し、中に入ってくるSHが仕留めるという形も得意としている。
とはいえ、保持時は割と自由に動き回ってくる。狭いエリアを突破しようとしてくるので"配置で殴る"というよりは"阿吽のコンビネーション"でテンポよくシュートを繋げていくというイメージが近い。

しかし、その分、自分たちのミスや空いたポジションを突かれてのカウンターには当然弱くなってくる。非保持時はロメロが1列上がっての4-4-2に変化するが、五領・米澤・ロメロがかなり攻撃に寄った選手たちということもあり、トランジションでボランチがカバーしないといけないエリアは広い。
誰かが攻め残りしてポジションに穴が生じても埋めきれず、カウンター時にバイタルが空いてるというシーンもちらほら……。マイナスのクロスは1つ狙いどころかもしれない。

さらにもう1点、GKに高さがないのでミスマッチが生まれるかもという話を出したが、ゴール前を警戒してか、セットプレーの際には7人がゾーン、3人がマンツーとGKの前を固めるような讃岐に近い守備陣形を取っていた。そのため、バイタルへのプレッシャーは非常に薄く、八戸戦でもそこから失点していたのでGKの高さを狙うと見せかけてマイナスにボールを入れてみたり、あえてショートコーナーで揺さぶるようなデザインはできそう。

要注意なのは左SH米澤。19年のJ2時代はルカオ・韓勇太の控えという立ち位置だったが、J3降格後の20年、21年はSHを主戦場にすると、2年連続で9G、チーム得点王を記録。ペナ角からゴール前を横切るようなカットイン、斜め方向から勝負を仕掛けて抜き切らずに撃つシュートなど"得意の型"に入ると止めるのは難しい。その後ろに配置される左SBの薩川も高校時代は静岡学園で旗手や名古、鹿沼らと中盤を構成していた選手。大学ではSBがメインだったようだが、攻撃性能は高い。(山雅がどうなるかはわからないが、前節だと)下川・宮部あたりはスライドをスムーズにしてしっかりと寄せていかなければならない。


<SC相模原>

■直近5年の成績と監督遍歴

17年:安永聡太郎 J3・12位
18年:西ヶ谷隆之 J3・9位
19年:三浦文丈  J3・15位
20年:三浦文丈 J3・2位<昇格>
21年:三浦文丈(1月-5月)、高木琢也(6月-12月) J2・19位<降格>

22年監督:高木琢也

しばらく昇格争いからは遠く離れたシーズンを送っていたが、20年の三浦体制2年目、2位で逆転昇格を達成19戦無敗という驚異的な成績を記録して、前節まで2位をキープしていたお隣さんを最終節で捲り、昇格を手にした。去年は得点が見込めたセットプレーまでなかなか持ち込むことができず、勝ち点で伸び悩み、三浦監督を解任。
高木監督にバトンタッチしたところで、若手を中心に選手を大量補強。惜しくも残留は叶わなかったが、高木監督はそのまま続投。夏同様の方針で世代別代表の若手や元代表クラスのベテランを大量に補強し、再びJ3に挑む。

■去年のスタメン

・第1節

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H京都 ●0-2

・第24節(中断明け)

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H栃木 △0-0

・第42節

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A東京V ●0-3

勝ち点38 8勝 14分け 20敗 得点33 失点54 得失点差-21 19位(J2)

シーズン中の6月~9月の間だけで9選手が加入したこともあり、出場選手の入れ替えも頻繁に起こった。耐える時間が長くなるのも許容してユーリ&ホムロの強力な個やセットプレーの1発で刺すスタイルからハードワークを主体に多彩な選手の攻撃の持ち味を生かせるような戦術に切り替え、内容面でかなりテコ入れはあった。
客観的な評価や印象もかなり悪くなかったと思うが最終的には得点数、シュート数は最下位に終わり「選手個々の躍動感は出た割には得点がついてこない」というのが課題として残った。新戦力の若手でチームが活性化した代わりに研ぎ澄まされた武器(得点パターン)が失われたのも要因としてあると思うので、ここはJ3でも課題になってくるだろう。

■現スカッド・オフの雑感

【GK】
今年は正GKの期間も長かった三浦が金沢に、真木もセレッソに移籍。竹重も10月に左ひざ蓋靭帯断裂の負傷で全治不明の状態。アジェノールも未定になっているので、GKはかなり不安要素だったが山雅の正GKだった圍や大ベテラン柴崎(東京V)を立て続けに獲得。高木監督の傾向を見ると"去年よりもプラス"という評価でもおかしくない。

【DF】
ベテランの梅井(→未定)や後藤(→牧方)が満了、木村誠二も山形に個人残留になった。一方、鎌田は完全移籍に、藤原も残留。元代表の水本(町田)まで加えて最終ラインはスケールアップに成功。

船木(→セレッソ)、兒玉(→鳥栖)が揃って所属チームに帰還、星(→鹿児島)、澤上(→未定)も移籍した左WBだが、右WBの主力だった夛田は両サイド可能。新戦力を見ても福島(浦和)や渡部(大宮)、高山(大分)など候補は十分にいるのであとはシーズン通しての稼働率か。

【MF】
夏の移籍組の中でも最も評価を高めた成岡は清水に、山雅にとっては因縁の相手となったは児玉は名古屋に復帰し、前回昇格時のメンバーは何人か抜けたが、10番・藤本や屋台骨の川上も残留、松橋も東京Vからレンタル延長できたのが何よりも大きい。そこにさらに中島(岐阜)、持井(東京V)、田中陸(山口)、中原(仙台)が新たにボランチ(シャドー)候補に。絶対的な存在こそ獲得していないが大きな不安は感じさせない。誰がレギュラーとして名乗りを上げるか。

【FW】
ここまで抜けた穴も上手く埋め、順調中の順調と言っていい相模原だが、ケチをつけるとしたら平松(→群馬)を抜かれた穴か。先ほども得点数ではリーグ最下位という課題をあげたが、平松は5得点をあげ、前線のターゲットとしても優秀な選手だったのでその代わりとなる計算のできる選手は獲得できていない。さらに途中出場でも違いが出せ、4得点をあげたユーリも未だ去就未定なので最前線の火力は落ちている。
代わりの船山(千葉)や浮田(山口)、佐相(大宮)など違った魅力を持つ選手たちで前線の穴をどう埋めるか、どう組み合わせるか。基本的にターゲットがいた方が輝くと思うが船山はチームの主軸となり、2桁得点をあげることはノルマになってくる。

■今年の予想スタメン(予定)

■開幕前展望(予定)

■試合前情報(予定)

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※掲載順・目次

①カマタマーレ讃岐・YSCC横浜

②鹿児島ユナイテッド・SC相模原
③テゲバジャーロ宮崎・FC岐阜
④アスルクラロ沼津・ギラヴァンツ北九州
⑤AC長野パルセイロ・FC今治
⑥ガイナーレ鳥取・藤枝MYFC
⑦愛媛FC・いわきFC
⑧ヴァンラーレ八戸・カターレ富山
⑨福島ユナイテッドFC・松本山雅

(データはfootballlabより)

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