体質改善ではアトピーは治らない 〜 アトピー治療で"やめた"こと(1)
アトピー性皮膚炎を治すために試したうちの一つが漢方での体質改善です。今回はその過程と結果を記事にしました。
漢方で"体質改善"を目指す
私は中学生の頃から、数年間、漢方を飲み続けました。漢方でよく言われる「体質改善」でアトピー性皮膚炎を治そうとしたのです。
漢方を処方してもらったのはアトピー治療で有名で、評判も良い医師でした。私の母親が、子供のアトピーを漢方治療で治したという知人から紹介してもらったのでした。
診察で最初に対面したときに、私は人生で初めて、俗に言う”オーラ”というものを人に感じました。白衣を着ておらずタートルネックで椅子に足を組んで座っていて、笑顔で迎えられましたが、この人はただならない人だということを会った瞬間に感じたのです。
「牛乳は人が飲むものではない」
問診で覚えているのは、牛乳を飲んでいるかを聞かれたことです。飲んでいると答えると、牛乳は人間が飲むものではなく牛が飲むものだと笑顔で言われました。
乳糖不耐症といって、牛乳に含まれる乳糖を消化吸収できず下痢や腸内ガスの原因となってしまう体質のことを意味しています。日本人の6割以上が生まれつき牛乳を消化吸収できないと言われています。
ごく一般的にスーパーやコンビニなどに出回っている普通の牛乳です。実は日本人にとって牛乳は飲むのに向いていないのです。欧米人と比較して、日本人は歴史的に乳製品をあまり摂ってこなかったためだと言われています。
インターネットで情報を得られる今でこそこういった知識は一般常識になりつつありますが、当時はその言い方とオーラも相まって、中学生の私には小さくない衝撃を残しました。この医師は信頼できると思ったのです。
"毒素"や"体質改善"って何?
その日から、処方された漢方を一生懸命飲み続けました。薬は苦くマズくて、飲むのは嫌でしたが、体質改善のためには続けることが大事だと思い、大学生になるまで何年も漢方を飲み続けました。
結果としては、漢方を飲み続けてもアトピーが改善することはありませんでした。ステロイドも効かなくなることを恐れて騙し騙しで使っていたので、むしろ成長していくにつれて酷くなっていきました。
自分なりには、漢方を飲むことで体質改善され、”毒素”も排出されているのだとなんとなく想像していました。
いま冷静に考えると、"毒素"とは一体何なのか、それがどのように排出されるのか、具体的なことは何も考えないままでなんとなくそう信じていたのです。
科学的に考えることを忘れない
EBM(Evidence-Based Medicine)という言葉があります。科学的な根拠に基づく医療という意味です。
漢方薬の中でも、臨床研究で特定の効能があると認められるものはたくさんあるそうです。ですが、アトピーに効果がある漢方薬は見つかっていません。
漢方薬とは、原料となる生薬(しょうやく)を一定量ずつ組み合わせて作った薬を指すそうです。生薬とは、植物の葉、茎、根や鉱物、動物の一部などです。それぞれの生薬には特定の成分が一定量含まれているでしょう。つまり、漢方薬も、ある成分の組み合わせでしかありません。
もしもアトピー治療に効果がある漢方が存在するのであれば、その効果が出る過程は研究され、必要な成分組み合わせが特定されて治療薬が開発されているはずです。
ですが、現実にはそのような効果がある成分は特定されておらず、アトピーを生む"毒素"と呼ばれるものも見つかっていません。"体質改善"も同様です。
もちろん、たとえば漢方で冷えが解消されて体温が上がり、回復力が向上してアトピーになりにくくなった、ということもあるかもしれません。
漢方でアトピーが治ったという母の知人の話もそういうことかもしれないですし、そのこと自体が嘘だったとは思っていません。
100万人以上がアトピーになる意味を考える
私に漢方を処方してくれた医師に対して、今でも見方は変わっていません。
前評判や状況からのバイアスはあったにしろ、当時自分が感じて信じたことは事実ですし、その医師は素晴らしい先生だったと今でも思います。
ただ一方で、アトピー患者は日本だけでも100万人以上いる。そんな病気に明確な原因が無いということがありえるだろうか。そういつも考えていました。
もしも漢方の特定の成分でアトピーが治るのだとしたら、アトピーに対して有効な成分も特定できるはずです。また、たとえば上記の冷えのような原因であれば、もっと簡単にアトピーが治っているはずです。
そもそも酷いアトピーは本当に異常な状態です。重症の火傷で爛れたようでいて、ジクジクと滲出液が止まらず、血が出るまで掻きむしりたくなるほどの痒みと、眠れない痛みとを伴います。
100万人がそんな異常な状態になる病気なのだから、きっと明確な原因がある。私がアトピーの原因を特定して自力で治すことができたのは、そのように思考をしたからです。
結果として、アトピー性皮膚炎の直接的な原因は漢方で治せるような体質のせいではありませんでした。
私は漢方を通じて"体質改善"という言葉が具体的に何を意味するのかを科学的に考えるべきだということを学びました。
アトピーの根本原因と治療方法について
アトピー性皮膚炎の根本原因を科学的・論理的に解説しています。こちらもご参照ください。
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