碧月はる

エッセイスト/ライター。PHPスペシャルにエッセイを寄稿。書評『ダ・ヴィンチWeb』|…

碧月はる

エッセイスト/ライター。PHPスペシャルにエッセイを寄稿。書評『ダ・ヴィンチWeb』|映画コラム『osanai』|連載『withnews』『BadCats Weekly』など多数|他、インタビュー記事・小説を執筆。書くことは呼吸をすること。海と珈琲と二人の息子を愛しています。

マガジン

  • 琴線に触れたnote集

    何度でも読みたくなる。 出会えたことに心から感謝したい、素敵なnote集。

  • 日々、想い事

    日々のあれこれ。 子育てのこと、庭のこと、自身のことなど、想うままに綴っていきます。 読んだ人がホッと出来るような空間にしたいです🍀

  • サバイバーからの伝言

    虐待被害に合い、生き辛さを感じてもがき苦しむ人たちへ。 私があなた達に伝えたいことは、2つだけ。 『あなたは、悪くない』『生きて』

  • ベストアルバム

    note編集部おすすめに掲載して頂いた記事。たくさんの方に読んで頂いた記事。私自身がどうしても読んで欲しい記事。 それらを一つのマガジンにまとめました。 名刺代わりに、此処に置いておきます。

  • お仕事告知記事

    お仕事で書いた記事を、随時紹介していきます。

記事一覧

【愛おしい哀しみ】

夜、窓辺から聞こえてくる虫の声が秋のそれに変わった。朝晩のみならず、日中もクーラーの要らない日々を過ごしている。自然風で過ごせる気候になると、いかにクーラーに体…

碧月はる
2週間前
17

【罪の境目】

読みたい本が山のようにある。毎月吟味しまくって書籍を購入しているが、許されるものなら月に10〜20冊はほしい。歴史ある古い本も、アップデートされた知識が詰まった専門…

碧月はる
2週間前
23

【変わりゆくもの】

調子がいい日々が少し続くと、もうこのまま二度と悪夢なんて見ずにすむんじゃないかと思う。それが淡い幻想だと知っているのに、懲りずに何度も同じ期待を抱いては打ち砕か…

碧月はる
3週間前
17

【夏の香り】

夏休みは忙しい。そんな当たり前のことをわざわざ一文目に持ってくるほどには、いっぱいいっぱいの毎日を過ごしている。 二人の息子は元気いっぱいで、だからこその怪我や…

碧月はる
1か月前
20

【ベイビー・ブローカー】 母親は赤ん坊を「捨てた」のか、「託した」のか

本記事は、“言葉と戯れる読みものウェブ”「BadCats Weekly」にて掲載していた映画エッセイを転載したものです。 本稿は、初出の記事に加筆・修正を加えております。 ◇…

碧月はる
1か月前
14

【夫婦の相性】

酷暑が続く最中だが、時間を見つけて日々少しずつ庭の手入れをしている。なんとなく心がざわざわする日も、土を触ると不思議と落ち着く。人間は、やはり自然の一部だ。「土…

碧月はる
1か月前
28

【影絵に浮かぶ祈り】

先日、noteに書いた通り、現在のパートナーと入籍をした。夫婦別姓の世の中を切望しているが、私自身は両親と絶縁しているため、旧姓に一切未練がない。むしろ、身元を隠す…

碧月はる
2か月前
29

【性被害者が加害者に抗えない理由。原作『先生の白い嘘』が描く被害者心理について】

漫画『先生の白い嘘』(講談社)に出会ったのは、発信活動をはじめるより少し前のことだった。鳥飼茜氏による原作は、「性被害」の実態を容赦なく描いている。被害そのもの…

碧月はる
2か月前
248

【改めて、家族】

2024年6月30日、大安吉日。 現在のパートナーと入籍しました。 彼と暮らしを共にして、およそ2年。この日を迎えるまでに、さまざまなことがありました。私たち2人の関係性…

