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えええっ 賢者? 聖水? 自ら名乗り出る? ほんとうですか~???

「な、なんですか、それは?」という、困惑顔のダンナと私の前で、村長さんが得意げに語るところによれば、バリには失くなった物を見つけるのを特技(?)とする賢者(霊的な力をもつ者)がいる。失くなった物や盗まれた物がある時、バリ人はそうした賢者のところに行って聖水をもらう。そして、その聖水を疑わしいと思われる人間(複数のこともある)に飲ませる。
聖水には、物を盗った犯人に自白を促す効果があるので、聖水を飲んだ犯人は、自ら名乗りで出ずにはいられなくなり、罪を自白する。村長さん自身はそういう場面に立ち会ったことはないが、話には何度か聞いたことがあって、聖水を分けてくれる賢者にも心当たりがあるという。

えええっ、、、賢者? 聖水? 自ら名乗り出る? ほんとうですか~ 
?????? というのが、ダンナと私の正直な心の声だった。
とはいえ、親身になって相談にのってくれている村長さんの話を、はなから疑ってかかるわけにもいかない。この場で私たちに求められているのは、乗り気な態度を示すことだ。ダンナと私は身を乗り出して言った。
「じゃあ、それ、試してみましょう!」
これで話は決まった。
(ちなみに、村長さんはヨガの先生としても有名な人で、周りからたいへん尊敬されている人です。)

それでは、賢者というのは何者なのか。。。バリには、賢者とか呪術医と呼ばれる特殊な能力(ふつうの人が見えないものが見えたり、聞こえないものが聞こえたりする)を持った人がいて、問題を抱えた人の相談にのったり、解決法を指し示したりする。たとえば、バリの人たちは、物(お金)が失くなった、原因不明の腫れ物ができた、家で不幸が続くなど、何か手に負えない問題がおこると、彼らのもとを訪れる。で、そうした場合、そこで示される解決法というのは、だいたいこんな感じだ。
これは、、、先祖の誰かが何かを伝えたがっているのが原因だ。だから、なになに(素材の指定)でお供え物をつくって、いついつ、家のどこどこに置きなさい、というような、、、あくまでバリ・ヒンドゥーの教えにのっとた解決法なのである。これではヒンドゥー的すぎて、ヒンドゥー教徒ではない私などは、ほんとにこれで問題が解決するんだろうか? と首をかしげたくなるのだが、バリの人たちはそれを信じて実行する。

でも、じっさいに賢者からもっと具体的な回答を、示された例も聞いたことがある。私の知り合い(ダンナがバリ人の日本人の奥さん)が、家でお金が失くなった時に、ある賢者のところに相談に行った。すると、賢者がお金を盗んだ犯人の身体的特徴を語り始めた。その人物は、背が低くて、髪がちぢれていて、腕に龍の入れ墨がある。。。そ、それって、隣りのおじさん!? まあ、そういうこともないわけじゃない。

ともあれ、賢者の聖水作戦は、実行に移されることになった。聖水を飲んだら何が起きるのか。それで本当に犯人が名乗り出るのか。疑問は尽きないが、ひょっとしたら、映画で見るようなことが、目の前で起こるかもしれないと思うと、強く好奇心をそそられるのは確かだった。果たして、バリ式の聖水パワーによる犯人捜しは、どこまで真実を明かすことができるのだろうか。あるいは、まったくの笑い話に終わるのだろうか。やってみて、損はないだろう。

次号(part6)に続く。賢者は意外とふつうの人だった。




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