「顧客起点マーケティング」はスゴ本
すごかった。ガチでおすすめです。
マーケジンの本には何度も期待を裏切られて来たのと、顧客起点で1人を深掘りして考える、という方法論は自分も得意とする所で新たなインプットなさそうだし、何より2019年のマイルールは新しいビジネス書を衝動買いしない、だったので、気にはなりつつも見送っていた本なんだけど、先週、以下のnoteで猛プッシュされていたので即購入し、手にとった次第。すげーよかったです。
このnoteで触れられている「9セグマップの顧客分析」や、本書のメインテーマになっている「N1分析」も素晴らしいのだけども、個人的に刺さったポイントは、実はそこではなかったので、そのあたりの話をしていきたい。
結論から言うと、「アイディア」についての腹落ちする定義と、「ブランディング」は次回購買・使用意向につながらないものは無意味、とバッサリと切っている所がめちゃくちゃ良かった、という話です。
本書読んでからじゃないと伝わりきらないと思うし、このnote読むのに時間費やすなら、本書読んだほうが絶対いいので、まだの方は今すぐ買ってよむべき。
一番しびれた箇所はここ
ブランド立ち上げ時から、「プロダクトアイデア」としてのオンリーワンと言える独自性と便益を徹底的に磨き上げ、その認知拡大と体感の拡大を徹底することは、継続的に成長するブランド創りの基本です。「コミニケーションアイデア」でブランドを創るのではないのです。
すべてのビジネスは、商品やサービス=「プロダクトアイデア」の独自化を突き詰めなければなりません。商品開発自体をマーケティング責務として取り込んで、「プロダクトアイデア」の開発時点から圧倒的な独自性と便益との連動を作り、「コミュニケーションアイデア」の開発も同時に行うべきです。
一番と言いながら2箇所も出してしまったんですが、要は「プロダクトアイディア」を徹底的に突き詰めるべし、ってところが、納得ポイントで、まさに、本質的かつ実践的で、私の好みに激刺さり。以前、ウソはバレる、にからめて話したことにも近い。
本書のマーケティングの「アイデア」の定義は、世の中の共通言語になってほしい。
本書の定義する「アイデア」は、独自性と便益を兼ね備えたもの。独自の価値。図がわかりやすいので引用しておきます。
さらに、アイデアはマーケティングの業務上、「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」の2つがあると。
それぞれに、独自性と便益の四象限を適用することができますが、この2つには 1 が主体で 2 は従属要素であるという明確な主従があります。簡単に言うと、「プロダクトアイデア」の独自性がやや弱くても、便益があれば「コミュニケーションアイデア」で補強して売上の向上やブランド育成が可能ですが、商品やサービスそのものに便益がなかったら、「コミュニケーションアイデア」だけで中長期的な売上を獲得することは不可能です。
おおむね、私の所属する会社にプロモーションの依頼があるのは、この太字にしたケースで、ベネフィットはあるけど、類似サービスでも得られるもので、そのコモディティプロダクトをプラットフォームのハックやコミュニケーションアイデアでなんとかしてくれ、というケースが多い気がする。というか、世の中の大半のプロモーション与件はそんなものではないかと。
最も重要な、便益と繋がる独自性を維持するために、「プロダクトアイデア」をアップグレードしながら「コミュニケーションアイデア」でコモディティ化を避け、いかに追随商品やサービスに対する「プロダクトアイデア」を強化していくか……という役割をマーケターは担うことになります。大きく言えば、「プロダクトアイデア」への理解と共感、その体験こそがブランドを創るのです。「コミュニケーションアイデア」でブランドを創るのではないのです。
よくよく振り返ると飛躍的な成果を出せていたプロジェクトでは、コミュニケーションアイデアでなんとかしようとするのではなく、プロダクトアイデアを見出す、ということができていたんだな、ということに今さらながら気づく。
なので、プロモーションの相談をされた時には、プロダクトアイデアを徹底的に理解してクライアントとの共通言語にした上で取り組むとよさそう。ここがグラついているのであれば、プロダクトアイデアを発見するためのN1分析を徹底的にやって、コモディティのまま戦うのではなくて、プロダクトアイデアで勝負できるようにしたい。
ちなみに、プロダクトは、モノやサービスそのもの、というよりも、モノやサービスを取り巻く環境も含めた体験を通じた価値であると再定義すると、いままで見えてなかったプロダクトアイデアに気づけたりしたことが多いかも。感覚ですが。
ブランド選好とは、好き嫌いやNPSではなく、本人の次回購買意向
「プロダクトアイデア」とは別に、もう一つの本書の激刺さりポイントがあって、それがここ。プラックボックスになりがちな「ブランディング」をバッサリと斬っている。
つまり、顧客の購買意向が高まらない投資だったとしたら、それは「ブランディング」目的として成立していません。
ブランディングは、ブランド選好を高める活動であり、ブランド選好とは、顧客の次回購買意向なので、次回購買が高まらないブランディングは無意味!
