レコード会社勤務_セクハラに泣く

レコード会社でのアルバイト勤務も1年が過ぎた頃。

前回の記事で書いた通り、私は女感のあるプロモーションはできず、毎日セコセコ真面目に働いていた。1年経った後も、引き続き愛嬌を振りまいたり、愛嬌を利用する事などもできなかった。

同じレコード会社の先輩と毎日ごはんを食べたり、毎日バカな事を話したり、情報を交換しあったり、他社の先輩に電話の仕方で叱ってもらったり、メディアの人から怒られたりしつつ、業務パンパンでパンクして先輩を困らせたり、出張に行って接待で美味しいものを食べたりしながら、楽しく働かせてもらっていたし、育ててももらっていた。

なりたての頃から考えると、接待のできる美味しいご飯屋さんの情報も増えたし、道も覚えたし、迷子にもならないし、毎日苦戦していたPCも軽快に使えるようになっていた。21歳という吸収ぐんぐん時期に、ぐんぐん成長していった。


表題の話をする前に、私の容姿の話をしたいと思う。

私は、小学校高学年の頃、新体操の時にレオタードを着ると邪魔になるくらい幼い頃から胸が大きかった。そして、成人してからも鍛えまくっていたお腹の筋肉はすぐ衰えず、お腹が絞れているせいもあって、余計胸が大きく見えた。自分では愛嬌を振りまけないと思っている中でも、見た目もギャル感が残っていたし、勝手にそう捉えられていた部分もあったのかもしれない、と思ったりもする。


ある日、私は日々の多忙さにかまけて、洗濯が追いついていなかった。とはいえ平日だったので、もちろん仕事に行かなくてはならず、仕方なく仕事の際は着ないような少し身体のラインが出るような服を着て仕事に出た。

普通にメディアに営業に行ったりもしたが、やはり身体のラインが出ているから、自意識過剰とかではなく実際に目線が気になって、早く帰ろうと思った。補足をするが、男性が胸を見る目線はいかに自然に見過ぎてないと思っていても、見られている側はしっかり気づいている事が多いと思うので、自戒して欲しい。

ある局での営業を終えたら、すぐ帰ろうと思っていたら、同じレコード会社の男の先輩から電話がかかってきた。「今、メディアの人と飲んでるから来られない?」と。私は一旦は断ったものの、少しだけとずっと食い下がられた事と、先輩もいる安心感もあったので、営業にもなるか、と少しだけ顔を出す事にした。

この判断が、後に間違いだった事を知る。

会食場所は居酒屋だった気がするが、男の先輩とメディアの男の人が2人いた。そこに着くなり、仕事の話などは一切せず、させてもらえるような隙もなく、ずーっと私の容姿の話をされた。

「何カップ?」と聞かれたり、「おっぱい大きいよねー!」と言われ、何ならそれしかない時間を1時間強過ごした。立場上、強く拒む事も逃げる事もできない状況に、来た事を後悔した。そして、この男の先輩は私の容姿を利用しようとして自分の立場を良くしようとしている事も察した。クズみたいなずるい男共、とはいえ信用した自分が悪かったと思った。ずっと適当に愛想笑いしてこの場は乗り切って、この場が終わったらすぐ帰ろうと思った。

だが、甘かった。

トドメに、お会計は先輩と折半だった事にイラついて、本当に帰ろうとした。クズの上にケチかよ、と。ただ私は、どのくらい強い態度を取っていいか分からなかった。今となっては帰る意思をしっかり示して、逃げればよかったものを、変に真面目な事が影響して、メディアの人を見送りもせず帰るという事ができなかった。

私は見送りつつ帰ろうとした所を腕を掴まれて、男3人の力でタクシーに押し込まれて、二軒目に連れて行かれた。

二軒目は自分も知っている店だった。これは不幸中の幸いだった。

その店でも一軒目と変わらず、エンドレスで私の容姿の話しかされなかった。最初の一杯だけ頼んだらすぐ帰ろうとしていたが、腕を捕まれて、帰らせてもらえなかった。

ああ、こういう身体のラインが出ている服を着ている時に、何のガードもせずにひょこひょこ顔を出した自分が悪いのだ、と自分で反省しつつ帰るタイミングを図っている時、

メディアの人の1人が私の胸に向かって、ストローの袋をストローを吹いて飛ばした。「胸の谷間に入れるゲーム!」と言った。私は唖然とした。その後も何度か続けるその人を見て、周りで爆笑している先輩ともう1人のメディアの人を見て、私はキレてしまった。

ただ、立場上さすがに怒鳴り散らすわけにもいかない、という謎の真面目な制御もあってか、涙がポロポロと流れた。

涙する私を見て、ようやく事態を把握したのか、ストローを吹く手を止めた。ただ、「何泣いてんの?笑」と爆笑された。

その瞬間に、制御が切れて、私は荷物も持たずに店を出た。財布も携帯も鍵も持たずだったけど、とにかくその場を出たかった。店にいた知り合いの人が泣きじゃくる私を追いかけて、鞄を渡してくれた。お礼を言い、鞄をひったくって、急いで帰った。

その3人は追いかけてもこなかった。

次の日、営業所でその男の先輩と顔を合わせて向こうから「おはよう」と言われたが、無視した。その後謝られても、何日もずっと無視し続けた。あまりに無視し続けていると、別の先輩にその人が相談したのか、私も折れるように説得された。意味が分からなかったから何があったか話したが、それでも折れるようにと言われた。これが社会か、と思い、とりあえず見た目として謝罪を受け入れた。

メディアの人2人からも、メディアの中のオープンスペースで頭を下げられた。こんな場所で頭を下げてやっている感・許してもらえると思ってる感満々で少しニヤニヤしていた。そして、先日あった事は上に言わないで欲しいと、のたまった。

私は返事もしなかった。周りにいた人は、21歳の小娘に頭を下げるおじさん2人を見て、びっくりしていた。色んな人に「何があったの?」と聞かれたが、答えなかった。それを見て、その2人は「ありがとう」と言った。

そうかー、自分のショックな気持ちとかは全く関係ないんだ、と気づいた。甘かった自分を恥じて、それから会食に行く時はなるべく身体のラインが出ない服を着て、雑なメイクをするようにした。自分の気持ちが落ち着くまでは、誰ともしばらくご飯に行かなかった。というか、怖くてなかなか行けなくなった。

起きた事はしょうがないし、自分に一切非がないわけでもないから、自分の中でこの出来事を消化しつつ、謝ったら何やっても良いらしいこの業界で、自分で女は使ってるつもりはなくても、もし使われた時の出来事において、パワーバランスを活かして、いかに借りとして服従させ利用するか、を考えるようになった。


ハタノ









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