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[感想,要約]オーバーヒート/著 千葉雅也



哲学者の芥川賞候補作

 哲学の本は何を読めばいいのか。難解すぎると読み進められなくなるので、入門書を探していたら千葉雅也さんが書かれた「現代思想入門」を見つけて読んでみた。誰でも読める入門書として書かれており(そういう風に書いてあると本の中にあった)、理解しやすい。「現代思想入門」の要約や感想は、また別の記事にまとめる
 「現代思想入門」を読むまでにも千葉雅也という名前は知っていた。芥川賞候補になっていたからである。今回「オーバーヒート」を手に取ったのは、哲学者として生活している人が、どんな小説を書くのか気になったからである


私小説的な純文学

 芥川賞候補になっているので紛れもなく純文学作品である。基本的に読みやすい作品であるが、序盤しつこいような観念的な部分や、比喩が気になった。後半はつまるところがなく読める。238枚という分量を感じさせない軽快な小説だと感じた

◯◯と晴人の恋愛

 主人公は○○と小説内で表記される。メインの筋は◯◯と恋人晴人の関係で、二人の性的なシーンから小説が始まる。ある意味で純文学的であるが、◯◯の悩みというのは現代人に普遍的なもので、晴人のLINEの返信が遅いとか、晴人がどこで何をしているのか気になるとかで、共感を得るのではないだろうか

不誠実な自分の行いを肯定したがる◯◯

 そんな少女的な場面がある中で、◯◯は男娼を買う。晴人がいるのに不誠実であるが、晴人が浴衣姿で女性と天神祭に出かけているところに出くわすと、晴人を責めるようなLINEや電話をする
 私は◯◯に不安定な面を感じる。晴人が気になりながら自分は男娼を買い、その寂しさを埋めて性欲の満足を得ている。つまり自分勝手であるということだ。大学教授という若者達とコミュニケーションが必要な仕事をしている大人でも、このように顔を使い分けているということだろう



突然の下品な言葉

 ものすごく下品な言葉が出てくる。フロイトが言うところの、芸術を通じて、抑圧された性的な欲求を表現しているのではないかと思う。同じ著者が書いた「現代思想入門」にそう記されていた


面白く読めた

 純文学ですが、硬すぎなく読みやすかった!
 面白く読めたので、皆様も読んでみてはいかがですか?

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