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限りなく疑わしい。しかし、面と向かって「お金盗ったの、あんたでしょ」と詰め寄るべきかどうか、、、

それで、Mが何者かというと、近所のバリ人の主婦。(年齢は20代後半で幼稚園に上がる前の子供が1人いるということだった。)彼女の方から、お手伝いさんはいらないかと言って、うちにやって来た。近所の人なら、ある程度、素性も知れているから大丈夫だろうと、うちで働いてもらうことにしたのだが、、、(お手伝いさんを使うようになってから、うちでモノが失くなることがしばしばあって、一応は用心をしていた。)

ところで、うちにお手伝いさんがいるというと、すごい金持ちなのでは(?)と思われるかも知れない。しかし、当時バリでは、お手伝いさんはわりと人気の職業で、うちみたいな庶民の家にも、外人(=私)がいるというだけで、職を求めて人が訪ねてくることがあった。
うちには、年の近い幼い子供が3人いたし、家で仕事(絞り染めづくり)もしていたので、安い給料で家事全般をサポートしてくれる、お手伝いさんの存在はひじょうにありがたかった。
とはいっても、うちの場合、給料は安い、子だくさんで仕事が多い、おまけにボス(雇い主=ダンナと私)はケンカばかりと、悪条件がそろっていたため、人が見つかってもすぐに辞められてしまって、そのたびに新しい人を探す、ということを繰り返していた。
(犬も食わない、くだらない夫婦ゲンカを、しょっちゅう目の前で見せられたら、辞めたくなるのも無理はないと思う。)

親の病気が心配だから田舎に帰えりたいと言って、うちを辞めたお手伝いさんが、翌日には何食わぬ顔で、隣りのアメリカ人のうちで働いていた、、、ということもあった。よりよい待遇を求めてのことであろうが、よくやるなあ(=いい根性してるなあ)、というのが、私の感想である。
それから20年、すっかり時代は変わって、よほど高い給料を払わない限り、お手伝いさんを確保するのはむずかしくなった。お手伝いさんという仕事が、今ではもうカッコイイものではなくなったらしい。地元の若い人たちは、おしゃれなレストランやショップで働きたがる。というわけで、うちでは何年も前からお手伝いさんを使っていない。高い給料が払えないというのもあるが、自分がいない間に、家探しされそうな気がして、いやなのだ。

Mの話に戻ろう。限りなく疑わしくはあるが、犯行現場を押さえたわけではないので、本人に面と向かって「お金盗ったのは、あんたでしょ!」と詰め寄るべきかどうか、ダンナも私も迷った。もし、そう詰め寄ったとしても、素直に「はい、私が盗りました」ということは有り得ないだろう。
警察に相談に行くことも考えた。でも、警察に行くとコトが大きくなりそうだし、地元の警察が何をしてくれるんだろう? という疑問もあった。
以前、窓際に置いた私のバックが、夜寝ている間に失くなったことがあって、警察を呼んだのだが、戸締りをしっかりするようにと、こっちが注意されただけだった。

ダンナと2人で、あれこれ悩んだ末、とりあえず私たちが住んでいる村の村長さんに、相談するのがいいのではないか。村長さんなら、村人が関係するこの種の問題を解決に導いてくれるのではなか、そう考えた。ダンナも私も外から来た人間なので、地元の人間の犯罪をどう扱っていいか、わからなかったからである。

私たちは村長さんを訪ね、これこれこんなことがあって、Mというのが怪しいんです、と話した。ああ~ あそこのMね。村長さんはMを知っていて、こう語った。
問題があるのは、Mではなく、Mのダンナの方。働かずに賭け事ばかりをしていて、借金があるので有名。なので、Mがお金を盗った犯人である可能性は高いといっていい。でも、Mも苦労しているだろうから、あんまりこっぴどく問い詰めるのも、気の毒だなあ、、、
で、ここで村長さんはいったん言葉をきった。それから、「思いついた!」というように、「うん。いい方法がある!」と言った。で、その方法というのが、冒頭の場面で紹介した、「賢者の聖水」を使ったバリ式の犯人捜しだった。

次号(PART5)に続く。バリの賢者とは何者なのか。



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