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正社員→アルバイトからの契約社員登用→フリーランス3年目。今、思うこと。

たまたま現代の日本に生まれ、今もこの世に生きている私は、それだけでかなり幸せ者だ。そしてさらにありがたいことに、一定の範囲内で、膨大な選択肢の中から好きな道を選んでいけるチャンスに幾度となく恵まれてきた。

選択肢があることは、自由の証しだ。

一度きりの人生、常に目の前に広がるいくつもの道の、どれを選んで進もうか。その選択肢の多さに、めまいがすることがこれまでに何度かあった。大学を選ぶ時と、大学時代に就活をした時と、つい先月だ。

最近、今後の働き方について、改めて考えるきっかけがあった。

今まで、正社員、フルタイムのアルバイトからの契約社員登用、そしてフリーランスと様々な形で働いてきた。正社員からアルバイトとして転職する時も、目標があったから特に迷いや抵抗はなかった。フリーランス1本で頑張ろうと2年前に会社を辞めた時も、飛び出すなら今しかないと思ったタイミングで流れるように決断した。

フリーランスになってから、何だかんだで想像していたよりは順調に仕事を受けてきたと思う。それが今年の3月に、ちょっと焦るほど過去最低の売り上げを記録してしまい、初めて「収入の不安定さ」の怖さを痛感したのだ。この2年間、取引先の数が少ないながらも仕事が丸1か月近く途絶えることがなかったのは、ただのラッキーだったのだと身にしみて分かった。

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当初、3月末から数か月にわたるシリーズものの翻訳の仕事が入るはずだった。大体のスケジュールも組まれていてそのつもりでいたから、他に依頼が来た単発の案件を断ってしまったのだけど、突然そのシリーズものの話がクライアントの都合で流れてしまった。かなりショックだった。

フリーランスなので、仕事が流れてしまえば収入はない。こういう時、本当に「キャンセル料」をきっちり設定したくなる。現実的には無理だけど…。

翻訳の依頼が少ない時に備えて始めておいた複業のCC制作の仕事も、3月に限って初めて新規の依頼が来なかった。

結果的に、3月はほぼ仕事をしていない月になってしまった。それでも最初は美容室に行ったり病院に検診を受けに行ったり、本を借りてきたり観たかったドラマを一気見したりと休みを満喫していた。というのも、フリーランス1年目にほぼ休めていなかったので、その時のぶん今休んでいるのだとのんきに構えていたのだ。確定申告で戻って来たお金もあったし、心に余裕があって危機感に欠けていた。

4月になり、新しく依頼が来たのでやる気をみなぎらせて素材の到着を待っていた。が、ほっとしたのもつかの間、何とその仕事も急遽流れてしまったのだ。

こうも立て続けに仕事が流れるなんて、何かのお告げだろうかと考えた。そろそろ取引先をもっと増やせということか。それとも働き方を見直せということか。

ここでやっと本格的に焦りが募った。仕事の依頼が来るときは重ねて来る、という経験はこの2年の間に何度もしていたけど、来ない時は1つも来ないor流れる時は続けて流れる、というフリーランスの洗礼を遅ばせながら体験し、今のままではダメだと痛感した。

誰も補償などしてくれないので、やっぱり毎月最低限の収入は確保できるようにしたい。本を読んでも映画を観ても、さらに勉強しても余ってしまうような時間を持て余し始め、仕事をしたいと切に思った。もっと着実に収入を得られる環境を自分で作らなければ。

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そんな中で色々と調べだして、偶然派遣の求人サイトにたどりついた。初めて派遣の求人を目にして、その時給の高さと面白そうな求人の多さに驚いてしまった。本業に関連して知見を広げられそうな仕事もたくさんあるし、勤務時間も週に3日〜でOKとか1日4時間〜でOKとか、フリーランスとかけもちできそうな働き方を認めている求人もちらほらある。

フリーランスという道に飛び込んでから改めて派遣という働き方を見つめると、「非正規雇用で不安定」というイメージは消え去り、やってみたい仕事にチャレンジできて収入源も分散できて、そして外に出ることで気分転換にもなるし、メリットだらけに思えた。フリーランスと派遣のダブルワークという働き方って、もしかして最強なのでは…?と、ぐらっと心が揺れ動いた。

2年前に「フリーランスで頑張るぞ!」と意気込んで開業届を出し、何だかんだで仕事が途絶えずここまで来ていたから「ダブルワーク」なんて考えもしなかったけれど、フリーランスだからこそ、もっと自由にどんな働き方でもできるのか、と目からうろこが落ちた気分だった。