碧月はる
2か月前
186

【アヒルと鴨のコインロッカー】 答えは風に吹かれている

世界的なミュージシャンである、ボブ・ディラン。彼は「音楽の神さま」と言われている。彼の存在を知ったのは20代後半の頃、とある映画がきっかけであった。 伊坂幸太郎原…

碧月はる
2か月前
22

【必要なこと】

今日は、先月終わりに書いた散文の続きを綴りたい。

碧月はる
3か月前
24

【5年前に】

碧月はる
3か月前
20

【おと・な・り】 耳を澄ませば見えてくるもの

碧月はる
3か月前
18

【手紙】

碧月はる
3か月前
23

【祈り】

取材から帰宅すると、パートナーはいつも「楽しかった?」と訊ねる。「うまくできた?」ではなく、「楽しかった?」と。 そういう人だから好きなんだよなぁ、と私の頬はだ…

碧月はる
4か月前
29

【ジョゼと虎と魚たち】 人は脆く、それでいて案外と強い

碧月はる
4か月前
26

【愛おしい哀しみ】

夜、窓辺から聞こえてくる虫の声が秋のそれに変わった。朝晩のみならず、日中もクーラーの要らない日々を過ごしている。自然風で過ごせる気候になると、いかにクーラーに体を冷やされていたかが身に染みる。もちろん、クーラーがない生活など到底考えられない。だが、強制的に末端まで冷やされる機械的な涼しさは、私の脆い自律神経をグラグラと揺らす。体はいつだって正直だ。心の表層は誤魔化せても、体と深層心理だけは誤魔化しようがない。

【罪の境目】

読みたい本が山のようにある。毎月吟味しまくって書籍を購入しているが、許されるものなら月に10〜20冊はほしい。歴史ある古い本も、アップデートされた知識が詰まった専門書も、推しの新作も、ずっと気になっていたエッセイも、愛読していた漫画のセットも……数え上げればキリがなく、読みたい本は果てしなく増えていく。 不思議なことに、本を読むと読みたい本が増える。小説であれ、エッセイであれ、多くの本の中には、ほかの書籍の存在が見え隠れする。それらに触れると、本の虫の欲求がうずうずと騒ぐ。

【変わりゆくもの】

調子がいい日々が少し続くと、もうこのまま二度と悪夢なんて見ずにすむんじゃないかと思う。それが淡い幻想だと知っているのに、懲りずに何度も同じ期待を抱いては打ち砕かれる。ふらつく体と目覚めない頭を無理やり起こして、パソコン画面に向かう。そんなとき、指先から流れ出す文章は、いつも少し尖っている。

【夏の香り】

夏休みは忙しい。そんな当たり前のことをわざわざ一文目に持ってくるほどには、いっぱいいっぱいの毎日を過ごしている。 二人の息子は元気いっぱいで、だからこその怪我や心配が尽きない。部活、病院、外遊び、整骨院、部活、外遊び、試合、整骨院、外遊び。おおよそ、こんな感じで一日が過ぎていく。合間に家事や仕事に向き合い、気がつけば0時を回っている。先日は、長男が友人を泊まりがけで連れてきた。母が抱えるタスク量など、知ったことじゃない。そんな自由気ままな息子たちは、今日も自分が進みたい方向

【ベイビー・ブローカー】 母親は赤ん坊を「捨てた」のか、「託した」のか

本記事は、“言葉と戯れる読みものウェブ”「BadCats Weekly」にて掲載していた映画エッセイを転載したものです。 本稿は、初出の記事に加筆・修正を加えております。 ◇◇◇ 映画『ベイビー・ブローカ―』公式HPに記載されている、是枝裕和監督の言葉である。 生まれなければ良かった命。「そんなものはない」と、一片の疑いもなく言い切れたなら、どんなにかいいだろう。そう言い切ってしまいたい感情の奥で、日頃ひた隠しにしている本音が呻き声を上げている。 「要らなかったのなら

