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J3入門ガイド作ってみた④<沼津・北九州>

今回は第7節、第8節で対戦するアスルクラロ沼津、ギラヴァンツ北九州について。

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<ギラヴァンツ北九州>

■直近5年の成績と監督遍歴

17年:原田武男 J3・9位
18年:森下仁之 1月-6月、柱谷哲二 6月-12月 J3・17位
19年:小林伸二 J3・1位<昇格>
20年:小林伸二 J2・5位
21年:小林伸二 J2・21位<降格>

22年監督:天野賢一
16年に初のJ3降格。そこから2年目では最下位&チームの総得点がJ3得点王・レオナルド1人の得点数を下回るなどどん底を経験するも翌年に昇格請負人・小林伸二監督、22年シーズンから監督になる天野コーチを招聘。前年最下位から優勝を果たすというJ史上初の快挙を達成すると、J2に返り咲きした20年シーズンも前半戦は首位ターン。後半戦は失速して、最終的には5位に終わったが、あらゆるクラブ・リーグ新記録を樹立したシーズンとなった。

しかし、躍動の代償もある。昨シーズンのオフではその反動で主力のほとんどが個人昇格や引き抜きの被害に。結局シーズン中もそのダメージを引きずったまま、21位での降格となっている。今オフで小林監督は退任となり、SD(スポーツダイレクター)としてチームに残留。天野コーチが後任になったが、降格とは関係なく元々3年で引き継ぐつもりで進めていたようなので監督人事は極めて計画的で順調。しかも小林SDもグランドには毎日出向いているようなので北九州の最大の強みになっていた指導者陣やビジョンは失われていないどころか、強化されてる可能性すらある。

ここでは語りつくせないほど分厚い内容で、分かりやすくチーム事情が書かれているので興味のある方はぜひ。

■去年のスタメン

・第1節

VS新潟 ●1-4

・第24節

琉球 ●1-2

・第42節

VS山形 ●1-5

勝ち点35 7勝 14分け 21敗 35得点 66失点 得失点差-31
442をベースに4231や4222、3142などに変化していく流動的なシステムは継続
。村松、針谷など去年からの残留組を中心にしつつ、最終ラインから組み立てていくサッカーの構築に序盤から時間を割いた。
夏には福森(大分)や椿(横浜FM)など去年の中心メンバーを呼び戻したことからも昨季まで築いてきたベースを取り戻そうという意図は強く感じた。前年のような躍動感を生み出すことはできなかったのは降格が見え隠れしていたのも大きく関係していたと思うが、結局のところ、前年のストロングポイントだったFWとGKの軸を固定できずにいたのが浮上できなかった要因のように思う。

■現スカッド・オフの雑感

【GK】
昨シーズンは4人全員がリーグ戦で起用されたこのポジション。全治6~8週間のけがを負っている加藤の負傷により、5人体勢に。誰がなっても不思議じゃないがチームカラーを考えればできれば誰かを固定したいか。

【DF】
DFリーダーの村松が長崎に移籍して個人残留。さらにCBだと生駒(→山口)、岡村(→岐阜)、佐藤(→栃木シティ)が移籍してほぼ総入れ替え状態になっているため不安なポジションに。ただし、徳島や鹿児島などビルドアップが求められるチームで主力を張ってきた藤原(鹿児島)を軸に、高校時代にFC東京U-23でJ3経験のある長谷川(順天堂大)、選手権でも躍動した伊東(静岡学園)とルーキーで即戦力級の選手が加入。ここのハマり具合が浮上のカギを握る。

SBでは生駒、福森(→大分にレンタルバック)、野口(→未定)とレギュラー格が移籍したが、左では永田の引き留めに成功。右は東京五輪の世代別常連だった藤谷が稼働できれば昨シーズンよりむしろプラスになるが……最悪六平がその穴を埋める形になるか。

【MF】
西村、針谷、井澤、六平、永野と北九州のサッカーの頭脳と心臓になるボランチ陣を残せたのは大きい。その一方で、高橋(→清水にレンタルバック)、新垣(→山形)、椿(→横浜FM)と強力な個を持ったアタッカー陣は一気にチームを離れた。新たにアタッカーを育てる必要が出てきたが、その筆頭である東福岡高校の元10番・藤川(→磐田)が地元・福岡でどれだけ結果を残せるか。
また、浦和ユースからトップ昇格でプロ入りした元世代別代表の池高(→福島)、針谷の後輩にあたる井野・平原の昌平コンビも原石としては申し分がない。