こうして、フリーランスを続けながら、派遣とのダブルワークで少し外に出て働くのも有りかなと検討する日々が始まった。

まず最初にぶつかった問題は、魅力的な求人が多くてどれに応募してみようかかなり迷ってしまうことだ。仕事内容を取るか、お給料の高さを取るか、通勤時間の短さを取るか、時間の融通面を取るか…どれを第一にするか、決めかねてしまう。

仕事内容が本業に関連していて、勉強にもなって楽しめる仕事を選びたいけど、それだとフルタイムに近い働き方の求人がほとんどで、フリーランスの仕事に支障が出てしまうのが目に見えている。そうなると、簡単には飛び込めない。

特に興味のない分野の仕事でも、お金のためだけに近場で短時間働くというのもありかなと考えた。だけど仕事内容で妥協するとしても選択肢が多すぎて妥協点が絞りきれず、やはり簡単には決断できそうになかった。

そんな時、「これは!」という求人を見つけて、思い切って応募してみた。まさか派遣で求人が出ているとは思っていなかった本職に近い職種で、かなり期待が高まったけれど、派遣には「釣り求人」なるものが多数存在するという口コミも知っていたので、半信半疑ではあった。その結果は、派遣会社内での選考に落ちてしまったのか、釣り求人だったのか、選考通過の連絡は来なかった。

期待と半信半疑の気持ちのはざまで結構揺さぶられていたので、何とも言えない残念な結果にしょんぼりしてしまい、派遣でのダブルワーク探しはいったんやめることにした。

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そんな回り道を経て、久しぶりの仕事を噛みしめながら全力で納品したり、また1つ打診された仕事が速攻で流れて無念さが募ったりしつつ、結局今は地道にフリーランスの取引先を少しずつ増やしていくという選択を取ってみることにした。次の仕事の素材到着待ちをしながら、1社書類選考を通過した会社のトライアルに取り組んだ。今週中にもう2社くらい書類を送るつもりだ。

だけど、その間にも心は揺れている。このままボーナスも退職金もないフリーランスで本当に頑張れるか。いっそ全く新しい仕事に挑戦してみるのもありなんじゃないかと、心がぐらついたりもする。

馬が好きだから乗馬クラブで働けたら楽しいだろうなとか、細かい作業が好きだから刺しゅうを究めていつか仕事にできないかなとか、空想はいくらでも広がる。

だけど、続けることと新しく始めることなら、きっと後者のほうが簡単なのだと思う。何かを始める時には「挑戦」という言葉が頭に浮かぶので、難しいことに挑んですごいことのような印象を受けるけど、ただ挑むだけならば誰でもその入り口には立てる。それよりも何かをコツコツ続けて究めていくことのほうが、ハードルはずっと高い。

1つのことを続けることは、本当に難しいと今まさに痛感している。入り口に立ってからたった2年ほどで(学校に通った期間を含めれば5年で)ぐらついてしまっている自分が情けない。モチベーションを保つこと、スキルを上げること、そのために努力し続けることは何て難しいんだろう。

映像翻訳スクールに通っていたとき、講師の方が言っていた。「10年くらい続けると、いいことがあるよ」と。その「いいこと」に、何とかたどり着きたい。別の講師の方の言葉もずっと心に残っている。「最後まで立っていた者の勝ち」。今最前線で活躍している人たちの背中が遠すぎて、くじけそうになるけれど、私も最後まで立っていたい。2年や3年で辞めていってしまう人は、きっと掃いて捨てるほどいる。

この業界に10年関わり続ける方法は、きっと1つしかないわけじゃない。今はとりあえずフリーランスで何とか頑張っているけれど、自分はどんな働き方をすれば10年続けていくことができるか、そこを考えるべきだという気がしてきた。ただ日々の仕事をこなすだけじゃなくて、アンテナを張り巡らせておいて、今回みたいに仕事が落ち着いた時にはじっくりとリサーチもして、考え続けていこう。

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人生を1本の道のようにイメージしてしまうと、どこかで間違えてはいけない気がして身構えてしまう。だけどそうじゃなくて、お弁当箱のようなイメージでいいんじゃないかとふと思った。

1本の道だと、半分近くまで来た道を振り返った時に「間違っていないか」に気を取られ、未来への足どりが慎重になりそうだけど、お弁当箱なら、のぞきこんだ時に「まだ半分以上空っぽだし好きなものを詰めよう」と貪欲になれる気がする。

どんなおかずで、どんな彩りを添えて自分の箱の中を満たそうか。そんな感じで人生をイメージすれば、かなりわくわくしてくるじゃないか。

選択肢があることは自由だけど、どこか不自由でもあると思っていた。でも、やっぱりどこまでも自由なんだ。

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