【シーなんとかと言ったから】 友人は海岸でシーグラスを探していたのだ、と気付いたのは、ガラス瓶で彼を殴り殺した後だった。だって海岸を歩きながら「シー……」とか言うから、てっきり海に遺棄した僕の元カノのシーナが探されているのかと。 #百字小説
【『ただ君に、これを伝えたかっただけなんだ』】 博士が友人に頼まれ発明したのは、死者の声を文書に変える心霊タイプライター。 発明品完成直後、友人は自殺。 何故、と嘆く博士の前で発明品が動き出し、文字が現れる。 『これが本当のゴーストライター』 #百字小説
【交通事故の防止策】 ボールを追いかけ道路に飛び出した子供が車にひかれ亡くなる、そんな悲しい事故が起きた。 再発防止策が検討され、結果、様々な物が規制された。 具体的には、ボール遊び、車の運転、そして子供の存在自体。 #百字小説
【まな板の鯉】 まな板の鯉、という言葉があるが俺の買ってきた鯉はまるで死に抗うようにまな板でビッチビッチ跳ね続けている。なんか怖くなって寝室に逃げ、一晩放置した。まだ跳ねている。一週間放置。一ヶ月。まだ跳ねている。 #百字小説
【整理整頓の得意な助手】 私は探偵。彼は助手、事務所の掃除や整理整頓が得意な働き者。 で、これは本棚。バラバラな順番で並んだ本が実はダイイングメッセージを表していた、筈だったが何者かが本の並びを整理整頓し直しちゃった本棚。 #百字小説
【乾燥機】 新しい乾燥機を購入し、いざ使ってみると全っ然服が乾かない。使い方が間違っているのか、不良品なのか。メーカーに電話するかとスマホを取り出すと、画面に表示されたネットニュース。 全世界が急激に乾燥化? #百字小説
【魔王の企み】 「魔王よ、何故お前は世界を支配しようとする」 「教えてやろう勇者よ。我は全世界を我の私有地とし、車の運転をするのだ」 「くるま」 「免許試験に落ち続け幾年。そこへ私有地なら免許不要と聞き」 「やめな」 #百字小説
【重い瞼】 近頃夜更かしばかりしていたせいか、やたら眠くて瞼が重い。本当に瞼が重い。一分一秒経つ毎にずんずん瞼は重くなり、やがて重力に耐えきれず、俺の顔からぶちりと千切れ地面へ落下。そのまま地中へ沈んでいった。 #百字小説
【寒暖差と引っ越し先】 最近、寒暖差が激しくなったように思う。昼と夜で気温が随分と違う。というのを嫁や孫に話しても「引っ越したからよ」「前の家とは違うんだよ」とよくわからん理屈で流される。俺は腕を組み窓の外の地球を眺める。 #百字小説
【AI疑惑】 「あいつ、どうも悩んでるみたいで。絵の事で。『自分の手で描いた絵なのに、それAIが描いただろ、と言われる』って。どうしましょう。あいつに、お前はアンドロイドなんだよって伝えるべきなんでしょうか、博士」 #百字小説