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【短編連載小説】運命の糸は群青の色をしている #01

10か月前

【数珠つなぎ】 日暮里近くにどうしても気分の悪くなるトンネルがある 監督員からは前もって作業員に数珠が配布される いわゆる魔除けだろうか 金額的には安価な大量注文だ ただ作業員の星座にちなんだ色違いを持てる 女が聞く 大量生産の呪具でも祈祷されていると気休めにも効くの? 効かない

【夏の魔の夢】 KM警察署から要請があり 現地が近かったので連絡が入る 急行する 我々は足を探す そちらは胴体を サーチライトに照らす 切断された胴と太腿 伸びて巨大化した胎盤 結婚して子供を生んだかも知れないのに 親を悲しませるなよ あんたはもっと辛かったんだろうがな 貰い泣く

【序】 ここは幻想文学秘密倶楽部 まあ、秘密という程の倶楽部でもない 一階の店舗は仮の姿 二階の内階段を上ると 畳敷きの小さなキッチンと和式の御手洗 ここで幻想文学倶楽部の面々が集まると 一階の店舗にも関わらず仮の姿の店主は ベッドを持ち込みうたた寝をする たまに間違えて客が来る

【一節】男幽① ここは幻想文学倶楽部 洒落た出窓から月夜をアテに サーバーからビールなどはない 脚本家志望の大部屋俳優が一人 「昨日も出たんだぜ」 仮の店主は自動筆記 「誰も正体を知らない」 「でも映るんだテープに」 「吹き流しの手拭いに着流し姿」 「監督が妖術使いにいいってさ」

第二十二話 華燭の典 私と万代はその日祝言を挙げた 虹にも雄と雌があるという 五色の虹龍が駆けつけ 門の間から月も覗いていた 契りの盃に花びらと ことほぎの梅の枝を手に舞う 天女の比礼と笛吹童子 万代の涙が一粒つたう 刻の声が牝鶏で不吉でも 欲しいまま 思うまま 私は生きるだろう

幻想小話 第四十九話 残映 竹林の夢から戻った私は間もなく 庭の茂みの陰で弱そうな鳥の雛を見つけたのだった 万代に見せると篭の中に布切れで巣を作ってくれ、私たちは世話をした ある日、いつものように懐の中に雛を入れて、私は部屋の前に立っていた 万代はおらず、影の薄い方の万代がいた

第十三話 問答 「君もとうとう嫁を貰ったか」 普段寄り付かない奴がくる 障子の向こう側で声真似か 「僕は文学を解さない奴は人と思わない」 「親切で言っている」 「仕事の邪魔するな」 「影踏まれたくせに」 「しっぽは掴んでいる」 私は空瓶を外に放る 「走って汗かいて解毒してこいよ」

第九話 生き写し 「ねぇ先生殿、あなたおとつい、揚げ饅頭屋の前にいませんでしたか」 私は首を振る ここ数年聞かれることが多い こんな狭い町で、両隣とその隣の町まで、私にそっくりな人間がいるとは 六人がそう言うのだから、そうなのだろう ただ不思議にもその『私』は違う名で暮らしている

第五話 金縛り(1) オン コロ コロ センダリ マトウギ ソワカ・・ 私は密かな願いを込めるが、とたんに口が重くなり 所詮無い物ねだりと諦める 濃い闇の中で、空気に押さえつけられた身体は重くなり、動かない 耳元に見なくてもわかる、いる 私はきっちりと両目を閉じる眉間に力を込めた

第八話 寒気 ジジジジジジジジ 虫が鳴いている 夏、ではないと思うのだが 森のような庭ではあるし 気温が高いと冬だろうが鳴くのだろう 鶏でさえ昨今は夜中から鳴く なにかがやって来たのかも知れぬ 私も莫加ではない 美しい女が庭にいたら可笑しいだろう いっそ妻に娶るか

Lizette~オーダーケーキは食べないで~ 第二話 殺意の生クリーム