【FW】
経験豊富な富山(→大宮にレンタルバック)は欠けたが、佐藤亮、前川、狩土名と若手有望株の残留に成功。そこにJ3・群馬で17得点と得点を量産した高澤(→大分)を期限付きで獲得。さらに2度の2桁ゴールも記録している八戸のエース・上形の引き抜きもできた。泣き所だったゴール前での強さを持ったストライカーを獲得し、このポジションはJ2時代よりも強力になっている。ストライカーの充実度で言うとJ3でも1、2位を争うと個人的には思うのであとはその役割をどう食い合わないようにするかがポイントになってきそう。

■予想スタメン

去年に続いてシステムは4-4-2(4-4-1-1)
オフにセンターラインの主力を抜かれたが、開幕からある程度メンバーを固めてきた。しかし、数名の隔離が発表された影響か、前節は主力の数名がメンバーからも外れている。隔離されている選手は不明だが、連戦やチーム状況からメンバー変更はありえる。

GKは元世代別で神戸U-18時代は表原と攻守の要という関係だった吉丸

CBは前節まで新たなDFリーダーとして河野が全試合先発していたが前節は欠場。乾・藤原と相方争いをしていた2人が先発になっていた。ただ前節はCB間の連係ミスから失点。ベンチには長谷川・伊東と2人のCBが入っていたことや現在左SBが薄いこと(元々乾は左SBが本職)からも組み換えがあっても不思議ではない。
右SBも元世代別で神戸U-18出身の藤谷壮が開幕から出続けている。去年は怪我に泣いたが、今年は貴重な縦に突破できる槍として活躍。
左SBは経験豊富な永田が前節初の欠場。前節出場の前田かベンチ入りを続ける池高か。高さを考慮して乾という選択肢も。

ボランチはFPでは唯一のフル出場・針谷がチームの心臓。相方として経験豊富で気の利いたプレーができる六平という組み合わせだったが、六平が欠場で186cmの大型ボランチ・西村が今季初先発。和製ポグバなんて一部では言われているがどちらかというとブスケツ系のプレイヤーのような気がする。
左右は元東福岡の10番藤川高校時代はプレミアEAST得点王、大学時代は3冠を獲得した時の明治大学主将・佐藤亮。期待値を考えるとどちらも伸び悩んでいる感はあるが、時折その才能を感じさせるプレーを見せることがあるのでボックス近辺でボールを触らせるとやはり怖さはある。

FWは布群馬で昇格&得点ランク2位の17点をあげた高澤がストライカーを多く抱える北九州のFWの軸として君臨。群馬時代、当初は吉田将也と共にサブ組だったがそこから2人で成り上がり、ホットラインを形成してチームの中心になった。前節初出場した吉田に先発のチャンスが回ってくればなかなか運命的である。
そして、相方は機動力があってラストパスや抜け出しを得意とする前川。この2人、実は去年どちらも山雅を相手に得点をあげている選手なので2年連続で得点は与えたくないところ。

また、藤川・針谷は高卒でプロ入り後に磐田で名波監督の指導を受けており、山雅での若手との関わり方を見ても分かるように影響は強く受けていることだろう。そうした選手たちに花を持たせないようにしっかりと抑え込みたい。

■試合展望

ここまでは2勝2敗3分け7得点10失点(山雅は5勝1敗1分け15得点8失点)で12位。失点が積み重なっているが「良い攻撃が良い守備を作る」と公言されているチームスタイルを考えると得点数をもう少し増やしたいところだろう。特にここ4試合(リーグ戦+天皇杯110分)で無得点。これまではどちらかというと失点のリスクを冒してでも得点を取りに行く方が得とプレビューでは触れる試合が多かったが、北九州が久々の得点によって良いサイクルを生み出すような展開はまずは避けたいところ。

ここまでの試合を振り返るとCBと針谷からボールを回し、高い保持率(リーグ2位・岐阜に次ぐ57.3%)と被攻撃回数(リーグ1位)を誇る。

先ほどシステムは4-4-2という話をしたが、前体制に続いて人の流れは激しく、システムは流動的。前川が中盤に下りての4-2-3-1やボランチの一角が下りて3-1-4-2など流れの中での自由度は高い。ただ基本的にはDHの2枚がそのハンドルを握り、相手の状況に応じて周りが形を変えていくことが多い。「流動的」「相手の状況を見てシステムを変える」「3⇔4併用」というと今期の山雅と似たようなイメージかもしれないが、守備時に重点を置いてシステムを変える山雅に対して北九州はほとんど攻撃(ビルドアップ)のためのシステム変更北九州側のプレビューに書かれた監督のコメントでも具体的に触れられているがこのあたりの哲学の違いは面白い。

