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眠れない人から眠れる人へ

今日は仕事で歩き疲れたので、ここ(「道草のススメ2019」)で何を書こうか考えるのが面倒くさい。──そういえば、ぼくは20代の頃、会社勤めをしていた時は(取材などで)出歩きもしたが基本的にはデスク・ワークだったのだが、たまに思い出すのは、夜、すんなり眠れなかったということだ。

ぼくは大学入学のために故郷を離れた1998年以降、結婚した2012年まで14年間、ひとり暮らしだった。

会社から帰ったら、とことんひとりの時間で、寝る時は(しばらくは眠れないということがわかっているので、部屋を暗くして何か聴こうかと思うのだが)音楽ではなく落語の録音を聴きながら眠ることが多かった。

会社勤めを諦めて、大阪から府中へビューンと移動して引っ越した後にも、それまでの延長で仕事をしようとしていて、からだを動かすよりも頭を動かしていることが多かった。で、やはり夜はうまく眠れなかった。

府中時代に知り合った、ある映画制作をしている人から、下窪くんはからだを動かす仕事をするといいよ、と言われたのをよく覚えている。

自分でもそれがいいような気がしたが、頭の使いすぎで、というか、からだを動かす仕事をあまりしたことがないので、何をすればいいのかわからなかった。

障害のある人を相手にした仕事をしてみたいという思いはあったかな。精神障害と呼ばれる世界に、関心は深かった。他人事ではない、という深さではあったが。視覚障害の人、聴覚障害の人との縁は、それまでに少しあった。が、知的障害の人たちや、その家族との付き合いはなかった。

結婚して、いま住んでいる家(道草の家)に引っ越してきてからは、驚くほどよく眠れるようになった。

ここは、ぼくがこれまで住んできた家の中では、もっとも人工音に脅かされてない。風や、雨や、鳥たちや虫たち(や猫たち)の声はよく聞こえるが、それ以外はとても静かだ。港で鳴らされる汽笛の音もよく通る。

その影響もあるだろう。しかし、知的障害のある人たちと、外へ出かける、歩く、からだを動かす仕事を始めたのは大きかった。

直感的に、自分には向いていると思った。

あんなに眠れなかった自分が、布団に入ると、すっと眠りの世界に入れるようになった。

以前のようにひとりぽっちではなくて、家族がいるという安心感もあるのだろうが、頭で考える人だった自分が、からだ全体で考え始めたのも大きかったなぁといまになって思う。

(つづく)

「道草の家・ことのは山房」のトップ・ページに置いてある"日めくりカレンダー"、1日めくって、3月 10日。今日は、ライオンの話。※毎日だいたい朝に更新しています。

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