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碧月はる
2021年1月9日 20:25
医師との間に信頼関係が築けていたとしても、病院に向かう足取りはいつだって重い。言葉にして話すことで、それが現実に起きたのだと再認識する過程は、とても苦しい。悪い夢であってくれたらよかったのに。そう思いながらも、これが紛れもない現実であると誰よりも知っていた。「退院後の生活はどうでしたか?」「何とかやっていました。ただ、酷く疲れていて。記憶が混乱しています。自分以外の誰かが生活している場面を
2020年8月21日 19:02
「そのことがずっと不安で、怖かったんですよね?」返事をしようと思ったのに、うまく声が出なかった。そのぶん、何度も何度も頷いた。マスクのなかに流れ込む滴を止めることができなかった。そんな私に、白衣を着たその人はそっとティッシュを差し出しながら、私が一番聞きたかった言葉をくれた。「大丈夫ですよ。だってあなたは、こんなにもお子さんを大切に想われているじゃないですか」*お日様がぎらぎらと