また、アタッキングサードでの個の力は強力。ストライカーとしての能力が高く、それぞれ2ゴールを挙げている高澤、佐藤、さらにテクニカルで一瞬の閃きを持った前川、藤川と前線のタレント力はJ3でも上位。そこに針谷、西村と繋ぎに長けた選手や藤谷のような攻撃的SBも加わるので、ラインが重くなるようならばラフに蹴り飛ばしてでも無理やり敵陣から始めさせるのもありだと個人的には思う。

というのも、ここまでは得意としていた後方からの前進に苦労しており、停滞しているうちに不用意なロストからのカウンターを喰らい、後ろが潰し切れずにそのまま失点してしまうというケースが非常に多い。特に4失点を喫して大敗した沼津戦はCBとボランチのミスを奪われての失点とセットプレーだけで大差をつけられて敗れている。

良い時は後ろがテンポよくボールを前進させ、ストライカーには得点を取ることに専念させることが爆発的な攻撃力を発揮してきた北九州だが、特にここ最近は高澤や前川のような前線のプレイヤーが後方の繋ぎを貰いに下りてくるシーンが目立ち、逆にタスク過多になっているようなのでそれが得点力不足の要因の1つにもなっているような気がする。

また、前体制の攻撃志向のサッカーを引き継ぎ、前に比重をかけて人の流れは活発だが、それに反してボール回しは良い時ほど積極的にできていないので、良く言えばアグレッシブを貫き、悪く言えばハイリスクハイリターンの「ハイリスク」の部分がここまでの戦いでは強めに出ている(ちなみにデータ上も被シュート数ワースト2位、被チャンス構築率はリーグ最下位と奪われてからシュートに繋げられてしまっているのが表れている)。

山雅としてはCBや針谷からの展開・前進を阻止するべく、FWからしっかりと圧力と規制をかけ、相手に消極的なパス回しをさせることで前後を分断し、奪ったら2人、3人と素早い攻撃でシュートまで繋げるのが理想。

最後に、余談だが北九州との対戦成績は8勝2敗2分けと好相性。しかし、アルウィンでは3勝2敗1分けとほぼ五分の成績。首位キープ、さらにはアルウィン連勝でホームゲームでの勢いをさらに加速させるべく、降格組のライバルからしっかりと勝ち点3を掴み取りたい。

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<アスルクラロ沼津>

■直近5年の成績と監督遍歴

17年:吉田謙 J3・3位
18年:吉田謙 J3・4位
19年:吉田謙 J3・12位
20年:今井雅隆 J3・12位
21年:今井雅隆 J3・14位

22年監督:今井雅隆
JFLからチームを率い、17年・18年と昇格争いを繰り広げてきた現・秋田の吉田監督が5年間の長期政権を終えて退任。その後はフィリピンやマカオの代表チームを率いた経験もあり、10~19年は山形ユースの監督を務めていた今井監督が指揮を執っている。2年目の昨シーズンはJ3参入後ワーストの14位。下から2番目の順位からの巻き返しなるか。
ちなみに余談にはなるが、シーズン前のTMで沼津にボコられるという流れがあったが、これらは吉田体制以前のものである。

■去年のスタメン

・第1節

・第16節

・第29節

勝ち点27 7勝 6分け 15敗 得点32 失点44 得失点差-12 14位
ほとんどの試合で4231を採用。渡邉、高橋、染矢と強力な攻撃陣がチームを牽引。渡邉7得点、高橋6得点、染矢3得点と得点源ははっきりとあり、CK数2位、クロス数5位、PK数3位などJ3で上位のスタッツもあったが、バリエーションという面ではなかなか増やすことができず。リーグワースト2位タイの失点数も重なり、チームとしてなかなかそれを勝ちに繋げることができなかった。
さらに主力の離脱が年間を通して多かったのは下位に低迷した要因の1つにあるだろう。沼津に限らず、怪我人が出るとJ3チームの多くは台所事情が一気に苦しくなる。

最後に……戦力分析とは別軸の話になるが、クラブにとって見逃せないのが「J3ライセンス喪失の危機」と「クラブ存続の危機」の問題。前者は6月時点でホームスタジアムの照明改修の確定、後者は収益4億円の回復の必要性がある。クラウドファンディングなども行っているが、1ライバルとしてはこのクラブの危機を問題なく乗り越えれることを願いたい。

