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【夫婦の相性】

酷暑が続く最中だが、時間を見つけて日々少しずつ庭の手入れをしている。なんとなく心がざわざわする日も、土を触ると不思議と落ち着く。人間は、やはり自然の一部だ。「土から離れては生きられない」というラピュタの名言を、暑さに当てられながらぼんやりと思い出す。

朝から晩まで希死念慮に襲われていた春先の嵐が嘘のように、穏やかな日常が続いている。もちろん、毎日24時間健やかでいられるわけではない。だが、私の人生において、今がもっとも健康体だと言い切れるぐらいには調子がいい。悪夢で繰り返し起こされた朝、ぐったりしながらも「やれることをやろう」と思える日が自分にくるなんて思わなかった。

メンタルが好転した理由は、自分でもよくわかっていない。夫との入籍が引き金になったであろうことはもちろんだが、それだけではないように思う。単純に、足掻き続けたのちに訪れた平穏が今だったのだと、生きることを諦めなかった自分へのご褒美なのだと、そんな気がしている。ここにたどり着くまでの間、手を離さずにいてくれた人たちに、私は首を垂れるよりほかない。

喜ばしいことに仕事は途切れることなく、むしろ新規の案件が増えている。夫も日々生活を支えてくれており、経済不安も少しずつ解消されつつある。まだまだ安心できる状態とは言い難いが、歯を食いしばって懸命に歩んできた2年間に、ようやく区切りをつけられそうだ。「大変」などという言葉では表しきれないほど、悔しいこと、悲しいこと、苦しいことの多い2年間だった。私が泣いている間、夫も見えないところでたくさん泣いていた。表に見えている彼の苦労は、現実の100分の1程度に過ぎない。

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