夕菅 星奈(ユウスゲ セナ)
10秒で楽しめる小説、百字小説。その総集編となる「いっき読み」だけを集めてさらに読みやすくしたものです。10作品ごとに「いっき読み」を作成していくので更新頻度は遅めです。
はじめに ~勇者とは誰か~ これを読んでいるあなたは勇者になることを志している人、もしくは勇者に興味がある人だろう。 そんなあなたに、これを読み進める前に一つ聞いておこう。 どんな人が勇者なのか。 現代には勇者と呼ばれている人はいるにはいるが、明確に勇者という職業は無い。この質問に答えられないのに、定義不明の職業の勇者になりたいというのはいささか不思議である。 この問いかけに答えられなくても落ち込むことはない。私が書いているこれは、そんなあなたを勇者
ミュージシャン目指して、今日も街角で冴えない曲を一人ポツンと演奏してる。何も無く今日も終わると思った時、一人の子どもが母の後を歩きながら拍手をくれた。これだけで目が潤む私はきっと明日も歌ってるだろう。 (100字)
内見した部屋は天井が低く、シーリングライトの暖かみを感じるほどだった。間取りもかなりの圧迫感。縦長3畳のリビングと洗面所とトイレだけ。そもそも部屋が地下9階だから窓も無い。やっぱり火星移住辞めようか。 (100字)
無限トンネルと呼ばれる崩落したままの末崎トンネルをかれこれ一時間突き進んでいる。いまだ出口は見えない。繋がっている先を記事にしたいが噂通り道路は無限に続く。もう少しで何か得られそうだが引き返すべきか。 (100字)
この魚の釣り方を教えてやろう。こいつは鋭い歯を持つが草食性だからルアーでは食い付かない。垂直に穴を掘って、もんどり返しを仕掛ける。これで三ヶ日ほど待てば捕まる。是非試してみてくれ。生息地は知らないが。 (100字)
いつからか自分に悪魔が付いていた。しかし見かけだけで、悪魔の助言で万事上手く行く。富も名声も思うままに。だから私はたまに悪魔に感謝する。悪魔は決まって「お前が幸せだと不幸が広がるんだ」と返答するのだ。 (100字)
㊶「病気」 「私って病気なんですか」「はい。奇病の一つのメルキョ病ですので手術が必要です。もしかすると人工臓器を埋め込むかも」これを聞いて私は嬉しくなった。この病状を種に話をすれば芸能人としての仕事が増える。 (98字) ㊷「サイボーグ」 私はサイボーグ人間である。そうはいってもほとんどが生身の肉体であり「ほぼ人」である。だからケガをすれば血が出て、身体能力も一般的。容姿もワガママボディーの中年男性。ただ脳がサイボーグ化しただけである。 (100字) ㊸「小
「人にそっくりですね」と感想を絞り出すと、博士は完全自立型アンドロイドの完成を自慢した。博士溺愛アンドロイドの外観は横幅広い巨漢。こうでもないと必要機器を内蔵不可能とはいえ私は漫画の読みすぎだろうか。 (100字)
その夜はいつになく街は静寂に包まれ、住人各々は固唾をのんで見上げていた。視線の先には、空を埋め尽くすほどの流星群の七色の煌めき。二度とない現象を見ることができる世界には、またとは無い平和が訪れていた。 (100字)
その女性はキャリーケースを持って水族館に来ていた。水族館受付の私が「こちらでお荷物お預かりしましょうか」と尋ねると「彼氏と旅行なんです。なので結構です」と答えた。そのキャリーケースの中身はまさか……。 (100字)
住宅街の道端で「ご自由に」との張り紙のついた箱。通りがかりの人が中をのぞく。しかし中には何もなかった。その人は苛立って箱を蹴っ飛ばして歩き去った。その箱をご自由に使っていいということは知らない様子で。 (100字)
アナウンスが入る。「本日はご搭乗頂きありがとうございます。只今ウェイストゲージが最大値に達し、化粧室のご利用が出来なくなりました。ご了承下さい。」東京発NY着のフライトの道半ば、私は水を飲む手を止めた。 (100字)
百字小説は丸数字(㉕というふうに)でナンバリングをしていました。しかし丸数字は51以上を表すことが出来ません。そのため今後のナンバリングはカッコ()に数字を入れて表す予定です。何卒宜しくお願いします。 (100字)
物事を成したいのなら、成したいことと反対のイメージを持たせると意外性によって成功する。普段は運動音痴のフリをすることで体育祭ではクラスの英雄になれる。そう思い迎えた当日、私は二人三脚のみの出場である。 (100字)
私が車に乗って信号待ちしていると、見知らぬ人に窓を叩かれた。窓を開けてみると、その人は大きなビニール袋を私に掴ませて足早に帰った。袋には「あなたの排出した排気ガス。あなたが綺麗に処理してください」と。 (100字)
友人を殺すほど幸せになると思い込むサイコパスは死刑囚となった。私はその死刑囚を看守として見守るのが仕事である。何か月も監視した、ある日の点呼の時。死刑囚は「ありがとう心の友、看守さん。」と言った。 (98字)