■現スカッド・オフの雑感

【GK】
正GKだった大友が山形にレンタルバック。代わりとなる三井(名古屋)や武者(岩手)はまだプロ経験が厚くない若手なので第2GKだった野村が軸になるか。

【DF】
失点数が課題となっていたが、藤嵜の相方争いをしていた後藤(→岡崎)、徳武(→岳南)が揃って退団(放出?)に。代わりのCB補強はJ初挑戦となる附木(FC大阪)。現レギュラー藤嵜とは大学時代、国士舘大の同期という縁。補強ポイントと考えるとやや心許ない陣容になっており、世代別経験もある若手の井上の成長も必須か。

また、安在(東京V)の完全移行と前川(国士舘大)の加入で右SBは一気に熾烈になっている。

【MF】
登録上のMFの移籍・放出は0。しかし、チーム最多アシストの徳永が11月から4カ月の離脱中。計算が難しい状態になっている。
加入は河田(東京学芸大)、遠山(京都U-18)、ブイ ゴック ロン(サイゴンFC)という3者3様のJ初挑戦組。住田(山雅)の同級生・河田が個人的には印象に残っているが、ユース時代に1年生ながら2つ上の川崎(京都)とコンビを組むこともあった世代別代表・遠山も見逃せない存在。

【FW】
昨シーズン6G3AでSH・FW両方でプレー可能だった高橋潤(→山形)がレンタルバックになった打撃は大きい(既定路線ではあったが……)。さらに20年のルーキーイヤーで4得点の今村(FC大阪)、伊藤(牧方)、鈴木(品川)と量・質ともにマイナスが多くなった。
夏から加入してオフに完全移行になったブラウン ノア 賢信(水戸)やサイゴンFCから加入したグエン バン ソンがサプライズを起こせるか。

■予想スタメン

去年は4-2-3-1が多かったが、今年は開幕から4-1-2-3(4-1-4-1)。メンバー構成や左右の選手起用など色々と試しながら戦っていくうちに第4節前にチーム活動が休止。なかなかメンバーが揃わない中での戦いに。

ようやく活動再開して徐々にメンバーが戻ってくるかと思われたが、その後の試合で染矢、佐藤、鬼島と3戦連続で、前半のうちに負傷交代。さらにFWハディファイヤッドがマレーシアの世代別代表に選出されてチームを離れている。先週木曜日のアウェイ八戸戦、日曜日に行われた天皇杯ともにほぼ同じメンバーを起用しており、台所事情は苦しくなっている

GKは去年のセカンドGKだった野村がそのまま正GKに。大敗した福島戦以外はゴールマウスを守る。

CBは藤嵜・附木の国士館同期コンビ。特に附木は純粋な空中戦に強さを見せる。SBは左に大迫・右に安在。大迫は神戸U-15で菊井の2つ上の先輩にあたる、貴重な得点源になっているロングスロー持ちの選手。安在はヴェルディユース出身で三竿健斗(鹿島)の代にあたるアタッカーもこなせる攻撃的SB。保持ベースだった第2節くらいまではSBは高い位置を取るのが特徴だったがそれ以降は高い位置はそれほど取っていない(のか取れていないのか……)。

中盤3枚の構成は逆三角形が基本。これまではSBやSHが主戦場だったがいつの間にかIH、そして現在はアンカーの位置で定着している濱、沼津で6年目、チームを引っ張る精神的支柱・菅井は固そう。あと一枚が天皇杯でこの位置に入った鈴木になるか誰かが復帰してくるか……あるいは途中から出場機会を得ているU-19日本代表候補・遠山の存在も面白い。ただ球際の攻防が多くなることを考えると鈴木になるのではないかと予想。

3トップは染矢が負傷で出場が厳しく、決定力抜群のエース・渡邉が中央で攻撃を牽引する。右には先日の天皇杯では決勝点を決めたユーティリティの北が有力。左にはここ2試合連続で瓜生が先発で入っている。元々杉本太郎らとU-17のW杯を戦った期待の若手だったのでユース世代も追ってる人からすると有名な選手だろう。ロシア戦の伝説のミドル↓

また、サブには切り札として高さ(189cm)・強さ・速さをもったブラウン ノア 賢信が控える。期待値を考えると伸び悩んでいる感は否めないがやはりポテンシャルは感じる。ただし、控えは全体的に層は厚くなく、交代カードを使いきらないという試合がほとんどなのも特徴的。