【夫婦の相性】

酷暑が続く最中だが、時間を見つけて日々少しずつ庭の手入れをしている。なんとなく心がざわざわする日も、土を触ると不思議と落ち着く。人間は、やはり自然の一部だ。「土から離れては生きられない」というラピュタの名言を、暑さに当てられながらぼんやりと思い出す。 朝から晩まで希死念慮に襲われていた春先の嵐が嘘のように、穏やかな日常が続いている。もちろん、毎日24時間健やかでいられるわけではない。だが、私の人生において、今がもっとも健康体だと言い切れるぐらいには調子がいい。悪夢で繰り返し

【影絵に浮かぶ祈り】

先日、noteに書いた通り、現在のパートナーと入籍をした。夫婦別姓の世の中を切望しているが、私自身は両親と絶縁しているため、旧姓に一切未練がない。むしろ、身元を隠すためにも彼の姓を名乗ったほうがより安全だろうと、夫の姓を名乗る形で話はまとまった。そのため、元夫の氏を名乗っている息子たちと私は、違う名字となる。そのことを彼らに伝えたとき、長男、次男ともに「お母さんの名字が変わるからなんなの?それで何か変わるの?」とポカンとしていた。「家族の一体感」とやらを重視して夫婦別姓に”慎

【性被害者が加害者に抗えない理由。原作『先生の白い嘘』が描く被害者心理について】

漫画『先生の白い嘘』(講談社)に出会ったのは、発信活動をはじめるより少し前のことだった。鳥飼茜氏による原作は、「性被害」の実態を容赦なく描いている。被害そのものにとどまらず、被害者が陥りやすい防衛機制までもが生々しく表現されており、いち当事者である私は、読みながら何度も息を呑んだ。 全八巻に及ぶ本作は、序盤から性被害の描写が登場する。主人公は、高校教師の原美鈴。彼女が主な被害者として描かれているが、本書において、登場人物の大半が何らかの被害者であり、何らかの加害者でもある。

【改めて、家族】

2024年6月30日、大安吉日。 現在のパートナーと入籍しました。 彼と暮らしを共にして、およそ2年。この日を迎えるまでに、さまざまなことがありました。私たち2人の関係性においても、私個人の問題においても。彼は、どんなときも変わらぬ笑顔で支え続けてくれました。その腕の温かさと揺るぎなさを、私はいつだって信じることができました。 もともとは、次男が成人したあとに入籍を予定していました。しかし、まさかの息子たちに背中を押される形で、再婚する運びとなりました。 「まだ結婚して

【アヒルと鴨のコインロッカー】 答えは風に吹かれている

世界的なミュージシャンである、ボブ・ディラン。彼は「音楽の神さま」と言われている。彼の存在を知ったのは20代後半の頃、とある映画がきっかけであった。 伊坂幸太郎原作の小説を中村義洋監督が映画化した、「アヒルと鴨のコインロッカー」。濱田岳と瑛太がダブル主演を務める他、関めぐみ、松田龍平、大塚寧々ら実力派俳優がそれぞれ個性的なキャラクターを見事に演じている。 大学進学とともに仙台に引っ越してきた椎名(濱田岳)は、荷ほどきをしながらボブ・ディランの名曲「風に吹かれて」を口ずさん

【必要なこと】

今日は、先月終わりに書いた散文の続きを綴りたい。

【5年前に】

【おと・な・り】 耳を澄ませば見えてくるもの

【手紙】

【祈り】

取材から帰宅すると、パートナーはいつも「楽しかった?」と訊ねる。「うまくできた?」ではなく、「楽しかった?」と。 そういう人だから好きなんだよなぁ、と私の頬はだらしなく緩む。 「楽しかったよ」 そう答えると、彼の頬も緩む。どちらかが嬉しいと嬉しい。どちらかが悲しいと悲しい。絵本でお馴染みの『ぐりとぐら』のような私たちは、容赦のない日々を少しでも笑って過ごしたいと願っている。

【ジョゼと虎と魚たち】 人は脆く、それでいて案外と強い