「ブランド」を大切にする企業では、イメージ属性の増減をブランディング指標として活用しているケースも多いと思います。そのブランドやカテゴリーの機能や便益、また擬人的なイメージ属性(信頼できる、革新的、技術力のある、おしゃれな、センスの良い、上質な、高級な、友達のような……) などです。この計測は、さらなるN1分析を経て新しい「アイデア」を創出する際の参考指標としては役立ちますが、これらのイメージスコアが上がることと購買意向には、相関関係がない場合が多いです。
イメージ良くしても、売上はあがらんよ、と。(例外もあって、どういうケースの場合イメージ良くして売上上がるか、について本書には言及あり)
本当にスッキリして気持ちがよい。
しかも、認知の有無とブランド選好の有無は、ネット広告のCPAにちゃんと跳ねると。
なお新規顧客の獲得を狙う際には、認知の有無とブランド選好の有無によって獲得コストが大きく違ってきます。例えばデジタルマーケティングの顧客獲得コストをセグメントごとに比べると、認知・未購買層 7 8 を100%とした場合、未認知層 9 では獲得コストが160-220%程度に上がります。また、ブランド選好のある離反層と認知・未購買層 5 7 に対して、ブランド選好のない離反層と認知・未購買層 6 8 で比べると、獲得コストは200-300%にもなります(図3-9)。
認知の有無で、1.6~2.2倍、ブランド選好の有無で2~3倍、両方あると、3.2~6.6倍ってことになるけど、これは個人的な経験値とも近くて納得感ある。
今までテレビCM打ってなかったクライアントがTVCMをガンガン打つとリスティングのCPAが1/4くらいに落ちるのを何度かみたことがあって。
その時は、ブランディングって大事だな、と漠然としか思わなかった、思えなかったけど、認知とブランド選好、という枠組みを持っていると、すごく理解しやすい。
逆に言えば、CPAに跳ね返らないブランディングって無意味なわけで、それが語れるだけで、ブランディングおじさんに対抗できる。
とはいえ、この話はおそらく真実なんだけど、これが真実だと不都合な人はたっくさんいらっしゃるので、この方向性が世の中のメジャーとしてコンセンサスを得られることは、10年以上先なんじゃないかと。
「プロダクトアイデア」自体の認知形成が最重要
ブランディングが必要ないわけではありません。まず、その商品やサービスが一体何のために存在するか、そもそもの「プロダクトアイデア」自体の認知形成が最重要なのです。新商品の立ち上げ時には、イメージ属性としてのブランディングが気になりますが、「プロダクトアイデア」としての独自性と明確な便益の認知形成よりも優先する投資対象ではありません。ましてや、「プロダクトアイデア」を補完しない安易な「コミュニケーションアイデア」を優先させてはいけません。
少なくともキャズムを超えるまで、対象としているターゲット顧客全体でおよそ認知が 50%以上超えるくらいまでは、「プロダクトアイデア」としての独自性と明確な便益でコンバージョンを徹底すべきだと考えます。
プロダクトアイデアとしての独自性と明確な便益でコンバージョンしてもらうべき、って、納得感がすごい。もう、今後、これだけ言って生きていきたいくらい。
本質的かつ実践的で、方法論に組み入れられたので、自分のスキルが明確にアップデートできた。
先週の記事に絡めた方法論のアップデート
先週の記事では、Webマーケティングで成果を出すには、資源配分とシナリオで想像体験が大事、という話をしたのだけど、本書との関係性で言うと、先週の話は、もう1レイヤー下の話。
レイヤーが上の人がブランディングを振りかざし始めると、成果が出るときと出ない時あってよくわからん、となってしまうことが多かったけど、本書のおかげで、CPAに跳ね返らないブランディングは無意味、って言えるので、自分のフレームがブランディングも取り込んだ形でアップデートできた感覚があってとても満足しています。
※今回は、5月19日(日)~5月25日(土)分の週報になります。