■試合展望

ここまでは6戦で3勝3敗、9得点8失点。無失点試合3試合、無得点試合2試合、さらに4-0で勝つこともあれば0-5で負けることもあるというスコアの振れ幅が大きくて得点も失点も多いが、ここまで毎試合得点も失点もしている山雅と異なり、得点が取れる試合と取られる試合がはっきりとしているのが特徴的。

とにかくボールを持たずに「高い位置からのプレス→ショートカウンター」を得意としている沼津だがボール支配率を見ても44.5%は18チーム中最下位。だが、実は去年はリーグ6位の支配率(51.5%)、さらに開幕戦は支配率63%と「持つチーム」だった。が、先ほども触れた福島戦で大敗したことでガラッと違う戦い方をするチームに。
岐阜戦では31%まで支配率を落とし、割り切った戦い方をした結果、これが見事にハマって完勝。現在のスタイルで戦っている。話は支配率の話に戻るが、最初の2戦は相手より高い保持率だったことを考えると、数値上の平均支配率(44.5%)よりもはるかに低くなるような戦い方を現在はしている。

ただこうした戦い方をする中でそれほどチャンスを多く作れているわけではない。シュート数や30m侵入回数でもリーグ最低。基本的にはそれほど押し込まれず、多くのチャンスは作られないと想定して良いが、その分一刺しは鋭い。シュート成功率は15.7%はリーグ2位、特にCF渡邉はトラップからシュートまでが非常にスムーズですべての能力が高水準。多少孤立しても収められる選手なのでCB中央に入る選手がここに自由を与えない、もしくは潰せるかは1つのポイントになるだろう。対してシュート成功率は山雅も1位と高い(単純に得点が多いのもあるが……)。「リーグ屈指の決定力対決」となっている。

具体的に気を付けなければならないのが4-1-2-3の2の奪取からの早い攻撃。前線の3枚が相手の最終ラインに激しくプレッシャーをかけて中に誘導し、アンカーへのボールが乱れたところを"IHが奪取"→"前線3枚とのショートカウンターへ"と持っていくのがパターンとして確立しており、特に岐阜や北九州のようなしっかりと後ろからボールを繋ぎ、アンカー(庄司や針谷)にボールを集めるようなチームはまんまと沼津の術中にはまってしまった感がある。讃岐戦のような不用意な縦パスは失点に直結するので気を付けたい。また、GKへのバックパスも狙っており、DF・GK間の事故から今季は早くも2点生まれているので注意が必要。

ただし、山雅もリスクを冒して繋ぐチームではないのでチャンスはある。前プレの裏返しを狙ってのラフなボールへの跳ね返しは強いが、地上戦は少し危うさは見える。横山のようなスピードタイプへの対応はもちろんだが、高い位置で相手に収められた時のラインの不揃いさや相手との距離感はまだまだ大きな課題としてあり、相手のアタッカーとの駆け引きは得意ではない。菊井や小松、もしくは榎本のようなアタッカー陣たちはそうしたズレを突くのはうまいので相手のDFラインの隙を見つけ、賢く相手のプレスをひっくり返したい。

また、体力のある序盤からプレスはガンガン飛ばしてくるので、こうした刺すか刺されるかの攻防は序盤から多く、6試合中4試合は開始15分以内にゲームが動いている。ここまで試合ではここで先制点を取ったチームがそのまま勝利しているので、いかにこの時間帯で耐えて相手を裏返す一発を打ち込めるか?は勝敗を大きく左右しそう(点が取れる試合と取られる試合がはっきりしているのは序盤で試合が動きやすいのもあるかも……)

最後に、ここまでの6戦は讃岐以外は足元でしっかり繋ぎ、綺麗に崩してくるチームだったが、久々に山雅が持つ展開になりそう。これまでに比べて繋ぐのを苦にしているわけではない、かつシステム変更のオプションもあるので特別なことを何かするというよりはしっかりと相手を引き出してアンカー脇を使い、相手のロングスローや持たされる展開に対しても毅然とした対応で臨むことの方が重要になってくるだろう。


※掲載順・目次

①カマタマーレ讃岐・YSCC横浜

②鹿児島ユナイテッド・SC相模原

③テゲバジャーロ宮崎・FC岐阜

④アスルクラロ沼津・ギラヴァンツ北九州
⑤AC長野パルセイロ・FC今治
⑥ガイナーレ鳥取・藤枝MYFC
⑦愛媛FC・いわきFC
⑧ヴァンラーレ八戸・カターレ富山
⑨福島ユナイテッドFC・松本山雅


(データはfootballlabより)

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