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第32話 「鉛筆貸してくれない?」

学校では新学期が始まった。いきなり数学Cがあるが鉛筆もノートも忘れていることに気づく。授業の前にトイレに行きたくなった時のことを考えて探しておこうと思った。しかし、探してみたもののトイレがどこかわからない。ようやく体育館の裏でトイレを見つけるが緊張して出ない。

隣で授業が始まっ様な音が聞こえて来た。仕方なく授業へ行こうとしたが途中にゴミ箱があったのでそこで用を済ませた。うっかり周りの人に見られて恥ずかしい。教室に入ると授業は始まっており、出席はもう既に取ってしまったらしい。自分の席がわからないため、知っている振りをして前から二番目の空いている席に座る。机の上にプリントは置いてあるが鉛筆を持って来ていないため、両隣の坊主に描くものを借りようと思う。

「鉛筆貸してくれない?」

一度に二人に頼んだのが気に障ったらしく二人とも貸してくれない。少し調子に乗り過ぎた様だ。仕方がないため左後ろの席に置いてある鉛筆を取る。
プリントはテストの様だったが、両隣の坊主頭は問題がわからなくなるとすぐに私の回答を見て来て鬱陶しい。
遅刻したせいか授業がすぐに終わった。午前十時三十分だ。隣の坊主頭から離れたいため窓から教室を出る。外では大盛りのカレーを食べている人がいる。
先生が来ないうちに早く食べろと言われ焦って食べている。鬱陶しい人が後ろから抱き付いてくるため、また教室へ戻る。あれだけのカレーを食べてみたいと憧れる。

教室では私の持って来たポーティスヘッドの曲がかかっていて変な気分だ。内緒にしているが机の中にはエニグマのレコードがしまってある。千田君はビハインド・ザ・シャインが好きだと言っているが、そのレコードはなかなか見つからない。後ろで菊市君がスープの中にカボチャを丸ごと入れてしまい、その机の人が怒っている。

「自分の分と取り替えなよ。」

どうしたらいいかわからなそうだったので忠告をするが、それは菊一君の意にはそぐわないらしい。給食のくせに一人一人おかずが違っていて不公平だと思う。

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